シュヴァルツヴァルト‐黒い森‐ | black kairitu

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デス師匠のweb連載Season3。毎月1日更新。コラム、レビュー、レポート、詩、ショートショート、日記など。増刊号、号外、休刊あり。

 先月、ある森に迷い込んでしまった。森での出来事はこのことから始まった。 


 白髪を染めた。

 

 イメージ的に問題があるため、カラオケでアニソンを歌うことなど、いくつかの行動を弟子の河合将軍に禁止されている私である。だが、今回はほどほどの自虐ネタを基調に筆を進めていきたい。

 黒服系Vバンド時代に伸ばした腰まであった髪を切ってから早8年。短髪となった黒髪に、白髪が混じってくるようになったのである。どうにもこうにも、まずい状態になってきた。そこで、白髪を染めるに至ったのである。


 白髪を染める


 長年、自由律俳句を詠んできたが、久々の自信作となった。


 生まれてはじめて白髪を染める


 白髪を染めているところを見られる


 自由律白髪俳句。 


 黒い森は、さらに続く。


 胃カメラを飲んだ。


 胃の不快感を緩和する目的で病院に行ったのだが、軽い気持ちで大きな病院に行ってしまったのが間違いであった。胃腸科の医師に、胃の不調を告げた結果、私は言い渡されたのである。


 「では、胃カメラを飲みましょう」

 

 やめてほしい。

 

 軽い気持ちで大きな病院に行ってはいけない。

 

 4日後に胃カメラを飲むことになったのだ。そして、内視鏡検査(胃カメラの検査)当日。まず、胃の動きを止める注射を打たれた。私はジェットコースターと注射とボーリングが大嫌いなのである。もう一度言おう。大嫌いなのだ。

 思わず私は、注射を打とうとする看護婦さんに問うた。

 「痛いですか?」

 すると、看護婦さんは。

 「痛いですよ?」

 

 やめてほしい。

 

 そういうのは、やめてほしい。実際に打たれてみると。なるほど、痛い。何せ筋肉注射だ。三角筋に打つ注射だ。痛くないはずがない。

 何とか我慢したと思いきや、テリー・ギリアム監督作品『未来世紀ブラジル』の登場人物が登場。


 手術着に長いノズルをもった医者だ!


 これは、完全に私が芝居時代に好んで演じていたキャラそのものではないか。無表情で淡々と無謀な手術をするマッドな医者を私は得意としていたが、うわあ、逆に今日は私がやられるんだね。逆に!

 そして、先端から閃光を放つノズルがいよいよ口内に!先端から閃光を放つ漆黒のノズルがー!

 ここで、問題が生じた。


 胃カメラを飲みこめない。


 そもそも私は、大きなカプセルなどの錠剤すら飲み込めないタイプの人間なのだ。それが、先端から閃光を放つノズルなぞ飲みこめようか。いや、飲みこめるわけがない。反語的用法!

 少し、焦った医者が言う。

 「一旦、唾をゴックンしてみましょうか。ゴックンと」

 私が素直に唾をゴックンした瞬間、医者が何と半ば強引に胃カメラを喉の奥につっこんだのである。


 「おえー!」


 アルコールを摂取することがないので、自ら嘔吐するという経験が私にはない。また、どんなに揺れようとも乗り物に全く酔わないので、バスや船で嘔吐するという経験もない。そんな私が物心ついてから初めて出した声。


 「おえー!」


 決して、軽い気持ちで大きな病院に行ってはいけない。

 

 内視鏡検査が終了し暫く待たされた後、私は医師から胃の映像を見ながら検査結果を伝えられた。

 

 「綺麗な胃ですねー」


 確かに、綺麗なピンク色。医師は続けて、こう告げた。

 

 「悪い所がないので、薬を出すわけにもいきません」

 

 黒い森(シュヴァルツヴァルト)は、「森」という名で呼ばれるドイツ南西部の山地・山脈である。この森をどうやったら抜け出せるのか。それは、用意なことではない。なぜならば、近年、育成林業が盛んにおこなわれ、美しい森林地帯となっており、保養地も多いからだ。つまり、途中で必ず保養してしまうからだ。

 私はこれからも、やたらと保養しながら黒い森を進んでいく。