調査哲学論考 | black kairitu

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デス師匠のweb連載Season3。毎月1日更新。コラム、レビュー、レポート、詩、ショートショート、日記など。増刊号、号外、休刊あり。

 「女子はオムライスを好み、休日は雑貨屋を巡る」


 これは、私の調査によって導き出されたデータである。はたしてこのデータに信憑性はあるのか。この説を唱えた際、何度か異論・反論を頂戴した経験はある。

 

 人間は、個人的で寡少な経験値から全てを判断してしまうことがある。 


 ある30代独身女性が言い放った法則はこれだ。


 「男性と女性は根本的に食の好みが違う」


 おそらく、以前つきあっていた彼氏と食の好みが違っていたのであろう。ただ、単にそれだけの理由だ。


 人間は、個人的で寡少な経験値から全てを判断してしまうことがある。


 「女子はオムライスを好み、休日は雑貨屋を巡る」という女子の生態における調査も、そうして生まれてしまったのかもしれない。しかし、雑貨屋はともかくとして、オムライスを好きな女性は確かに多いのだ。しかも、オムライスにおいては女性だけでなく男性をも魅了する力がある。今回の調査はそのことに関するものだ。

 オムライスをこよなく愛する男がいた。

 そう、私の友人であるK本君である。しばしば、当連載に登場するK本君。前シリーズの連載の『オムライスにまつわる思考の遍歴』において書いたが、彼がオムライスを好きな理由をおさらいしておこう。


 「卵とソースのマッチング」


 ライスはどうなったんだ。ライスは!ライスにも触れてやれ!


 私はこのツッコミを何度繰り返したらいいのだろうか。だが、今回はさらなる調査結果にツッコミを入れなければいけなくなったのである。先日の話だ、K本君の同僚であるO崎氏と3人で食事をした。そこで、O崎が注文した料理とは。


 「オムライス」


 驚く事なかれ、なんとO氏もオムライスが好きであったのだ。そこで気になるのは、やはり好きな理由だ。その理由がこれだ。


 「卵のふわふわ感」


 だから、ライスはどうなったんだ。ライスは!しかも、もはやソースすら出てこない。「卵のふわふわ感」が好みであるならば、スクランブルエッグで良いのではないか。

 

 興味深く、面白い人の周りには、興味深い人が集まる。


 3人で食事を済ませた後、どこに向かうのかと思っていると、ゲームセンターに行くことになった。以前は、よく「ガチャガチャ」の専門店『ガチャポ』に連れて行かれていたが、短期間のうちに趣味・趣向が変わったのだろうか。何とK本君のガチャガチャ・ブームは終演を迎え、新たなるブームが生まれていたのだ。それが、これだ。


 「カードダス」


 いや、違う。これだ。


 「データカードダス」

 私が、中学生時代に購入していた「カードダス」ではなく、「データカードダス」である。データカードダスとは、デジタルデータとカードゲームを融合させたものであり、専用カードについているバーコードをマシンに読み込ませてゲームを楽しむということになっている。しかし、K本君の遊び方は違った。K本君の遊び方を説明しよう。


 〈K本流データカードダスの遊び方(2人で対戦する場合)〉

 

  ① 自分の持っているカードと、対戦相手が持っているカードをテーブルの上に置く


  ② そのカードを混ぜ、よく繰る


  ③ 繰ったカードを裏にして置く


  ④ じゃんけんをして勝った者からカードを引いていく


  ⑤ 引いたカードが自分の物になる


 え、それだけ?それで終わり?

 つまり、2人のカードがシャッフルされるだけなのだ。データを使え!データを!専用の機械に読み込ませろ! 

 どこが面白いのかと聞くと。


 「相手の持っていたキラキラカードなどが自分の物になったり、自分のキラキラカードが相手の物になったりと、スリルがたまらない」


 それは単純なシステムのオリジナル・ルールであり、推奨されているデータカードダスの遊び方ではない。そもそも、データ・バーコードの意味がない。

 

 人生は、調査・研究・思考・論述の繰り返しである。この永遠たる輪廻に出口はない。あるのはただ、「相手の持っていたキラキラカードなどが自分の物になったり、自分のキラキラカードが相手の物になったりというスリル」だけ。