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black kairitu

デス師匠のweb連載Season3。毎月1日更新。コラム、レビュー、レポート、詩、ショートショート、日記など。増刊号、号外、休刊あり。

 巷には、多種多様な音楽が流れているわけだが、私は所謂「ヴィジュアル系」と呼ばれる音楽出身者といえる。だからこそ、歌謡曲も歌う訳なのである。今回のコラムは特にヴィジュアル系の歴史や分析を主としないため、ほどほどにしておくが、ヴィジュアル系の音楽を私は、メタル調の音に歌謡曲のメロディーが乗る軽音楽と定義付けている。勿論、例外はたくさんある。完全にメタルのバンドもあれば、パンク、ニューウェーブ、インダストリアルなど多岐にわたる。私はその中でも、黒服系と呼ばれていた種類の軽音楽家ということになる。メイクをするにしても、中性的なメイクというよりは、悪魔的なメイク。ただ、聖飢魔Ⅱ的なものではなくゴシックよりのメイク。アリス・クーパーからマリリン・マンソンまで連綿と受け継がれているビューティフル・ホラー・スタイルといえよう。

 最近きずいたこと。
 
 私は歌うことが好きなのではなく、メイクをすることが好き。

 33歳にして、やっときずいた。歌うことに禁断症状はないが、メイクを当分していないと我慢ができなくなるのだ。それは、前述のように異性装ではない。麗しの悪魔になること、つまりメタモルフォーゼに近い。

 このような話をしたかったのではない。

 今回は、2回目の「ギグ・ザッシ・ゲリラ」である。しかしながら、雑誌を紹介する前に説明しておかなければならない事項があるのだ。それは、これだ。

 最近のヴィジュアル系は何か変。

 元々、変わっているジャンルではある。また、変というのは失礼かもしれない。音楽のジャンルは常に変化し、進化を遂げるものだから。現在は、ヴィジュアル系ではなくV系というが、そこにはかなりの違いが見えてきたのである。

 まず、以前、柿薔薇・河合両愛弟子と共に出かけたライブにおいて、出演していたV系バンドの話をしたい。特筆すべきは、そのバンドのファンについてである。そのバンドのファンは、バンドの演奏が始まる前に最前列で両膝をついて土下座の体制でスタンバイを始めたのである。そして、演奏が始まると土下座をしたままパラパラを踊り出したのだ。

 3人、暫く呆然。

 最近のヴィジュアル系は何か変。

 その後の調査・研究によると、V系には「フリ」というものがあるらしい。曲によって振り付けがあるバンドが存在するのだ。しかも、そのフリには、いくつかの種類があるという。例えば、「咲き」もしくは「咲く」というフリは、「両手を広げ好きなメンバーの名前を呼ぶ」というものだ。そして、「咲く」ことを禁止することを「咲き禁」という。「咲き」を禁止しているバンドもあるのだ。
 また、「拳」というフリは、「拳を上にあげてデスヴォイスに合わせるフリの一種」である。咲き禁止バンドでは拳を上げてジャンプなどをするという。

 「咲き」というフリが登場し、それを禁止する動きも出てきた。

 中世のヨーロッパにおける封建反動のように、ポップになりすぎたものを修正しようとするバンドも現れたというこのなのだろうか。

 最近のヴィジュアル系バンドマンは、ホストに近づいている。

 私は、以前からV系の軽音楽家たちがホストに見えてしかたがないという状況にあった。どうしたんだろう。なぜなのだ、これは。まだまだ、分析しきれていない中、一冊の雑誌に出会ったのである。それが、これだ。

 『MEN'S SPIDER』

 雑誌の紹介文には、こうある。

 「系統:Vカジ・Vホス系」

 いきなりである。まず、「Vカジ」と「Vホス」という聞いたことのない言葉がならぶ。さらに、説明は、続く。

 「内容:ファッション+ヘアスタイル+メンズビューティー。ヴィジュアル系+ホスト=「Vホス系」という新しいスタイルを提案。お兄系・ホスト系・ギャル男・チャラ男などとはまた違うスタイルを提案しています。簡単にいうと、ヴィジュアル系バンドの方達の要素をお兄系やホストスタイルに取り入れた、新しいファッションです。また、Vカジ系もあります。

