SSS 「雨男と長靴の少女」 書き終わりました
というわけで書き終わりました。
SSS 「雨男と長靴の少女」
今回の作品は色をテーマに色彩に重点を置いて書いてみました。
なぜ、雨なのか。
それはぐるっぽさんの方で「雨」というテーマで短編小説を書こうということをやっていましたので
ショートショートでの参加となりましたがやらせていただきました(*・ω・)*_ _))ペコリン
いかがだったでしょうかね
上手くかけたという自信はそこまでありませんがより多くの人の心に響く作品であって欲しいと思います
まだ読んでないという方もいらっしゃると思いますので下記にリンク張っておきます。
前後編の2部構成ですがそこまで長くないので気軽に読んで感想をくれると嬉しいです
では
SSS 「雨男と長靴の少女」 その2
雨の流れに身を任せて、ただそこに俺は立つ。それは世界と一体になれるような気がした。
「やっぱりたのしいの?」
俺の傍らにはさっきの子供がまだいるようだった。
「わたしもやってみる」
俺は無言を貫き、その様子を見ることも無く、干渉せずに感じていた。子供はきっと俺のすぐそばにいる。冷たくなった体は思っていた以上に敏感になっていたらしい。すぐそばにいる暖かな子供の体温が空気を通して少し伝わってきていた。
「きもちいいね」
俺はついに声の元に目線を向ける。傘と同じ鮮やかな色をしたレインコートと長靴をはいた少女が俺と同じように上を向いて雨にあたっている。暖かなその赤は俺の目に焼きつくように鮮明に初めてみるかのような新鮮さに俺は見つめていた。
「風引くぞ」
「だいじょうぶだよ、わたしつよいもん」
そこで初めて彼女と視線が合う。世界に一人だけ取り残されてなどいなかった。彼女の声は相変わらず澄んでいて耳に残る。この雨の中、俺は初めて悲しさを苦しさを辛さを寂しさを忘れられることが出来ていた。
寂れた世界の中に一つの暖かい、鮮やかな色をした火が灯っていた。
「これ、たのしいね」
「ああ、そうだな」
俺と少女は灰色の空を見上げて笑う。次第に雨音は小さく、少なくなっていく。周りの木々の葉が雨に揺られる音が聞こえてくる。地面を軽く叩く雨のテンポ良く響く音が聞こえる。様々な雨の作り出す音が耳に入ってくるようになり、世界に再び息吹が吹き込まれ、色を取り戻していくかのようだった。
「おそらがうたってるね」
「歌ってるんじゃないさ、奏でてるんだよ」
「かなでてる?」
「そう、奏でてるんだ。地上にあるもの全部を楽器にして」
「そうなんだ」
雨の音がだんだんと弱くなり、聞こえてくる音はピアニッシモの協奏曲。静かにけれど終わることなく続いていく。
「あ、おひさまがでてきた」
少女の言葉の通り、雲の隙間から日が差し込み始める。それはまるでオーケストラを照らすスポットライトのよう。
「おそら、あかるいのに雨やまないね」
「こういう天気を英語でなんていうか知っているか?」
「わかんない」
「天気雨、Liquid Sunshineっていうんだ」
「りきっどさんしゃいん?」
「そう、日本語での別名は狐の嫁入り」
「きつねさんがおよめにいくの?」
「ああ、昔の人はこんな天気の日はそう言っていたらしい」
「よめいり……よめいり……なんかすごいね」
「ああ、そうだな」
冷え切って冷たくなった体に差し込んできた日が当たり、徐々に俺の体を温めていく。雨はまだ降ってはいるがもう、寂れた世界なんてものはそこには存在しない。
「あ、にじだ!」
少女ははしゃいぐようにしてその先を指差す。空には七色の虹が大きく架かっていた。
そしてその虹のある方向には物悲しく立っていたはずの鳥居があったはずなのに、今の鳥居は雨の雫を纏い、太陽の光に照らされて、まるで塗り替えられたばかりのような鮮やかな少女と同じ暖かな朱色をしていた。
火の灯った世界はとても美しいことを知った。
SSS 「雨男と長靴の少女」 その1
俺は雨宿りをしていた。
寂れた木造の小さな神社、何を祀っているのかと聞かれても俺にはそんなこと知るすべも無く、知っていることといえば近所の子供たちがこの神社の境内で晴れた日に元気良く遊んでいるということだけ。
普段でも色がくすんでいて朱色とは言い辛い鳥居が薄曇りの灰色の空のせいでさらにひどく見える。
俺はその神社の本殿にある賽銭箱の前の階段に座り込み、空を見上げていた。
「早く雨、あがんねぇかな……」
この場所に来る前に少し雨にあてられていたため、濡れたシャツが体に張り付いて体の体温で温められて気持ち悪い。
ザー、と激しい音を立てて降る雨。
その音は様々な音を消し去る。周りには誰もいない。まるでこの世界に俺だけが取り残されてしまったような、はたまた別の世界に俺一人だけ飛ばされてしまったのではないだろうかと思えるくらいの孤独を感じさせる。
雨というのは人を憂鬱にするというが、俺はそうは思っていない。
雨が作り出す無音、孤独、灰色の世界。
それらが人を憂鬱にする。
単調に不協和音の音楽を奏でながら、世界を色あせさせていく雨。
色あせた世界はつまらなそうに俺には見えた。
俺は立ち上がり、一歩二歩と少しだけ前へ進み、降りしきる雨の中でただ空を見上げる。灰色に染まったつまらない空を見上げる。呆然と、雨の作り出すノイズも聞こえなくなるくらいに上の空になって。気付くと空が流す涙を自分の涙と重ねていた。
「ねぇそこでなにしてるの?たのしい?」
下の方から突然声がして、俺は顔を少しだけ傾けて視線だけをそちらに向ける。そこにあったのは赤い傘。
「たのしいの?」
雨が作り出す無音の中、澄んではいるが綺麗とはかけ離れた可愛らしい声が響く。
「別に楽しくなんて無いさ」
「じゃあなんでそんなことしてるの?」
「さぁね」
「へんなの」
俺は視線を空に戻し、また寂れた世界を体全体で感じる。もう、俺の近くにはあの傘を差した子供はいないだろう。面白くもないことに子供が興味をもったりはしないのだから。