「なに? カツアゲされたんだって?」
高山は、沼田や吉本、杉沢らに囲まれていた。
「あ、もうひとり来たよ」
優斗が教室に入ると杉沢が面白そうに優斗を手招きする。もう、知ってるのか。優斗は、憮然とした面持ちで輪の中に入って行った。
「どうしたんだよ」
沼田が根掘り葉掘り訊いてくる。高山は、昨日の一部始終を話し出した。
「だっせいな、そんなやつらぶっ飛ばしてやればいいのに」
ろくに最後まで話を聞かずに杉沢が無責任なことを言う。
「むちゃなこというなよ。相手は4人もいたし、自転車のやつもいたから逃げられねえよ、なあ優斗!」
高山が優斗に振る。
優斗は、黙ったまま苦笑するしかなかった。
昨日のことである。珍しく、優斗は高山と二人で駅に向かっていた。
すると、向こうから如何にもヤンキー風な4人組が歩いてきた。一人は自転車に乗っていて、前に出たりUターンしたり、時にはジグザグに走ったりしながら歩いてくる連中の速度に合わせている。
「ちょっと、やばそうだな」
このままだと鉢合わせになるので優斗と高山は左側へ移動した。すると、4人も移動してきて、道を塞ごうとしてきた。優斗と高山は仕方なく4人の間をすり抜けようとしたが自転車の車輪で進行を妨げられたのである。
「よお、東野高校の生徒じゃん?」
茶髪でリーゼントにした奴が声をかけてきた。自分たちとさほど変わらぬ年齢に見えた。優斗たちは無言でいた。
「悪いけど100円貸してくんねえかな?」
もう一人の派手なTシャツを着た奴が訊いてきた。
「今、ちょっと持ち合わせがないんで・・」すかさず、高山が答える。
「そっちの奴は?」
優斗も「持ってない」と答えた。そもそも、普段からお金は自販機で飲物を買うくらいの小銭しか持ってこないし、今日はファンタ・グレープを買うのに使ってしまっていた。
「じゃ、ちょっとこっちに来てくれないかな」
二人は、路地に連れ込まれた。
「ほんとに持ってねえのかよ?身体検査したっていいんだぜ」
それまでとは違い、少し凄んできた。
優斗は、ほんとに持っていなかったので自信を持って財布を広げて見せた。
「ちっ!ほんとに持ってねえや!」
リーダー格の奴が顎を高山の方に振ると、二人がかりで高山の身体を探り始めた。すると、ズボンのポケットから千円札が1枚でてきたのである。
「ほ~ら、持ってんじゃねえか」
「あ、それは困るんです。それ、俺の金じゃなくて・・、今日これから返さなきゃならないんで・・・」
高山はとっさに訳の分からない言い訳を言いだす。
「何言ってんだかわからねえな」「じゃあ、両替して来いよ」
そう言いながら、ちょっと先の駄菓子屋を指さした。
「じゃあ、ちょっと自転車貸してもらっていいですか?」
「はあ?しょうがねえなあ、貸してやれ」
自転車に乗っていたのは、さほどヤンキーっぽく見えなかった。こういうやつは、普段、仲間といないと何もできないんだろうな。言われた通り、自転車から降りると高山に手渡した。
「そのままトンヅラするんじゃねえぞ、こいつが人質だからな」
俺は、人質か。
相手は自転車が無くなったから、すきを狙って逃げても良かったのだが、走るのに自信があるわけでもないし、万が一高山が行き違いに戻ってきてしまったら高山一人にさせてしまう。優斗は言われるままに待つことにした。
それにしても100円かよ、しかも貸してくれなんて、返すつもりは当然ないんだろうけどそれくらいなら罪悪感がないということなのか、あるいは通報されないだろうと思っているのだろうか、両替して来いなんてダサい連中だな、高山も高山で自転車を貸してくれなんてよく言えたな、高山らしいといえばらしいけど、などと考えていたらおかしくなってきた。優斗は笑いだしそうになったがここで笑うと面倒臭くなりそうなので我慢した。
そうこうしているうちに高山が戻ってくると、200円だけ取り上げ、「100円は自転車の貸し賃だからな」と言い捨てて、学校の方角へまた4人で歩いて行ったのだった。
優斗と高山は駅に着くと駅前の交番に報告して、これから返ってくる生徒が同じ被害にあわないように学校にも連絡を取ってもらった。警察官は、すぐにバイクで向かったが捕まったかどうかは定かではない。
高山の自虐的な話の顛末を聞いた沼田と吉本は大笑いだった。
「普通、カツアゲするやつの自転車借りてまで両替しにいくか?」そう言って、また笑いだす。いい笑いものになった感の優斗であったが、高山は話が受けて満更でもなさそうだった。
それにしてもこんなに早くなぜ吉本たちが知っていたのだろう。
優斗が思いをめぐらすと、自分たちが路地に引き込まれて何やらやられているときにこっちを見ていた女子生徒がいたことを思い出した。そうだ、同じクラスの佐藤しおりだ。あいつが吉本にチクったんだ。それしかない。
あいつ、見ていたならなぜ交番に連絡してくれなかったんだ?連絡していたら、せいぜい高山が両替に行ってる頃には警察が駆けつけてくれたのではないか。
そう考えると優斗はあまり愉快ではなかったが、自分には実害がなかったし、吉本の手前もあるから今回は不問に付すことにしたのだった。
фффффффффф
先日の強風で一気に落葉した我が家の庭樹だが、まだ踏ん張ってしがみついている葉っぱもちらほら。これが全部落ちたら本格的に庭の掃除と手入れを行うのが恒例。すると、間もなく除夜の鐘を聞く夜になる。一年が年々早く感じる今日この頃である。
さて、本日取り上げるアルバムは、BUSTER BENTONの『BLUES AT THE TOP』(1985年)である。
ビリー・ブランチのブルース・ハープから始まる小気味よい(と言っていいかはわからないが)ナンバー「MY LADY」、「いいね」「正解!」と思っていたら既に持っているアルバムだった(笑)。
ショップでBUSTERの廉価版を見つけて、ジャケットに見覚えがなかったので飛びついてしまったのが失敗だった。また、やってしまったか。やはり、アルバムタイトルを憶えていないとだめだな。
彼の傑作『Spyder In My Stew』はさすがに覚えているので、こんなヘマな真似はしないと思うのだが。
ま、とにかく、BUSTERの浪花節まがいの歌唱と渋い声は最高。ビリー・ブランチの絡みつくようなブルース・ハープもいいから、おじさんはご機嫌さ。
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