 ヴィジュアル系+ホスト=「Vホス系」

 これは、ものすごい足し算だ。それしか分からない、とにかく足し算・加法である。では、こういうのもあるのではないだろうか。

 ヴィジュアル系+パティシエ=「Vパティ系」

 お菓子の家から、こんにちは! 何のことか分からない。パティシエがいけないのではないか。

 ヴィジュアル系+土木作業員=「V土木系」

 夏でも日焼けはしてません! 私が間違っていた。ホストの部分を異業種に変えれば良いという問題ではない。ファッションである。

 雑誌の内容に移ろう。

 最新号の表紙に記されたコピー・文言には、こうある。

 「BLACK&WHITEの聖なるクロスを身に纏え!」

 聖闘士聖矢! 久々に聞いた、「クロス」。条件反射的に、頭の中は聖矢でいっぱいである。マンガ『聖闘士聖矢』の鎧を「クロス」と呼ぶからだ。文言はさらにこうある。

 「アニマルに魅せられた色気はストリートという狩り場でも隠しおおせない…レオパード、イーグル、ウルフ 決定!オンナを仕留める3大美獣メイク!!」

 決定されてしまった、美獣メイク。私を含めた世間一般の方々が関知しない所で、決定されていたのである。レオパード、イーグル、ウルフ。もはや、メイクではない。それは、特殊メイクだ。さらにさらに、まだまだ続く。

 「溢れ出すアウラでヴィジュアル・アップデートを目指す艶男よ、今が纏う瞬間! 秋に極めるリアル艶男スタイル~白を纏ってV系の寵児となれ!!~」

 まず、アウラとは何か。そこから始めなければならない。オーラではないアウラである。そして、寵児となることができるかもしれないのだ。地上に生けるほとんど全ての人々がなれないとされてきた、寵児に。白を纏うことによって、なれるのだ。

 諸君、白を纏って寵児となれ!

 『MEN'S SPIDER』、最新号は書店・コンビニにて大好評発売中である!

 「女子はオムライスを好み、休日は雑貨屋を巡る」


 これは、私の調査によって導き出されたデータである。はたしてこのデータに信憑性はあるのか。この説を唱えた際、何度か異論・反論を頂戴した経験はある。

 

 人間は、個人的で寡少な経験値から全てを判断してしまうことがある。 


 ある30代独身女性が言い放った法則はこれだ。


 「男性と女性は根本的に食の好みが違う」


 おそらく、以前つきあっていた彼氏と食の好みが違っていたのであろう。ただ、単にそれだけの理由だ。


 人間は、個人的で寡少な経験値から全てを判断してしまうことがある。


 「女子はオムライスを好み、休日は雑貨屋を巡る」という女子の生態における調査も、そうして生まれてしまったのかもしれない。しかし、雑貨屋はともかくとして、オムライスを好きな女性は確かに多いのだ。しかも、オムライスにおいては女性だけでなく男性をも魅了する力がある。今回の調査はそのことに関するものだ。

 オムライスをこよなく愛する男がいた。

 そう、私の友人であるK本君である。しばしば、当連載に登場するK本君。前シリーズの連載の『オムライスにまつわる思考の遍歴』において書いたが、彼がオムライスを好きな理由をおさらいしておこう。


 「卵とソースのマッチング」


 ライスはどうなったんだ。ライスは!ライスにも触れてやれ!


