After World's End ~静かな別れは許されず~
「とりあえず、動きは止められるか?」
「止めることは出来ないが負荷をかけて移行処理を遅延させることは可能だ!!」
「頼むっ!!」
「おい、聞こえるか?そっちの俺……」
画面を見ると下をうつむき拳を握りしめかすかに震える向こう側の俺が映っていた。
「ああ、聞こえている」
「これからこちら側の世界間ネットワークを物理的に破壊する」
「おいっそんなことしたらっ!!」
「大丈夫だ。こちらのデータはすでにバックアップとウイルスチェック済みだ、それにこの世界には俺たちしかいないんだぜ?直す部品なんていくらでも用意してある。まぁどちらにしろこっちは統合される側だ。ここでこのシステムを物理的に破壊しても問題はないさ」
うつむき少し震えていた向こう側の俺だったが顔をがっとあげると何か吹っ切れたような笑顔がそこにあった。
「だがっ!!」
と続けて言葉をかけようとしたとき画面の向こう側から俺もよく知る隊長が出てきてそれを静止し、
「あいつらの希望をちゃんと見届けることが出来ないのは残念だ。だけど、それ以上にあの化け物を向こう側に送るわけにはいかないっ!!」
「それは、そう……だが」
俺は今の状況に納得をすることが出来ない。なぜ、別れを惜しむ余裕を彼らに与えてやれないのか、いや運命という必然はこうも残酷なのだろうかと。
「少しはやつのデータが向こう側にいくかもしれないがそれでも対策は取れるはずだっ!!メアリー後は頼んだぞ」
向こう側の俺は過去へと向かう彼女を見てそう叫ぶ。彼女はそれを聞いていたのか、あまり表情を変える事の無かった彼女が小さく笑う。
コンタクトアクターの転送中の通信はこちら側からの一方通行、送られてくるのは映像だけだ。小さく笑った彼女はルート内を滑るように進む中、軽く息を吸い目を瞑る。
そっと息をつき、軽く目を開ける。とても悲しげな顔を彼女はしていた。そもそもなぜこのミッションが彼女でなければならなかったのか。それは彼女の持つ能力、領域管理。いや、フィールド制御といっておこう。その能力があれば旧式のコンピュータ内であってもコンタクトアクターが居座ることの出来る領域を作ることが出来る。他のコンタクトアクターは既存の仮想世界を必要とするが彼女はそれを自分で作ることが出来る。だからこそ、彼女が先に向かい環境を整えるという役割をしなければならなかった。
「しっかりやれよ~」
「頼んだぞ~」
「がんばれよ!!」
といった多くの彼女を応援する声が画面の向こうから聞こえてくる。消え往く世界の俺たちの声。
絶望なんてありはしない、希望に満ち溢れた彼らの声はとても明るくまるで仲間の、友人の門出を祝うかのようだった。
「マスター」
俺の手もとの携帯端末から声が聞こえ、俺はその中に居るパートナーを見る。
「彼らは俺らよりもずっと強いな」
俺の無口なパートナーさんは静かに頷いてくれる。
「そろそろ限界だな、隊長!!破壊準備OKか?」
「いつでもいけるぜっ!!」
「よし、じゃあカウントダウン10!!」
9、
―――― これからも続くお前たちの世界をうらやましく思うよ ――――
8、
―――― けど、これは仕方の無いことだと分かっている ――――
7、
―――― だからこそ、俺は彼女に希望を託す ――――
6、
―――― 最後まで見送ることが出来ないのはとても残念だ ――――
5、
―――― あとはそちら側の俺たちに任せるよ ――――
4、
―――― さてとそろそろ本当に終わりの時間だな ――――
3、
―――― たぶん、こっちが復旧する前に世界は統合を始める ――――
2、
―――― というかすでに始まっているようだよ ――――
1、
―――― この計画は必ず上手くいく、後は頼んだぜ ――――
0、
―――― それじゃあ サヨナラだ ――――
ブツッ
通信画面が真っ暗になる。俺は……いや、俺たちはなにもいうことが出来なかった。
「今の状況を報告」
「あ、ああ。とりあえず今の切断で完全にあの化け物の動きは一時的に止まっている。コンタクトアクターの転送率はすでに90%。後もう少しだ」
俺は転送中の彼女を見る。無表情な彼女はどこか悲しそうな顔をして何かをつぶやく。こちらには聞こえない。どこにも届くことの無いその言葉を俺はいつか届けようと思った。
「転送率95%」
「化け物は?」
「現在も停止中。いや、違う!!あのやろう体を細かいデータに分割して高速転送を始めてやがるぞ!!」
「なんだって!?」
「ここでの危険度は全く無くなったわけだが過去の世界で再構築なんかしたら!!」
「とめられないのかっ」
「無理だっ!!」
「また、俺たちは見ているだけになるのか」
また見ているだけしか出来ない……。それはとてもつらいことのように感じた。いや、悔しいんだ何も出来ないことに……。俺は血が出るかと思うくらいの力で爪を食い込ませながら拳を握り歯を食いしばる。「転送率99%」
俺は息を吸い込み転送中の彼女に繋がる通信マイクを掴み、頭を下げる。
「勝手な話だが過去の俺たちの世界を頼むっ!!」
