高校に入ってからすっかり劣等生になってしまった優斗は、2年に進級するのもやっとのことであった。そんな優斗が1学期の英語のグラマーの中間テストでなんと100点満点をとってしまったのである。
正に奇跡だと思ったのは優斗自身であった。しかも、100点をとったのはクラスで優斗ひとりであったから尚更だ。
教師が発表すると、おお!と歓声が上がる。優斗の成績が悪かったのを知っている同じクラスだった生徒は信じられないという表情をし、知らない生徒は尊敬のまなざしで優斗を見るのであった。
「へえ、優斗って、頭いいんだ?」
沼田浩美が意外そうな、羨ましそうな半笑の複雑な表情で絡んできた。他の生徒もおだてるので、なんだかフワフワした気分になる。
たまたま、グラマーだけよかっただけで、他の教科は自慢できる成績ではない。それにしても、あんな簡単な問題で100点が自分一人しかいないなんて信じられなかった。
自分ができたから簡単に思えただけで、他人にはそうでもなかったのかな、まあグラマーだしな、良い点取ったからってろくに役に立ちそうもないよな、などと優斗は些か自嘲気味だ。
ただ、困ったのは、グラマーの教師の優斗を見る目が変わり、授業中やたらと指すようになったことである。
何かの問いかけに誰も答えずシーンとしていると必ず優斗を指すのである。
「斎木、わかるか?」
今日も指してきた。優斗は油断もできずに毎回予習せざるを得なくなってしまったのである。
「○○です」
そうやって、予習の甲斐あってか正解すると、またもやおおと皆で囃し立てるのである。
迷惑だなあ、こんなことなら100点取るんじゃなかった。毎回、これじゃ、たまったもんじゃない。
そんな状態に耐え切れず、いつしか、優斗は予習もしなくなったのである。
「斎木、わかるか?」
またもや教師が指してきた。
「よくわかりません」
仕方なく、そう言って難を逃れたかと安心すると
「じゃ、わかるところだけでいいから」としつこい。
「あの・・、まったくわかりません」と答えると、どっと笑いが出た。
「は?斎木にもわかないのか」と呆れた顔をされてしまう。
(そりゃ、ないだろ。俺にすべてわかるわけないでしょ。わかるくらいなら授業受ける必要ないのだから!)
優斗はなかば腹が立ってきた。
そして、期末テストの結果は67点だった。
教師はやっと優斗がそれほどでもないことに気がついたようで、それからほとんど指さなくなった。
それにしても、期末テストを返すときには「斎木、手抜いたな」と嫌味っぽく言われ、苦笑いしながら(いやいや、元々あんたのかいかぶりだよ)心の中でそっとつぶやいた。
話し合っても分かり合えないことはある。それでも、わかってほしいんだよなと思う今日この頃である。
さて、本日取り上げるアルバムは、JOHN LITTLEJOHNの『SWEET LITTLE ANGEL』(1978年)である。
リトルジョンは、スライド・ギターの名手と言われたブルース・マン
なかなかレコーディングの機会に恵まれず、遅いデヴューだったそうな。
このアルバムは、フランスでレコーディングされたもので何作目にあたるかは不明。ブルースのスタンダード的なナンバーを中心に自作の曲も2曲ほど収録しているが、レコードは7曲で、CDには2曲未発表曲が追加され9曲収められている。
なにせ、今簡単に入手できるのはこれくらいで他のアルバムは入手が困難になっている。
ちなみに、表題曲はB.B.KINGのお馴染みのナンバー、ほかにもELMORE JAMESやWILLIE DIXONの曲を演奏していて、オリジナルとはまた違った味があって、スライド・ギターもジワジワ効いてくる。
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