 私はこのツッコミを何度繰り返したらいいのだろうか。だが、今回はさらなる調査結果にツッコミを入れなければいけなくなったのである。先日の話だ、K本君の同僚であるO崎氏と3人で食事をした。そこで、O崎が注文した料理とは。


 「オムライス」


 驚く事なかれ、なんとO氏もオムライスが好きであったのだ。そこで気になるのは、やはり好きな理由だ。その理由がこれだ。


 「卵のふわふわ感」


 だから、ライスはどうなったんだ。ライスは!しかも、もはやソースすら出てこない。「卵のふわふわ感」が好みであるならば、スクランブルエッグで良いのではないか。

 

 興味深く、面白い人の周りには、興味深い人が集まる。


 3人で食事を済ませた後、どこに向かうのかと思っていると、ゲームセンターに行くことになった。以前は、よく「ガチャガチャ」の専門店『ガチャポ』に連れて行かれていたが、短期間のうちに趣味・趣向が変わったのだろうか。何とK本君のガチャガチャ・ブームは終演を迎え、新たなるブームが生まれていたのだ。それが、これだ。


 「カードダス」


 いや、違う。これだ。


 「データカードダス」

 私が、中学生時代に購入していた「カードダス」ではなく、「データカードダス」である。データカードダスとは、デジタルデータとカードゲームを融合させたものであり、専用カードについているバーコードをマシンに読み込ませてゲームを楽しむということになっている。しかし、K本君の遊び方は違った。K本君の遊び方を説明しよう。


 〈K本流データカードダスの遊び方(2人で対戦する場合)〉

 

  ① 自分の持っているカードと、対戦相手が持っているカードをテーブルの上に置く


  ② そのカードを混ぜ、よく繰る


  ③ 繰ったカードを裏にして置く


  ④ じゃんけんをして勝った者からカードを引いていく


  ⑤ 引いたカードが自分の物になる


 え、それだけ?それで終わり?

 つまり、2人のカードがシャッフルされるだけなのだ。データを使え!データを!専用の機械に読み込ませろ! 

 どこが面白いのかと聞くと。


 「相手の持っていたキラキラカードなどが自分の物になったり、自分のキラキラカードが相手の物になったりと、スリルがたまらない」


 それは単純なシステムのオリジナル・ルールであり、推奨されているデータカードダスの遊び方ではない。そもそも、データ・バーコードの意味がない。

 

 人生は、調査・研究・思考・論述の繰り返しである。この永遠たる輪廻に出口はない。あるのはただ、「相手の持っていたキラキラカードなどが自分の物になったり、自分のキラキラカードが相手の物になったりというスリル」だけ。

 愛弟子たちと、プロデューサーのニコル・チーチョ氏とのバンド「河豚毒コロリ団」。この夏、私はコロリ団の新曲制作に取りかかっていた。実弟との協同作業により、瞬時に曲が完成。後は、詞を書くのみとなった。

 一人、暗室に籠もって思考。

 完成した曲は、スラッシュなリフに、ツインボーカルによる妖艶なメロディとノイジーなラップが絡み合うニューメタル・ゴシックな曲調である。そのため、詞も書きがいがあり、じっくりと時間をかけて取り組むことにした。

 まず、メロディ部分は割と早々に書き上がった。残す所はラップ部分である。日本語、古語、梵語、様々な案が交錯する中で、脳裏に浮かんだものはこれであった。

 呪文。

 ラップをそのまま呪文を唱える形にして、ラップの概念の外側へ。しかし、この呪文というアイデアを思いついてしまったことこそが、分析気質の私を長い長い研究の沼に頭からダイビングさせてしまう要因・原因となる。

 呪文を取り入れるにしても、適当ではいけない。きっちりとした研究・調査をした上で、詞は綴っていかなければならない。そこで登場するのが、これだ。


 羽仁礼著『図解 近代魔術』(新紀元社)

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 本連載、再登場。伝説の書籍『図解 近代魔術』。愛弟子・柿薔薇皇帝とネタ合わせをしていたとき、ネタ合わせそっちのけで笑い転げた『図解 近代魔術』。早速、索引を調べると、そのものずばり「呪文」という項目があった。「第4章 魔術の道具」の中にそれはあった。