「99.8%。後もう少しだ」
俺が顔を上げたとき彼女は微かに頷き、
「100%!!転送完了だ」
消えていった……。
「結局、化け物は向こうに行っちまったわけか」
「仕方が無いさ、あとは昔の俺たちに頑張ってもらうしかない」
「まぁこれであのときの事件の原因が分かったんだけどな」
「確かにそうだな……結局これは必然ってわけかな」
「そういうことだな……」
After World's End ~ハジマリはココから~
「さてとじゃあこっちも準備をしようか」
画面越しのもう一人の俺が動き出したのを確認して俺たちも動き出す。
「タクミ、時空間リンクシステムの最終チェックを頼む。隊長はその予想ルートの安全確認を他のみんなもよろしく頼む」
着々と準備が進んでいく中、携帯端末の中に居るパートナーをみる。
「なぁ俺は正しい道を歩いてこれたと思うか?」
「わかるわけない……けど、いい」
たったそれだけの会話、言葉足らずで無愛想なパートナー。だが、言葉が少ないからこそ重みがある。良くも悪くも……だ。
「最終チェック終わったけど」
「こっちもルート安全確認OKオールグリーンだ」
俺は軽く息をつき画面の向こうに声をかける。
「こっちの準備は済んだぞ」
「こっちも準備はも済んでる」
「「じゃあ始めようか」」
暗く。息苦しく。機械の出す不協和音が響く広い部屋の中に同一人物であって違う存在の重なる声が響く。
画面越しの俺は自分のパートナーと向かい合う。
「君にはつらい想いをさせると思う。これは俺が望んだことではないと言うことは出来ない。君たちが君たちであり続けるために世界が終わる前に別の世界との繋がりを強固にそして、確実に持たせるために。君に行ってもらわなければならない。頼めるかい?」
俺もよく知る彼女はこくんとただうなずく。
「私は多くの犠牲をだした……次は救う……番」
「頼んだよ」
もう一人の俺は軽く微笑む。俺はそれ以上見てはいられなかった。ただ後ろを向いてほんの少しの静寂を名残惜しく思いながらも断ち切るように口を開く。
「まずは向こうとの道を開く。世界間ネットワークポート開放、こちらのアドレスを通知は済んでいるよな?」
「とっくにすんでる」
指示を出す俺の後ろで向こうの俺の声が聞こえる。
「さぁ行くんだ」
複雑にそして乱雑に置かれた多くの機械が処理を始め唸りを上げるように動き出す。まるで巨大な機械仕掛けの人形が動き出すかのように感じると思ったのはやはりアニメの見すぎだったかな。
「コンタクトアクターの転送の開始を確認、状況は安定、問題はない」
「順調に行くといいが」
転送中の画面はどこかのゲームのようでひたすら続く1と0で出来たトンネルを一人の少女が進んでいく。うねることの無い真っ直ぐな薄暗いトンネルを……。
「コンタクトアクターの転送状態は50%を超えます。これより時空間ネットワークを開き過去ネットワークへリンクを繋ぎます」
「了解した、そっちの状況は大丈夫か?」
俺は一応、向こう側に確認を取る。
「こっちは大丈夫……いや、ちょっと待て、仮想世界に異常発生?何かがこっちのセキュリティを突破している!?おいっセキュリティ班何してたんだっ!!」
「こっちの正規コードを装ってすでに突破してたようだ。ずっと潜伏してたらしい。早急にやったせいで何かと穴があったのは確か。そこを突かれた!!」
「くそっウイルスじゃないことを祈るしかないか……」
画面の向こう側の俺と同じように俺も画面をじっと息を飲み込んで見つめる。今、転送が始まってしまった以上止めることは出来ない、彼女のデータを壊してしまう可能性があるからでバックアップを取ってはあるがそれを使ってもう一度一からやるには時間が無いと思われる。
「ANKNOWN、コースに入ります。画像にでますよ!!」
向こう側のオペレータの声が聞こえ俺はこぶしを握りながら画面を見つめる。
「くそっこんな大物がまだいたのかよ」
画面上に映ったのはとても大きく、何もかもを飲み込んでしまいそうな漆黒の色をした霧状の塊。形を持たないバグやジャンクデータの集合体によって構成されたウイルス。日本の妖怪から名前を付けられた通称"塵塚壊王"。削除しても一度に全てのデータを削除しない限り、周りのデータを破壊して取り込んで肥大化していく化け物。
「学習機能を取り込んでいたのか……」
画面越しの俺は頭を抱える。
「現在の転送状況は!?」
「現在、コンタクトアクターは時空間ネットワークルート内にすでに移行しており40%まで進んでいます」
「あのデカブツの方は!?」
「思ったよりも進行が早くすでにデータの半分が時空間ネットワークに移行しています」
「世界間ネットワークとの接続は切れないのかっ?」
「システムからの介入は無理です!!」
「一体どうすりゃいいんだよ……」
このあと8時から放送予定!!
というわけで一度は失敗(っておい)しました予約枠ですが!!
このあと8時からやりますので暇な方はどうぞお越しください
基本はいつもと変わらないのんびりとした放送ですので気軽にどうぞ
がんばるぞぉ~
【サークル】予約枠!!ぜたばいと。かつどうにっき【初見歓迎】