贅沢な時間潰し -江戸っ子(京成立石) | 丁稚烏龍帳

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today,detch stood live on the earth,too…

丁稚飲酒帳-横丁の向こう側に  ふと時間のできた日、たまたま立石にいたりすると、ふらふらと吸い込まれてしまうのがのんべ横丁。

 町並みの吸引力と言うんでしょうか。ちょうど暖簾を出されていたママさんに目礼して、細い二本路地を抜けると、その先にあるのが生ホッピーの名店、秀。そして、「立石の関所」江戸っ子であります。


 四時半過ぎのこの時間、まだ秀は開店準備中ですね。そしてつい先ほど、四時半開店のはずの江戸っ子は早くも七分の入りだ、さすがですねぇ。

 道路沿いの焼き台から、長いカウンターが鍵型に伸びる横長の店内構成。席数は50ほどだそうです。唯一のテーブル席は階段下の一卓のみ、そういえば表から覗いてて、目のあったkさん夫妻と宇ち中さんに手招きされて、牛さんと初めてお会いしたのは、このテーブル席でしたねぇ。


 ともかくもしばらくぶりの江戸っ子、いつもは焼き台か煮込み鍋近く、店内左手側に腰掛けることが多いのですが、この日はいつもの席付近にもつ焼きフリークっぽい小団体さんが陣取っておいでですので、右手側のコの字カウンターに座りましょう。普段は振り返って背中越しに見ているメニューが、よく見られるのはいいけど、お姉さん方や焼き台の様子が見られないのは、ちょっと淋しいかも。小さな酒場でも席によって雰囲気が全然違うことって、よくありますよね。丸好にしたって、最大14席の鏡下と昔の写真下、入り口正面と、まるで見え方が違いますからねぇ。


丁稚飲酒帳-淡い琥珀の  お飲み物はと聞かれたら、脊髄反射で「ボールをひとつ」とお願いしてしまいます。後から入ってみえたカップルさんは生二つをオーダーされていて、そういえば江戸っ子の生っていくらなんだろう?と短冊を探してしまいました(^^;

 すぐに出てくるボールは、曲線タンブラに淡く透き通る琥珀色の液体。一口いただくと、ソフトな甘みを感じる香りが鼻腔を抜けていき、爽やかな炭酸が喉を潤してくれます。飲み込む寸前、焼酎の風味がスッキリと甘味を洗い流して後味清涼、何杯でも、行けそうな気がする~と天津木村師範代が吟じられるような美味しさです。いやぁ、初夏にしては暑かったこの日、一口で生き返る気がします。


 ボールと一緒にあては煮込みに豆腐を入れていただきましょう。江戸っ子といえば、あたしの黄金セットはこの二つ。この二品に焼き物一皿で、気が乗ればボールをお代わりして、千円ちょっとのお会計というのがあたくしのたいていのパターン。なので、皿ものはあまりいただいたことがなかったりして。赤身刺しとかレバ刺しも好きなんですが、一人だとちょっと持て余してしまうのですね。


丁稚飲酒帳-端麗系の最高峰  なんて考えていますと、いらっしゃいました小鉢に一杯の煮込み。シロを主体にレバ、ガツと色々なもつの下にドンと鎮座している豆腐が迫力です。「豆腐だけ」という注文もあり、遅い時間だと切れている豆腐、味噌出汁のよく染みたこの豆腐がうまいんだよな…とがっついて食べると、上あごを火傷するので気をつけましょう。思わず、ボールを口に含んで口の中を冷やす羽目に(←がっついた阿呆)…。


 トロッとしたシロも美味しいし、何より熱が通ってホロッとしたレバがたまらない。レバの味噌汁って美味しいんじゃなかろうかと思ってしまいます。そして、淡い味噌味にもつの旨味が染み出したこのスープ、ニンニクの風味が利いて何とも美味しいのよね。煮込み数ある中で、端麗系の中では最高峰のひとつだと信じてやみません。


 さて、今日は時間もないし、あまり酔えないし、あとは焼き物一皿で締めましょう。

 煮込みを味わいながら、正面の短冊とにらめっこ。やはり一人でお邪魔した時には、混ぜて色々と味わいたいものです。シロもいいし、ハツも食べたいなあ…江戸っ子のナンコツってどんなだったっけ…等々、色々悩みは尽きせませんが、ここはレバとアブラを混ぜて、甘タレでお願いしましょう。「レバアブラ混ぜタレ」と天童よしみちゃんママの注文が通ります。そうか、辛タレは「混ぜ辛」だけど、スタンダードな甘いタレは「混ぜタレ」でいいのね、「混ぜ甘」じゃなくていいのねとひとつ勉強になった夕暮れでした。


丁稚飲酒帳-迫力もつ焼き(320円)  ボールをちびりとやりながら、周りの方のお話に耳を傾けるのも、また有意義な夕暮れ時の過ごし方。

 向こうの桜金造を渋くしたようなおじさんは、「俺はここが80円の頃から来てる」って、まさかと思いましたが、80円が100円に上がって、150円、180円…と値段の変遷を滔々と語っていらっしゃいます。どうやら本当の話のようで、江戸っ子も時代の変遷にあわせて、50円刻み位で値段が上がってきた歩みがあるんですねぇ。勉強になるなぁ。

 さてさて、ドドンと来ましたもつ焼き四本。正直申しまして、あたしの単価が上がらないのは、煮込みともつ焼きでおなか一杯になっちゃうからなんですよね。このボリュームでっせお客さん。先入観で小ぶりな印象があるんですが、どっこい宇ち多、ミツワに引けをとらないボリューム感。

 
丁稚飲酒帳-トロリとアブラが  レバのやや若な火の通し方もすばらしいし、このアブラなんざごらんなさい。串がしなるほどのボリューム感。宇のサックリ系、ミツワのコリコリ系とアブラの味わいを二分したことがありましたが、江戸っ子はコラーゲンたっぷりのネットリ系ですね。これがこくたっぷりの甘タレになんともよく合うのだなぁ。

 そして、卓上の唐辛子、赤いヤツをたっぷりとまぶしていただけば、これが食欲増進剤。辛タレだとニンニクもたっぷりのスパイシーさなんですが、甘タレ+唐辛子が味の変化を自在にできて、あたし的には好きな組み合わせ。もちろん、テッポウ辛も美味しいですけどね。


 さてさて、煮込みに焼き物でおなかがくちくなったところで、ご馳走様。

 今日のお会計は、すいません320円の3セットで960円でした。もう少し戦力を連れて、お邪魔しますね。それにしても千円札一枚で、十二分の夕飯になるんだから、なんとも贅沢な時間の過ごし方です。ビバ立石、ビバ江戸っ子、今日もご馳走様でした。


江戸っ子 16:30~21:00 日曜定休(祝日は要確認)