江戸っ子をあとに、約束の時間までもう少し、電車で移動なのですがまだ早いですな。
仲見世あたりをそぞろ歩きしましょうか。表通りを見ますと、宇は変わらず並んでおりますなあ。
とりあえず栄寿司から入って、土日庵の方まで歩いてみますかね…と路地に入り込んでふと見ると、ミツワの前に行列が三人…ん、扉がまだ開いてない?
ああ、平日は五時からでしたっけ。時刻は開店の5分前、そそくさと列の最後尾に並ぶあたくしでした(^^;
中の支度の様子を伺いながら待つことしばし、結局オープンは20分後となりました。三人で支度するんだもん、時間がかかって当たり前ですよね。
「どうぞ~」とお姉さんの元気のいい声に迎えられて、さて、ニュースが良く見えるように四番テーブルの角に掛けようかと思っていると、ご夫婦がお着きですね。「相席よろしいですか?」って、もちろんですよ。ミツワの良い所は、この相席にあると思っていますからね。あたしは長居するつもりはないから、テレビの良く見える席をお二人に譲って、常連卓の五番の様子を見ながら、オーダー順が回ってくるのを待ちましょう。
ん、遅れてみえたお三方は、予約の人数が揃っていないけど入れろって、無理を通してどうするんだか…気のせいか、胸のバッヂは秋霜烈日じゃなかったかなぁ。気のせいだといいんだけど。
ま、あたしはあたしのお酒に向き合うだけです。今日はあまり酔えないし、珍しくビールの大瓶などを注文して、ミツワに来たらはずせない刺し盛りは、大好きしめ鯖にブツと二種類を決め打ちしちゃうと、いつも同じオーダーになっちゃうのよね。しかも黒板にはもうひとつのあたしの好物、カツオが書いてあるし。一応、ぶつ貝と迷ったのですが…ミツワは貝もおいしいですの…瞬間で心は決まっていましたね。好きなものには代えられない、保守性の証だよなぁ…居酒屋巡りには向いていない冒険できないタイプ。
それと、アカとナンコツの混ぜタレでいただきましょう。こちらも江戸っ子同様、もつ焼きの混ぜ盛りができるお店。しかも、一皿二本を一串ずつオーダーできるのが一人飲みには嬉しい限り。
一人で色々な味が楽しめて、かつ相席標準の四人掛けですから、興が合えば色々なお客さんと膝詰めで話せるのが、こちらの醍醐味と僕は思っています。もつ焼き屋、数あれど、ひとりで来るのにこれほど向いているお店は、あまりないような気がします。それにしても、よく黒板見ないでオーダーしちゃった。後で見てみると、黒板に団子の文字が…ああ、団子とどちらかを混ぜればよかった(T-T)。
そんな後悔などする暇もなく、コーラの引き抜き式冷蔵庫から出された、ビールの大瓶が届けられます。
グラスにトクトクと注ぐてぇと、浮かび上がる白い泡。この真白な泡が消えないうちに、ゴクリゴクリと喉を鳴らして飲む…プハァ、もう一杯。生もいいけど、たまに飲む瓶もいいねぇ、一人悦に入っちゃいます。
相席のご夫婦は、奥様がお酒が苦手なタイプの模様。遠慮がちにおねえさんに「お湯割り、薄めってできますか?」とご注文。「はい、できますよ!」といつも元気なおねえさん。薄手のグラスに並々と注がれた湯割りが届くと、「熱いから気をつけなよ」なんて、旦那様の気遣いが心憎い。ああ、人にやさしくなりたい。
酒場の風景を見るとはなしに見やりながら、ビールをチビチビとやっていると、来ました来ました刺し盛りさん。
角皿にどどんとこのボリュームで500円ですからね、魚が食べたくなるとつい足を運んじゃうんですよね、ミツワ。
もつ屋でこれだけの魚が食べられるんですから、なかなか和食店には足が伸びないのよね。
さて、まずはサバを一口。一切れ取ってみると白濁した表面、これは漬かりすぎかなと思いつつ口に運ぶと…すいません、あたしの不勉強を許してください。確かによく味が染みているんですが、漬かり過ぎという表現は当たらず。漬け酢の調合がちょうどいいんですね、酸味と甘味のバランスが良くて、なんとも爽やか。
それに身が柔らかいんですよね。漬かり過ぎて固くなったしめ鯖に会うことがありますが、こちらのしめ鯖の何とも期待を裏切らないこと。以前、酔っ払ってしめ鯖を単品でお願いした時に、おねえさんから心配されて「しょっぱくて途中で飽きるかもよ」と言われましたが、とんでもない。その時も平らげましたが、これだけで一皿いけますなぁ。
でも、今日は三点盛りなのです。違う味わいも楽しめる贅沢三昧。続いてのマグロぶつ。これがまた何とも見事なぶつ切り。サイコロ状も一辺が3cmはあろうという頬張りサイズ。ワンピースで口の中一杯です。いただきますと、なんとも立体感のある旨さ。歯いらずで舌で十分押しつぶせるやわらかな身からあふれる旨味。日本人ってこの味わいを愛しているんだろうなぁと思ってしまいます。典型的日本人のあたくし、「ごーはーんー」と叫びたくなるのをグッと堪えます(笑)。
などと極上の刺身を楽しんでおりますと、焼き物もあがってまいりましたよ。
名物アカ…メニューには赤身肉と書いてありますが、いわゆるカシラ肉ですね。この歯ごたえ、あふれる肉汁、なんとも肉肉してますねぇ、「ああ、ボール飲みたい」の一言をぐっと堪えて。
お肉がたっぷり付いたナンコツも、肉の柔らかさと軟骨のコリコリとした歯ざわりを一緒に味わえて美味。それもこれも甘味があってさらりとしたミツワ独特のタレのおかげでしょうね。これってやっぱりウナギを一緒にやってるからなのかしらん。(タレは)ウナギと分けているって話も聞きますけど、どうなんでしょうか…まあ、あたしとしては、このタレをまぶしたご飯を食べたい…って、そればっかりや(苦笑)。
焼き物も十分楽しんで、さらには刺身のとどめにカツオまで控えておりますけんね。ほんに一人酒の贅沢ですなあ、三点盛りを一人で堪能できるんですから。逆に一人だと三点盛りに焼き物二本で十二分に腹一平くん。
まだまだ脂の乗っていない春鰹、でも青く爽やかな味わいは戻り鰹にはない春の魅惑。生姜でも山葵でもいけますなあ。むしろ、こっちの方がごはん向きかも…まだ言うか(^^;。
最後に残ったビールを煽ってお勘定をお願いします。
約束まで一時間ちょっとの時間潰しのはずが、おいしいアテにおいしいお酒、堪能させていただきました。時間潰しとは言葉が悪いですね、贅沢な時間の使い方ができました。江戸っ子さん、ミツワさん、ご馳走様でした。これがあるから立石はやめられないのよね~。
ミツワ 17:00~22:00(土曜16:30~) 料理とりおき不可。
予約は平日のみ、17:30までに全員揃う方のみ受付。
日曜定休(祝日要確認)