丁稚、おい丁稚、コッペパン食べて恍惚としとるな、しっかり前向いて歩け。「ほぇ~、ふかふかで幸せ気分になれるコッペパンでげしたよ~」。まあ、それはわかるがニャ。パン屋さんを抜けるとまもなく橘の商店街も終わり、曳舟たから通りを南下。十間橋通りと交差する東武亀戸線の線路を越えて、文花二丁目の交差点を目指す。
交差点に近づくと、通りの向こうに鮮やかな桃色が垣間見えてくる。ここが今日の目的地、香取神社だニャ。
ここはかつて、小村井梅園と言われ、、毎年梅花の盛りには将軍家の御成りがあり、御成り梅の名も残っている。安藤広重の「絵本江戸土産」の錦絵には「満開の節は薫風馥郁として行人の鼻を穿つ実に新古の梅屋敷にも倍したる勝景…」と記されたほどの名園だったが、明治四十三年の大水により廃園となった(香梅園縁起より抜粋)…という古来からの景勝地だそうニャ。まあ、丁稚がみつけてきたのは金曜日のことだったがニャ。
この古来の名園を復元させたいという、宮司はじめ有志の手により、平成六年に復元されたものという。
門がわりの石柱を通り抜けると、遠くに鳥居が望める。あれが香取神社の社殿だニャ。
入口右手、社務所の庭だったろう所に、香梅園と刻まれた扁額が架けられている。坪庭とは言わないが、梅園というほどの規模ではない。しかし、面積と植えられた梅の本数は少ないものの、高木と低木が寄り添うように植えられているその密度は相当のものだ。m蔵などは「こげんに詰めて植えとうたら、育った時がキツキツじゃろうにのう」と心配している。
そのおかげで一目百花、紅白に加え、桃に緑と色とりどりの花が重層的に視界に飛び込んでくるのは、なんとも見応えがある。蕾もまだまだ多く決して満開ではないのだが、十分に満足のできる光景だったニャ。おそらく今週末から来週にかけてが満開だろうが、花開いた梅園の様子も見てみたいものだ。
中でも、それぞれの色の枝垂れ櫻が要所に植えられており、まだ緑の枝の新芽にもたくさんの花芽がついている。丸く膨らんだ蕾が枝に連なる様子は、まるで雨粒のようだ。五月雨を指して梅雨というのは、中国で梅の実の膨らむ時期に指す雨を言うからだそうだが、こんな色とりどりの滴に彩られる梅雨ならば、日々楽しめるのにニャ。
そのままたから通りを南下すると、花王の工場敷地沿いの緑道にも何本も梅が植わっている。梅の散歩道、いわば梅ロードだニャ。そのまま北十間川を越えればいよいよ亀戸の地だ。ここまで来たのだから、天神様まで足を延ばすとしよう。
正面鳥居前の紅梅は、先々週すでに満開だったこともあり、色あせ始めているが、心字池を挟んで境内の東西に広がる梅園は、今が盛りの風合いだニャ。こちらもおそらく来週が見頃のピークだろう。
今日も大勢の人が観梅に訪れているが、向こうのおばちゃんが記念撮影用に梅の枝をがっしり掴んでいるのは閉口だニャ。「ほうれ、おまんらが掴んじょうから、たわんだ梅の花が泣いておるき!」偉いぞm蔵、良く言った、内心で…まあ、人の振りみてなんとやらという諺のとおり、自分がああいうおばさんにならないよう心がけると良いと思うニャ。
曳舟からゆっくり歩くこと、30分ほど。初春を告げる梅の花の香りに、ひと時の安らぎを求めに行くのもまた風流なものだニャ。
「先生、さっきフランク屋のお兄ちゃんが、「買ってくれない」と嘆いてたから、フランク買ってほしいでゲス~」。むろん、花よりフランクのヤツも楽しめること請け合いである。
香梅園梅まつり 2/20~3/7 2/14現在七分咲き程度(丁稚見立て)
亀戸天神梅まつり 開催中~2/28 同日現在見頃(同丁稚見立て)