そして、昭和の酒場にたどりつき -岩科酒場(新蒲原) | 丁稚烏龍帳

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today,detch stood live on the earth,too…

銀の字を出ても大通りを清水駅へ。まだまだ日は高いですが、六時を回って駅前酒場の暖簾も出てきています。風情のある暖簾に吸い込まれそうになるのをぐっとこらえて、駅のキオスクで150()の黒はんぺんを購入し清水を後にします。昼の岸壁寿司パーティから始まって、観光がてらのお買い物、そして金銀ツアーと今日も一日楽しませてもらいました、ありがとう清水のまち。また、来る日まで…って、この時間にこのメンバーでまっすぐに帰るはずもなく、東海道線に揺られることわずか四駅目で途中下車。降り立った駅は新蒲原です。


昭和の佇まい  駅前には船のオブジェと大きなマックスバリューが目に入りますが、その視線をちょっと右方向にずらしてみましょう。駅前にいくつかの商店が立ち並んでいますが、その中ほどに目指す酒場の暖簾が揺れています。お隣の酒店に併設されたこちらが、岩科酒場。以前から温めていた、機会があれば出かけてみたいという願いが今日現実のものになります。うれしいなっと。


 こちらは酒屋さんが始めたお店ですから、角打ちの発展形なのでしょうね。暖簾をくぐりますと、正面に歴史を感じさせる重厚なコの字のカウンター、右手に四人掛けのテーブルが三つという構成で、地元のお父さん方がそれぞれに憩いの時間を過ごしています。



コの字カウンターの向こうに  あいていたカウンターの手前の席に腰掛けて、さてご注文は…と、おっとみなさんいきなり日本酒ですか
(^^; まだまだお元気ですね~。あたしは遠い帰り道を考えると、まずは薄めに行った方がよさそうだなぁ…ということで、ここでもお茶割りをお願いすると、出てきたのは受け皿がこぼれるまでに並々と注がれたグラスの焼酎に、お茶缶が一つ。それに氷入りのタンブラ。なるほど自分でブレンドする形ですね。これはこれで面白い。しかもお値段175円って、宇ち多ばりだなぁ。富士の地酒高砂が切れているということで、その上のクラスは臥龍梅の大吟醸…しかもこれも600円。

ありがたいことに、注文があってから封を切って口開けをいただきます。みなさん焼酎か普通酒が中心で、大吟に手が出ることは少ないらしく、以前親分がいらした時、大吟を頼んだらお店の人に怪訝そうな顔をされたというお話を懐かしそうにされています。

 さて、すでに受け皿からこぼれていますが、焼酎をこぼさないようにiiさんに昧珍で教えていただいた作法でお尻から注いで…と、それではお待たせしました、本日何回目の乾杯だろう(苦笑)


 左手奥の黒板には魚介から串焼き、揚げ物まで、いろいろなメニューがぎっしり、しかも100円台から高くても400円台、雰囲気といい価格帯といい日頃使いのできるアタシ好みの酒場だなぁ。どうもその思いは皆さん共通のようで、初めて訪れた三人で、「いいお店だねぇ」とうなずきあってしまいます。

 さて、豊富な黒板メニューの中からまず選んだのは、駿河にきたらやっぱりこれでしょ、太刀魚の塩焼き。それにしらすおろしもお願いしましょうか。


駿河名物太刀魚  皮目の銀色がお皿に映える太刀魚は、身がほろほろしていて、淡白な味わいとも相まって淡雪のよう。友人の静岡出身者が曰く駿河に来たらやっぱり太刀魚なんだそうです。運輸技術が向上しているとはいえ、確かに東京ではそんなに見るお魚ではないですからね。名物にもうまいものあり駿河灘。



大盛しらすおろし  これまた名物ですね、しらすおろしなんて
200円で鉢にあふれんばかり。しかも大根おろしの辛味がさっぱりしていて、これはジャパンのあてだなぁ。親分曰く、小さい頃の夏の日、食欲のない日にはしらすおろしにほそネギ(青ネギ)をたっぷりかけて、ごはんにまぶして食べたそうです。それは食もすすみますよね、想像しただけで美味しいの決定だもの。


