優斗は、杏子と一緒に帰る駅までの時間だけでは段々物足らなくなってきた。杏子もそれは同じで、帰宅後も電話で話すようになった。
今日もまだ別れて時間が経っていないのに、明日になればまた逢えるというのに、また互いの声が聴きたくなるのである。
電話をかけてくるのは専ら杏子の方であった。予め時間を決めて、家族が電話に出る前に優斗が受話器を取るのである。
一旦、電話があると長電話になることも多い。RCサクセションの「2時間35分」のようにはならないが親から長いと窘められることもしばしばであった。
優斗の家は、電話は玄関に置かれていた。玄関まで電話に出るのは不便だから居間にでも置けばいいのにとそれまでは思っていたが、今はむしろ家族に聴かれなくてよかった。
ただ、この時期は玄関が寒い。今日は、約束の時間になっても杏子から電話がかかってこない。寒くなってきたので上着を取りに行くと、そのすきにかかってきて母親に先に出られてしまった。
「北村さんだって」
優斗はバツの悪い顔をしながら受話器を受け取ると、早く行けと母親を手で追い払った。
母親が盗み聞きをしているような気がして、その日は落ち着いて話ができず、いつもより早めに電話を切った。
「北村って、誰?」
電話を切ると案の定母親が待ち構えていた。
「クラスの子だよ」
優斗は、さりげなく答える。
「彼女? 交際してるの?」
「いや、ただの友だちだよ」
「いつも長電話してるのは、その子ね」
「まあ、だいたいそうだけど・・」
「男女交際なんて、まだ早いんじゃないの?」
「そんなんじゃないよ」
そこへ父親まで口を挟んできた。
「これから受験だろ?女にうつつを抜かしてる暇なんかないぞ」
「わかってるよ」
そういうと優斗は自分の部屋のドアをバタンと勢いよく閉めた。
両親に窘められて、気分が悪い。いつもは杏子との会話の余韻に浸っている頃なのである。別に悪いことはしているわけではないのになんだか後ろめたい気分になった。
今度は何か別な方法を考えないと・・・
優斗は、風呂に入りながら、歯を磨きながら、そして布団に入ってからもしばらく考えていたが結局いい案が浮かばなかった。
ффффф ффффф ффффф
昨日は人間ドックを受けてきた。私は元々血管が出にくく、経験の浅い看護師には嫌がられることがある。それでも、上手な人は上手で、一発ですっと針を入れることができてしかも痛くないのであるが、今日の看護師はそんな若手には見えなかったが下手だった。
ここぞと思ったところに針を入れたが血液が出てこない。あれ?といいながら、針を射したまま針を左右前後に動かして血管を探し始めたのである。痛みはあまりなかったけれど見ていたら気持ち悪くなってきた。挙句の果て、一旦断念するともう一方の手に指された。今度は血管に上手いこと命中したが細い針で逆に痛かった。まいった、まいった。
さて、本日取り上げるアルバムは、BOZ SCAGGSの『SLOW DANCER』(1974年)である。
ボズのスタジオ・アルバムとしては5作目あたりの作品である。
もともとブルースやR&Bといった渋い音楽をやっていたボズであるが、このアルバムは、次作『SILK DEGREES』に繋がるブルーアイドソウル、AORへと舵を切った内容である。
モータウンのジョニー・ブリストルをプロデューサーに迎えるあたりからもそれがわかる。
いずれにしろ、ソウルでもR&Bでもファンクでも、そしてバラードを歌わせてもボズそのもの。独特の声質と歌唱は聴く者を酔わせてくれるのである。
いいね、ボズ・スキャッグス。
Slow Dancer (2023 Remaster) - YouTube
Angel Lady (Come Just In Time) - 2023 Remaster - YouTube
