調和・爽快・重厚、葛飾ボール三景 -喜楽・小島屋・きよし(堀切菖蒲園) | 丁稚烏龍帳

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today,detch stood live on the earth,too…

                                               2月12日(金)

 飛び石連休谷間の金曜日。元来予定されていた江東区飲みが延期となりまして、では年始の挨拶の際に、しばらくぶりに飲みましょうと声をかけていただいた、Sさんをお呼びして堀切ボール三昧と参りましょう。


丁稚飲酒帳-喜楽のれん  六時半のお約束に定時に会社を出たのですが、さすがに青戸からは小走りでも20分じゃ着かないのね。二分ほど送れて到着しまして、年始の挨拶もそこそこにまずは平和橋通りを渡って向かいの路地へ。金宮焼酎のすすけた暖簾と佇まいの確かさが歴史を感じさせる、喜楽さんから参りましょう。


丁稚飲酒帳-細長コの字カウンター  こちらは右手に細長いコの字カウンター、左手にはテーブル席が無数に並び、満席になれば50人は硬いのではないかという下町にしては大箱のつくり。今日はカウンターに先客さんがお二方だけの少し淋しい店内です。おねえさんに、カウンターでいいですかと聞くと、どうぞと席を勧めてくれます。

 「お飲み物は?」のコールに、悩むことなくボールを二つお願いします。するとおねえさんがグラスをお持ちになり、器用に両手に構えたドリンクニッポンの炭酸をグラスに同時に注いでくれます。そしてカウンター下で冷やされた一升瓶から、素を注げば綺麗な表面張力のハイボールの完成です。



丁稚飲酒帳-調和のボール  乾杯して一口、sさん「飲みやすいですね」と喜んでくれます。連れてきた人が喜んでくれると、こちらもつい嬉しくなってしまいます。喜楽さんのボールは、一言で言えば「調和」。素の香りと炭酸の爽やかさのバランスが良く、sさん曰く「何杯でも飲めます」とのこと。あたしもこちらのボールは好きですねえ。

 一人では来れない系酒場のこちら、大食漢のsさん頼みで、とんかつ、たこぶつ、たら焼きといただきながら、すいすいボールのお代わりを重ねます。三ヶ月ぶりの出会いのイントロはこの位で、次のボールが待ってますよ。


喜楽 16:00~21:00頃 日曜定休(祝日営業)





丁稚飲酒帳-元祖のアイツ  二軒目は平和橋通りの反対側の路地裏へ。赤いテントに元祖ハイボールの文字が眩しい小島屋さんです。


丁稚飲酒帳-厨房ぐるりのカウンター  今日こそはニャンコと遊んでやるんだという強い決意とともに、m字カウンターの一番奥、座敷側に陣取るも、ありゃ今日はニャンコの姿がない。どうもおやすみだったようでございます。

 このトラちゃん…トラ猫じゃないんですけどね(笑)、これがまた可愛いんだなあ。グーパー猫って一時期CMで話題になりましたが、手をパーっと広げてなめてる様子が愛らしかったりして。


それにしてもこの厨房をぐるりと囲む変形カウンターは、味がありますねぇ。角が一杯ある消しゴムみたいっていうんでしょうか。カウンターだけの店内構成なのに、グループトークが多いのがそれを裏付けているような気がします。




丁稚飲酒帳-爽快のボール  さて、こちらのボールはS字ラインの美しいくびれグラスに、やはり炭酸を先入れ、流れるような形状の水差しから元祖の素を注ぐ作り方。喜楽さんのボールに比べて淡い色合いで、グラスの底から湧きあがる炭酸の泡が示すように強炭酸のキックが身上です。一言で言えば「爽快」でしょうか。

 おかみさんとの手作りウコンを肴にしたやり取りも楽しく、あたし「酔わないようにするウコンですよね」、おかみさん「うちは酒場だから、酔ってもらわなきゃ困るんだよ」…その通りです、悪酔いしないためのウコンでした。これもまた爽やかな苦味が、酔いを心地よくしてくれますね。フルフルの厚揚げ、貝の甘味のしっかりした青柳とあてもまた風格ありですね。


 小島屋 17:00~22:00頃



丁稚飲酒帳-青いテントの潜水艦  さて、三軒目こそ今宵の目的店。やはり移転前の風情を味わっていただきたくて、きよしさんです。今日もガード下に鮮やかな青いテントが、僕らを迎え入れてくれます。
丁稚飲酒帳-龍のカウンター  なんとも表現できない変形複合カウンター、今日は奥のブロックが比較的空いています。中央入り口を入って、右手奥のカウンターに二人並んで腰掛けます。


 初めてお連れしたSさんも、一目でこの雰囲気がお気に入りになった様子。この低い天井、時折店内が揺れる通過電車の重低音、肩寄せ合える変形カウンターと、愛すべき要素が盛りだくさんですもの。

 三軒目でボールもかなり入り、「無くなってしまうのは、もったいないですねぇ」なんてお話に、しみじみと花が咲きます。でも、まだまだ行くもんね、お父さん、ボール二つください。


丁稚飲酒帳-重厚のボール  こちらのボールは角型タンブラに表面張力、色は三軒の中で一番濃い黄色。素の風味がガツンと鼻に抜けていきます。「重厚」なハイボールと言えるでしょうね。


 最高評価を付けている逸品、ウェットな〆サバに、二人では十二分の肉豆腐と定番どころのアテがすいすい入るのも、このボールが進ませるからだと思います。主張が強いボールだけに、酔ってきた時、あるいは強いアテにあわせる時に、真価を発揮するのかもしれませんね。

 それにしても、たらふくいただいて、しこたま飲んで、それでこのお会計でええんですかという下町人情にあふれたきよしさん、再開の連絡、首を長くして待っていますね!


 きよし 6月中旬の移転営業を目指し、現在鋭意準備中


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 似た風味の堀切ハイボールでも、素の調合や炭酸との配分などでそれぞれのお店独特の特徴を出されています。これがあるから、ボール行脚はやめられないんだなあ。多摩方面にお住まいのsさん曰く、あちらはやはりホッピー文化で、葛飾墨田あたりのボールのような酎ハイはないのだそうです。となると、これも地域文化ですねぇ。来年のB1に向けて、墨東ボール学会でも立ち上げますか(笑)!