 どれを食べてもはずれはないし、使い込まれたカウンターの丸みといい店全体の醸し出す雰囲気といい、堀切の小島屋みたいだなぁ…なんて思っていたら、まーぶるさんからも「小島屋を思い出すね」と一言。いやぁ同じお店にたどり着きますか。酒場巡りを重ねているご夫妻と同じ感想だというのが、ちょっと嬉しい(^^

最近、いいお店だと紹介されても感動が少ないそうです。どうしても自分の中のベスト酒場と比べてしまって、それに比肩するお店でないとなかなか心に響かない中、こちら岩科さんは久しぶりに感じいっているご様子。もう少しこの空気を味わっていたいですね…いくつか追加の注文をしましょう。

 まぐろ頬肉焼きに、お肉も行きましょう牛タタキ。しめさんまもよさそうだなぁ。それと、黒板を見たときから気になっていたメニューがありました。その名もしらが。親分に尋ねてもわからず、ん~なんだろうと、勝手に想像したのが「白髪ねぎ」。白髪ねぎの和え物みたいなものかなぁ、結構おなかも膨れてきたし、白髪ねぎでさっぱりっていいなぁとこれもお願いしてみます。



桜色咲いて  まずやってきたのは牛タタキ。深い紅色の牛肉に玉ねぎが添えられて、さっぱりといただけます。
お皿の上にきれいに並んだしめさんまも、お酢よりも塩の効いた、お酒の進むしめ具合。それだけで食べておいしいのももちろんですが、お酒と合わせた時に真価を発揮するのもあての要件ですね。これまたいいあてだぁ。


しめさんま  それに、まぐろの頬肉なんて、ほろほろした身肉に旨味のジュースがたっぷりで、価格はなんと
280円。あの一平のほっぺフライを凌駕する価格なんて、さすがマグロ王国清水ですね。んー、もう原一平くんです。




 おっと、そろそろ東海道線の最終も近づいてきましたね。お会計をお願いします。1時間以上滞在して、結構食べて飲んだのにお支払いは一人千円ちょっと。ん~、ご馳走様でした。

 お会計を済ませて、ふと振り向けば暖簾の向こうに地元の方々の笑顔があふれる店の中。本当にゆったりした空気の中で、肩の力の抜ける酒場。あまり新顔が行くのも気が引けますが、でもこの雰囲気好きだなぁ。親分は早くもお彼岸の里帰りの時に寄ろうかな…なんてつぶやいていますが、僕も今度近くに来たら、もう少し日の高いうち、他のお客さんが少ない時間帯にお邪魔しようかな…そんな思いを抱きながら東海道線に乗り込みました。
そして帰りはお約束  三島で乗り換えたあとは、当然居酒屋快速アクティになるわけで…どれだけ飲むのでしょう、僕達
()。あれだけ飲んでも、小刻みに揺れる電車内で味わう国香がまた旨いんだ。朝から晩まで、実に楽しい一日でした。企画&ご案内いただいた親分、ご同行いただいたご夫妻、ありがとうございました。また、旅しましょうね…そんな誓いをしたのは、深夜のぼんそわでした()。実に旅っていいものです…また、出かけましょう!


岩科酒場 16:00頃~22:00頃 日曜定休




本当、ごちそうさまでした。


しらが  あとは白髪ねぎをまつばかり、最後にさっぱりと締めて帰りましょう。
そして次にしらがです~と運ばれてきたのは…ん、太刀魚?しかも三本?そう、後日調べたのですが、どうも太刀魚の小さいものを「しらが」というようなのです。小ぶりとはいえ、先ほどの2/3はありそうな大きさのものが三本ですから、ボリューム的には太刀魚塩焼き以上。んー、食べごたえあるなぁ。でも酔いも入って、すいすいこれが入るから怖いもの(^^;