 それでは、本文を引用しながら進めよう。


 「魔術的な結果を生むために口に出して唱えられる特定の言葉を総称して呪文と呼ぶ。呪文の内容は、一般的に典型的なものが多く、直喩や隠喩、擬音や節回し、古語や不可解な語がしようされることもしばしばあるが、その種類や用法は様々で・・・」


 なるほど、よくわかる説明である。「不可解な語」が気になるが、ここでは「様々な種類や用法」をクローズアップしたい。「様々な種類や用法」について、本文はこう続く。


 「病気や災厄を祓ったり、事業の成功を祈願したり」


 妥当である。これは、呪文を使う場面として極々適切である。だが、次はどうだろうか。本文はこう続くのだ。


 「くしゃみやあくんびなど不吉な生理現象が生じた場合の厄払い」


 不吉な生理現象に厄払いがあるか。そして、くしゃみやあくびは不吉なのだろうか。くしゃみは、誰かがうわさ話をしているなどとよく言われるが、不吉な生理現象とはいえないのではないか。それとも、西洋ではとても不吉なことなのだろうか。それならば、例えば日本だと江戸っ子の「へくしょーい!ちきしょーめ」の「ちきちょーめ」が厄払いにあたるのだろうか。さらに、本文は続く。


 「体をぶつけたりしたときに痛みをこらえる文句など」


 痛いの痛いの飛んでゆけ。やかましわ! 痛みをこらえる文句、他にどうのようなものがあるのか。気になる。それを教えてくれないかい、『図解 近代魔術』よ。さらにさらに、本文はこう続く。


 「ほとんどありとあらゆるものがある」


 なんでもありなんじゃないのかい。呪文の種類・用法には、「ほとんどありとあらゆるものがある」


 なんだか、よくわからない文句であるが、奇怪さが迸る文句である。


 ほとんどありとあらゆるものがある。


 肝心の具体的な呪文を調べる前に、呪文の種類や用法にはまってしまった。集めるのだ。呪文関連の書籍を集めるのだ。一週間にわたる収集の結果、以下のようなタイトルの書籍が集まった。どのタイトルの書籍が参考になるのか検討したい。

 『大人になる呪文』

 違う! そういうのを求めてはいない。

 『大人になる呪文 新学期』

 だから、違う! 新学期をつけても変わらないぞ。

 『少年テングサのしょっぱい呪文』

 どんな呪文なんだ。所詮、少年だ。

 『魔法の呪文を唱えたら』

 どうなるんだ! その呪文自体を教えてくれ。

 『魔法の呪文を唱えたら2』

 続編はいいから、呪文のことを詳しく教えろ。

 『大好き! 今日からの私~愛される心とからだをつくる秘密の呪文集』

 怖いよ。これは怖いよ。

 『人生を変える笑顔のつくり方:絶対、運が開ける笑顔セラピー』

 呪文じゃねえじゃねえか。いや、これは本文に呪文が記載されていたのだ。

 「寝る前に《自分専用の魔法の呪文》 あなたが毎日、寝る前の1分前間言い続ける言葉は何でしょう。誰でも使える呪文を2つ提示しておきました」

 提示してくれている。その呪文とは。

 「私は、1日、1日、すべてが良くなっていきます」

 ざっくりした内容。すべてが良くなる。すべてというのは、よくばりすぎてはいないだろうか。まさに、「ほとんどありとあらゆるもの」なのではないか。
 さらに、もう一つの呪文とは。

 「ツイテル、ツイテル、ニコニコ元氣!」

 ほとんどありとあらゆるものがある。

 呪文とはかくも奥深きものだったのか。いやいや、ちょっと待ってくれ。これは、自己啓発、もしくは「おまじない」の類ではないか。そうではなく、私は魔術的な呪文の調査・研究をしていたのだ。サラ・リトヴィノフ編、風間賢二訳『世界オカルト事典』によると、悪魔を呼び出す際の召喚魔術なるものがあるという。

 集めろ、集めるんだ。召喚魔術関連の書籍・資料を! 

 詞が完成する日は来るのだろうか。