1月17日(日)
どなた様も毎年、年明けには恒例の新年会がございますよね。
あたしの場合、元旦の川名、松の内に行われるのが通例のまーじゃん亭、そしてシェフが郷里の土佐から山梨に帰る前の帰京に際して、シェフと徳の大将を囲む会。今年は、シェフのご希望で大晦日に丸千葉を押さえまして、今日の運びになったのですが、大将は19日からの店内改装前の最終打ち合わせが入ってしまったり、健康上の理由やら仏事等、理由がいろいろ重なりましてメンバーがほぼ総入れ替えの事態となりました。うーん、当たり年?
それでも飲みたいあたくし、じゃんきー夫妻とm蔵さんとともに260mに達したスカイツリーの下をタクシーで日本堤に向かいます。紺地の暖簾の下がる入り口扉をガラリと開けると、やっちゃんの困り気な顔が…。
ん?と思うと、予約席にお三方、飲んでらっしゃいますね。「悪いね、移動してもらうように段取りしてあるんだ、しばらく相席でやっててくれる?」と、いえいえこちらが無理に一卓押えさせてもらってるんですし、シェフが遅れてくることもあり、席数も足りてますからゆっくり一緒にやりましょうよ。と、カウンターには丸千葉の備品とも言われるようになった熊ちゃんの姿もありますね。後でこっちの席が空いたら来てもらおっと。
ということで、まずはキンミヤのボトルを入れて、割り物はお茶でいきましょう。この緑の色の濃いお茶割りがすっきりしてて美味しいんだ。オーダーは刺身と鍋は主役のシェフがお着きになられてからにして、まずはまーぶるさんご希望のチキンステーキに、しめ鯖、野菜物は生やさい、揚げ物はとり唐揚…とオーダーしかけて、「あ、鶏がダブルだね」とお姉さんに笑われてしまいました。いや、好きだからいいんですけどね(^^;。熊ちゃんから今日の短冊メニューの白子天ぷらが美味しいとお勧めがありましたので、では揚げ物は白子にしましょう。それと、最近の定番おつまみきゅうりもみのマヨネーズをお願いして、一巡目はこの位でしょう。
シェフとお会いするのはどの位ぶりだろうとか、猫ちゃんの成長記録などをうかがっていると、料理がとんとんと出てまいりましたよ。どうです、しめサバの少し赤身がかった絶妙の締め具合。お二人は生やさいの盛りに目を丸くし、さらにチキンステーキの添え物にもポテトと野菜がついていることに驚いてくれました。定食使いする方もいますからね、栄養バランスばっちりなんです。中でも、お料理上手のまーぶるさんが気に入ってくれたのが、きゅうりもみ。
きゅうりを小口に切って、ワカメと一緒にマヨネーズで和えた小鉢の上にごまをパラリと。マヨの白雪をまとった緑色と、カニカマの赤のコントラストがなんとも色鮮やか。マヨネーズの酸味ときゅうりの爽やかさ、さらにもう一味マヨの白に隠されていますが、中にはホタテのほぐし身が。このホタテの甘さが効いています。なにせ、年末に親分達五人で来て、四回お代り…要は一人一鉢食べてしまったというのもうなづける味わいなのです。
そして、続いて出てきた白子の天ぷらは、サクサク揚げたての大ぶりの塊が三つ。一口いただいてみますと、衣はカリッと香ばしく、噛み締めると中の白子がとろりと甘く溶け出します。内外のまったく違う食感が一口で楽しめて、これは絶品よのう。ナイスアシストです、熊ちゃん!
