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Tags:お別れ、冬
オオシマユウコ。
なんの変哲もない、とてもとてもありふれた名前。
おそらく同じ名前の女性は、何百人といるだろう。
しかしながら。
今、この瞬間発せられたこの音が名指すのは、たった1人しかいない。
僕は彼女について何かを語るだけの準備ができているのだろうか?
そんな大仰なこと考えないでさあ、「泣きながら微笑んで」についてさくさくっと書いちゃおうよ。ねねね。
そんな風に思わないでもないのだが、じゃあ彼女について語らずにこの曲の話ができるのか?
前田を語らずに「渚のCHERRY」の話はできる。
高橋を語らずに「Bird」を話すこともたやすい。
平嶋を語らずに「星の温度」は…。どうでしょうこれ。やっぱなっちゃんについてはちょっと一言二言しゃべりたいよね。
うん。わかってる。
大島優子を語らずに「泣きながら微笑んで」について話すことはできないんだよ。
そういうもんなんだよ。
ならばしょうがない、たぶん手に負えないんだろうけど、今の僕に見えていることだけちょっとだけ話します。
「泣きながら微笑んで」。
K3最初のユニット曲。
ん? これを「ユニット」と呼んでいいのかな?
いや、これこそ語義通りのunit。すなわち「1」。
AKBの公演で最初に披露された、ひとりぼっち、孤独なパフォーマンス。
A2、前田がセンターを勤める「渚のCHERRY」も、限りなくソロに近い構成を意図していた。「前田敦子とCHERRY GIRLS」みたいな。でもねえ、そうは
何よりステージに立つ前田はひとりぼっちではなかった。
「Bird」も同様。高橋の後ろには信頼すべき2羽の鳥が彼女を支えていた。
というわけでAKB最初の、ホントのソロが与えられたのは、秋元がこよなく愛する前田でも、歌手志望の高橋ではなく、女優志望を公言するどちらかといえば悪声の大島優子だった。
もちろん当時すでに大島優子はTeam Kのエースであったことは間違いない。前公演では「禁じられた2人」という難しい世界観の楽曲を見事に演じ切った。
今から振り返れば驚くことは何もないのだが。でもなんで大島優子が、という声はあったろう。
秋元康にしてみれば、この曲は「優子へのプレゼント」だったのだそうだ。
全くこの御仁は、どこまで無邪気で、どこまで腹黒なんだろう。
秋元の意に反して、または秋元の目論見通り、大島優子はこの歌を前に悩み苦しんだという。K3じゃこの歌の時に居眠りする客もいたんだとか。
そんな大島優子に、秋元は「女優ならば演じればいい」とアドバイスしたという。一曲の歌、ではなく一幕の芝居として。
「泣きながら微笑んで」。
一読そんなに難しい歌詞ではない。冬のお別れ。だがそこに一幕の芝居を見るために僕はどんな物語を読み取ったらいいのだろう。
悲しく切ない別れであることは間違いない。でもそれは傷つき傷つけあった末の苦い別れではない。
それは僕には彼または彼女が前に進むための別れであるように思える。
「さようなら」と手を出したのは彼女。差し出したサヨナラを/掌で包んでくれた
やさしさが脈を打って/暖かくなる
そう、彼女は自分が前に進むために、彼と別れなければならなかった。彼が悪いわけではない。ただ、彼女の夢を実現するために必要なお別れ。
妄想劇場にしばしお付き合いください。