シンデレラは騙されない2 | Commentarii de AKB Ameba版

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 「転石」が終わった後、わざわざ着替えてこの曲。タイトルロールは「シンデレラ」なのにフラメンコ調。

 DVDで見て最初に感じたのは「これってシングルカット用?」という感想でした。
 ふつうだった「転石」で盛り上がってアンコールお終いでいいじゃんね?

 それをわざわざ着替えて、曲調もフラメンコ風ですごく特徴があって、いわゆる「フック」のある売れ線でしょ。歌ってるのは6人の「選抜」。いわば「シンデレラシックス」。

 ちょうどA2のアンコールが「AKB48」で終わらずに、選抜の7人わざわざが制服に着替えて「スカート、ひらり」を歌うのに似てる。「これでアンコール曲はお終いです。最後に発売中のシングル曲『スカひら』聞いて下さい」みたいな構造。

 K2「青春ガールズ」の開幕が2006年7月8日。その約1ヶ月前の6月7日、2枚目のシングル、「スカひら」がAKSレーベルから発売された。「スカひら」はAKB名義ではあるものの、実質「Aチーム」のシングルであった。

 もともとの構想であった1軍2軍体制ではなく、競い合う同等のチームとしてオリジナルのセットリストも与えられたTeam Kが、独自のシングル曲を期待するのは、当時の状況としては当然のことだったんじゃないかな。
 「AKB3枚目のシングルはTeam Kのオリジナルを!」という機運があったんじゃないかしら。
 特にTeam Kの熱烈なるファン、いわゆる「Kリーガー」にはその期待が強かったのでは。

 実際、2ちゃんねるの地下アイドル板に「AKBチームKの初シングル曲を予想するスレ」が立った。

1 : ファンクラブ会員番号774 : 2006/08/06(日) 03:42:00
 やっぱりシンデレラかな

 作曲は井上ヨシマサ。同じK2の「Virgin love」ではじめてAKBの楽曲を手がけた。
 
 井上は、A1、A2には間に合わなかったものの、K2以降、秋元康のの「アツ過ぎる要求(別冊カドカワ総力特集秋元康)」に応えて数多くの楽曲を公演に提供するようになる。

 このように考えると、秋元は井上の曲をシングルに採用する可能性を考えて、K2の最後に投入したのじゃないだろうか。瀬踏みですよね。ヲタの反応を見ながらの選択肢として。

 同じような立場の曲が、まだ取り上げてはいないけれどA3「誰かのために」公演にもあった。
 A3アンコールの最後の最後、いかにもアンコール用の「メドレー」が終わった後に、やはり衣装を着替えて歌う「涙売りの少女」。
 作曲はもちろん井上。この曲のフックは「少女売春」というテーマと、ラップ。イカネバップ。

 こちらも将来のシングルカットの含みを込めた編制だったように思える。
 
 でもまあ、みんな知ってる通り、結局のところ「シンデレラ」はシングルカットされることはなかった。同時に「Kオリジナルのシングル曲」というKリーガーの願望も泡と消えた。

 AKB3枚めのシングルは、ご存じ「会いたかった」となった。作曲は井上ではなく、BOUNCE BACK名義の河出智希。A2の公演タイトルであり、カップリングもやはりA2の「だけど…」。

 その代わりと言うべきか、このシングルではじめてTeam Kのメンバーも選抜された。Aが11人に対してKは9人。数は少ないが、当時のAが20人体制だったのを考えると選抜された割合はKの方がわずかに大きいんだよね(55% vs 56%)。
 
 PVの主人公は前田だったけれど、副主人公級の扱いで高橋とならんで大島(優)が重要な役を演じていた。「Kリーガーさんこれでカンベンして」ってことかな。

 以下余談ながら。
 「会いたかった」のPVは全員によるダンスシーン+ひとりづつ歌うシーン+カットインするドラマシーンで構成されているのだが、このドラマシーンは、主人公の前田が一人で映っているのは別として、その他のシーンでは必ずTeam AのメンバーとTeam Kのメンバーが一緒に登場するようになっている。
 冒頭前田をガンバレ、と励ますのは中西、峯岸+小野(AAK)。
 サイドストーリーの副主人公は高橋+大島(優)(AK)。
 高橋大島(優)が鞄を投げ出したあたりでごろごろしているのは、板野、小嶋+松原(AAK)。
 カフェ・ハーフムーンでだべってるのは、篠田+小林、野呂(AKK)。
 海辺を自転車で帰るのは、戸島+梅田、秋元(オ)(AKK)。
 旧安房水産高校現館山総合高校水産校舎校門でしゃべってるのは、大島+宮澤(AK)。
 那古船形駅跨線橋で写真を撮っているのは大江、成田+河西(AAK)。

 ね。AまたはKのメンバーだけで固まっているというシーンは一つもないでしょ。

 これはどういうことを意味しているかというと、このPVには裏のテーマとして「AとKの融和」というものがあったんじゃないかなあ、と思ったりもする。メンバー同士の融和と同時に両チームの熱烈なファンたちの融和。
 
 うわ、また「会いたかった」で長話をしてしまった。
 
 まあ、とにかくだ、話を戻すと、この「シンデレラ」は幻のTeam Kオリジナルシングル曲ではなかったか、と。

 またしてもその代わり、と言うべきか、同じK2の井上tune「Virgin love」は「会いたかった」の次のシングル曲、「制服が邪魔をする」(井上ヨシマサによるA3「誰かのために」公演の曲)のカップリング曲となった。カップリング曲とは言え、公演に用いられたTeam Kオリジナルの曲がシングルに選ばれたのはこれが最初で、おそらく当分は最後である(秋元康が少女たちに「さあ秋葉原へ帰ろう」と告げる日が来たら、最後ではなくなるのかもしれない)。

 その後「シンデレラ」と似た境遇の「涙売りの少女」は、「制服」の次のシングル曲、「軽蔑していた愛情」のカップリング曲となる。「自殺」と「売春」の組み合わせ。今のAKBからは考えられないよねえ。いや、「考えられない」ことは即ち「やっちゃうかもしれない」ことなのでうかつなことは言えないが。