それにしてもこれ600円でいいのかな。じゃんきーさんと、何の白子だろうというお話をしたんですが、たらちりもあるし鱈の白子ですかね。でも、スタンダードの天ぷらじゃないんですよね。いい白子が入った時の限定品なのかな。ともあれ、もし短冊が下がってたら、是非頼んでみてください。
と、このタイミングで遅れていらしたシェフのご登場。昨年末はお仕事の忙しさからプレ忘年会もできずに、駆け足でのすれ違い位でしたから、ゆっくり飲ませていただくのは、あたしもしばらくぶりです。
高知空港でお買い上げになった、ハランボ、ソウダ節、酒盗の三点セットをおみやげにいただき、なんとも感謝です。これがうまいんだよなぁ。先年、高知に行かれたじゃんきー夫妻と高知話に花が咲きます。土佐の日曜市の情景、朝から飲める市場内の広場のお話、カツオの塩たたきにウツボのたたき…ああ、皆さんのお話聞いてると、行きたくなるんだよね、四国高知。
さてさて、あても追加じゃ、まぐろとアジの盛り合わせに、アンコウ鍋をつつきましょう。店内は出る人がいると、すぐに次のお客様が入ってきて、まさに引きも切らず。熊ちゃん曰く、土日の五時、六時はこれが通常とのこと。その中にあってテキパキと仕事をこなし、ツッコミ所をみつければ的確につっこんでいくやっちゃんの仕事ぶりには、本当に芸だなと思わされます。熟練の職人技ですよ。
と、そのやっちゃんが届けてくれたアンコウ鍋。出たー、あいかわらずのボリューム感、これで1600円は採算取れてるんかーい。
ぐつぐつ煮込んでいくと、野菜から水分が出てきて、あふれるスープを避難しなければいけないほど。普通、嵩が減って一鍋に収まるんじゃないのかなあ(笑)。
鍋がしあがる間も、土佐のおみやげ話でもりあがります。話題は今年の大河、「竜馬伝」…あ、伊勢元に見にいかなくちゃ…、「福山くんは土佐弁がうまくないね」とシェフ。それに対して、放映は終了しましたが、日曜劇場JINの内野聖陽さんの土佐弁は的確だったとのこと。確かにいかにもな竜馬だったものなあ。普段ドラマみないあたしが、珍しく引きこまれてしまいましたから。中でも面白かったのが、土佐弁というと「○○ぜよ」というのが定番フレーズのように思っていますよね。ところが、これ、世間一般で良く聞くような使われ方では使われないそうです。土佐人曰く、女性的な表現、少ししなをつくるような表現なんですって。これにはびっくり。「日本の夜明けぜよ」…って、「日本の夜明けよん、うふっ」的な意味合いになるそうで。ためになる居酒屋談義じゃのう(笑)。
ぼちぼち煮上がったところで一口、このスープがたまらんばい。アンコウの身から出た出汁が味わいを層倍にしているのでしょうけれども、基本の味わいが確かだから、芯までスープを含んだ野菜それ自体の甘味と掛け算で、あたしの箸を進めてくれるんでしょうねぇ。本当にとまりませーん。プルプルの皮身もいただいて、明日はお肌つやつやかしら。
そして食べ終わったら、もう一つのお楽しみ。やっちゃんにおじやの支度をお願いします。ごはんにみつば、そして卵が用意され、今日は嬉しいことにやっちゃんが手づからおじやを調味してくれます。タイミングがいいとね、目の前でやってくれるんです。今日のこの混雑状況の中、すみませんね。
鍋の中を掃除して、スープを増量、すると入口の扉がするり、覗いたお客さんがやっちゃんに指を二本立てて、「はい、わかりました」とやっちゃん。「レジ前のお客さんもそうなんだけど、これから銭湯行って帰ってくるから、二人分空けといてねと、こういうことなんだよね。風呂入ってる一時間あれば、うちもその時席がなくてもうまく対処できるじゃない。心得たもんだよね。」と…勝手知ったるですねぇ、お店もお客も息のあった関係、なんとも羨ましいですね。
と話しながらも手はひと時もやすまず、「土鍋だからよ、年がら年中ひっくり返してないと、ひっついちゃうんだよ」と鮮やかな手つきで、鍋の中のごはんを躍らせていきます。
出来上がったおじやは、しっかりと出汁のしみこんで膨らんだお米の一粒一粒と、卵の黄色が綺麗に調和して、なんとも食欲をそそる色合いですねえ。これがハフハフのアツアツで、あれだけてんこ盛りだったアンコウや野菜の旨味がお米の中に封じ込められているのですから、美味しくないはずがないですよね。口の中をやけどしそうになりながらも、ついかきこんでしまうのでした。
おじやをしっかり平らげたあとは、熱燗にシフト。「丸千葉はハンバーグも鍋もうまいけど、こういうほっとするつまみがいいんです」とシェフ絶賛の厚揚げ煮をつつくと、たしかにフワフワで芯までしっかり甘辛の汁が染みた厚揚げは絶品ダス。これはお酒も進みますねぇ。店内の喧騒も肴にゆったりと三時間あまりもお邪魔してしまいました。長居した我々に「悪いね、いろいろ。待たせたり、狭かったり」と、優しく声をかけてくれるやっちゃん。この心配り、自分も誰かにできるようにならなきゃなぁ…なんて思いながら、お店をあとにします。本当にご馳走様でした。寒風吹き抜ける夜空の下を、みんなで連なって泪橋のバス停まで歩く間も、熱燗たっぷり、人情たっぷり、身体も心もほかほかした気分。吹き抜ける風が頬の火照りに心地よく。
今年も初春から、旧知のみんなで集まれて、楽しい話に花が咲き、おいしい料理を味わえて、いいスタートが切れました。発起のシェフに感謝です。今年もたくさん飲みましょうね!
丸千葉 14:00~21:00 水曜定休