春雨じゃ、濡れて参ろう(上)~アナーキー・イン・ザ・グラウンド&エモーショナル・ハードソバ~ | black kairitu

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デス師匠のweb連載Season3。毎月1日更新。コラム、レビュー、レポート、詩、ショートショート、日記など。増刊号、号外、休刊あり。

 デスロウの長い一日。
 これは、私のある一日の出来事を記録したものである。
 先月、私が信頼・尊敬している三大教官(音楽・お笑い評論家K野氏、帝釈峡が生んだ天才芸人TUMIちゃん、「おしゃべり王子」ことS藤兄さん)のうち、K野・TUMI両氏とともに、アート集団「濃厚」メンバーである愛弟子たちが通う高校の体育祭に行ってきた。
 だが、いきなり到着の時間を間違えた。我々3人が到着した時間は、ちょうど、この時間だった。

 「お昼休み」

 運動場には誰もいない。
 そこで、まずは、サカノヨシヒコやT-MOさんが創作した装飾という名のアート作品を鑑賞することにした。その作品は、まさにスプレーアートであり、ストリートアートが運動場に一際異彩を放っていた。
 こんな装飾、見たことない。素晴らしいできである。さすが、濃厚のアート・ディレクター。
 
 たっぷりと堪能した後、我々は、時間を持て余すことになる。
 時間を持て余す。そこで、我々がはじめた遊びが、これだ。
 
 「テニスボールでキャッチボール」
 
 さらに、そこから、「ピッチャーのものまねをして、それを誰のまねか当てる」という遊びに発展させた。
 
 第1回戦 
  先攻 TUMIちゃん 山内投手(広島東洋カープ)
  後攻 私       山本昌投手(中日ドラゴンズ) 
 第2回戦
  先攻 TUMIちゃん 王野投手(元広島東洋カープ)
  後攻 私       山田投手(元阪急ブレーブス)
 終了

 久々に山内のまねをする人を見た。
 さらに、私の山田投手のサブマリン投法に対して、野球好きで知られるK野氏が何人も投手名をあげてくれたが、そもそも野球が好きではない私には全て誰だかわからなかった。私はただ、変わった投げ方の選手に興味があるだけなのだ。

 そうこうしているうちに、いよいよ応援がはじまったのだ。

 ここでは、柿薔薇皇帝、藤井中将、コパタケ准将、高田少将たちを中心とする團の応援があった。私は、ステージに立つ人間は、音楽であろうが芝居であろうがダンスであろうが、全て芸人だと理解している。舞台に立つことにおいて最も重要なことは、舞台に立つということを意識し、覚悟を決めることである。勝負なのである。そこで、オーラが放たれるのだ。応援という名のパフォーマンスにおいて、彼らは十分すぎるくらいのオーラを放ち、威風堂々としながらも、新しい風、いや突風をふかせていた。
 皇帝の存在感、中将のテクニック、准将のパワー、少将の「って、おーい!」。独創的なパフォーマンスに技術がくわわり、濃厚的な味をうまく応援という競技に昇華させていた。
 こんなの見たことない。
 私は、涙が出そうになったが、濃厚のマザーテレサこと柿薔薇ママに先を越されてしまった。涙もろさには自信があったのだが。ちなみに、先月も「田舎に泊まろう!」の別れのシーンで泣いてしまったのだ。小阪由佳が出演していたやつだ。そんなことは、どうでもいい。

 伝統と文化というものは大切である。しかし、それはただ踏襲をすればいいというのではなく、発展させていかなければならないのだ。そういった意味で、濃厚の作品は、応援、装飾とも新しいものであった。「今だ見ぬもの」。それを作らなければ意味がない。ただ、新しく独創的なこの両作品は、今後後輩が踏襲していくのは困難だろう。なぜならば、唯一無二の存在であったからだ。
 残念ながら、えらいおっさんたちの評価は芳しくなかったが、既存の芸術の最高レベルを作ることも重要であることを理解した上で、それにプラスαとして新しい部分を入れることこそが、私の考える最高レベルの芸術だ。
 電気グルーヴのピエール瀧さんが、「もう新しいものは出しつくされた。後は、どれとどれを組み合わせるかだ」ということを言われていたことを記憶している。確かにそうかもしれない。しかし、何にせよ、新しいものは生れていくのだ。
 ただ、アンダーグラウンドな素養を植えつけすぎた私のせいもあるかなと、一瞬だけ考えた。だがしかし、考えなければならないのは、愛弟子に伝授したネタがすべった場合、完全に師匠のせいだということである。応援を終えた、柿薔薇皇帝の第一声がこれだった。
 「師匠、アンテナすべってませんでした?」
 アンテナとは、ギャグを得意とする芸人ではない私の数少ない一発ギャグの一つ、通称「タワー」である。それを、皇帝は応援の中でやってくれたのだが、決してすべってはいなかった。これは、事実である。ただ、それは。
 
 「ややうけだった」

 そのことだけは確かなのだが、運動場の空気自体に不思議な重さがあった。それは、運動場だから。それでも、結構いけた方だ。
 さらに、私が嘗てロックの神様に謝罪したヨゴレの伝道「仮想競争」(そのことについては、また近々書くことになっている。ここではそれが、30年間、シュールとブラックを常とする芸人である私にとって、はじめてのヨゴレ芸であったことだけ記しておく)においても、正統派として皇帝は挑戦していたが、異質なヌンチャクでなんとかなっていた。私としても、一週間前にヌンチャク技を伝授したかいがあったというものだ。畳のうえでヌンチャクを振り回す。ひょろながコンビ。それを見るコパタケ。という情景が一週間前の柿薔薇邸にあった。
 
 その他、打ち合わせと違う本番の段取りに戸惑い、鐘を持ったままうろうろしてる、神楽担当・ハーバラ中尉とハラワタ中将。
 体育祭において全くといっていいほど自己効力感を得られないので、とりあえず一生懸命リレーの応援をしている大江戸河合。
 ある女子高生に、「ねえ、お父さん、お父さん」と意味なく呼ばれるという是が非でも避けたい絡みをされていた、MCナガタ。
 怖いわ!誰か助けてあげて。
 しかし皆、いい色をしていた。まさに、フメツノフェイス。
 「せめてあなたの中では 特別な色でありたい
 その記憶のどまん中で 血よりも紅く焼きついて」  
 怖いわ!そんなに焼きついたら。
 
 その後、私はK野・TUMI両氏と、そばのスープでぞうすいも食べられるという伝説の支那そば屋へ行き、濃厚の宴でアート集団「濃厚」のメンバーと合流することになる。
 
 つづく!

 「ねえ、お父さん、お父さん」