10月に入ると毎年運動会が開催される。優斗の学校ではクラス対抗で競い合うため、それぞれのクラスは予め競技ごとに選手を選抜しておかなければならない。
競技と言っても、100メートル走やリレーくらいがメーンで、その他はゲームのようなものばかりである。メーン競技にもなると、よほど脚に自信がある者でもなければ誰も出たがらない。真剣になることが必ずしもカッコいいとは思われないからでもある。
選抜会では、躊躇していると残った者がメーン競技に出場する羽目になるので、早めに他の競技に立候補しておくのが得策であった。
優斗と橋口は予め相談しておいて、真っ先に二人三脚リレーに立候補した。1年の時にも二人で組んで息もあっていたのである。
当日は、秋晴れの絶好の運動会日和であった。
グラウンドでは、コースの周りを囲むように各クラスが陣取っていて、自作の応援旗がはためいている。既にあちこちで歓声が上がっている。遊び半分の気持ちでいても、いざ競技が始まるといつの間にか真剣になってしまうのである。誰も負けたくないのだ。
まもなく、二人三脚リレーが始まる。スタート前から、出場選手たちは掛け声を合わせながら練習に余念がない。
優斗たちは、スターターを申し出た。優斗が左側で橋口が右側である。右手を橋口の肩に回すと橋口は左手で優斗の肩を抱く。バトンは橋口が右手で持った。1年の時とまったく同じだ。
スタートのピストルの音が鳴った。一斉に選手たちはスタートを切ったが息が合わずに早々と転ぶ者もいる。優斗と橋口は、あらかじめ打ち合わせした通り、一旦、間を空けて、掛け声を合わせてからスタートを切った。一瞬、出遅れたものの徐々にスピードを上げるとあっという間にトップに躍り出た。すると、すぐに二番手にバトンを渡す。二番手もそのままトップを走る。
優斗たちは、スターターの責任を果たし、ほっとしながら3番手を応援する。3番手も順調にトップをキープしたままアンカーにバトンを渡した。よし、そのままゴールだと思った瞬間、アンカーの二人がこけたのである。すぐに立ち上がったが、慌てていてバタついている間に他のチームに抜かれていき、結局、最下位に転落してしまったのであった。
これには、優斗ら出場選手だけではなく、自席で応援していたクラスの連中も落胆のため息を漏らした。ため息は一塊になって、優斗たちに覆い被さってきた。
「ちぇ、何やってんだよ」杉沢が自陣に戻ってきた選手に向かっていちゃもんをつける。
「惜しかったなあ」沼田も残念がる。
「まあ、しょうがねえよ」吉本が慰める。
反応は三者三様であるが、優斗は自分の責任は果たせたのでさほど悔やんではいない。できることなら優勝したかったが仕方ないとすぐに諦めはついた。
お昼休憩に入ると、いくつかの運動部によるイベントが行われた。
野球部員による仮装競争に来賓や教職員による借り物競争などで会場も和やかな雰囲気が漂った。最も注目を浴びたのは、女子体操部による演技であった。
「優斗、ちょと!」
突然、優斗は沼田に手招きをされた。
「河田の写真撮ってよ」
「え?やだよ」
優斗は、父親からカメラを借りてきていた。1年の野外授業の際も持ってきて級友たちの写真を撮ってあげたことがあった。今回は、写真部の青木からズーム・レンズも借りていたのである。
「そんなところ撮ってたらやばいよ」
女子体操部は、レオタード姿である。沼田は以前から河田隆子が好きだと公言していた。
だからといって、優斗がカメラを構えていたら変に誤解されかねない。
「なあ、頼むよ。後生だから、な」
優斗は、懇願する沼田が段々可愛く思え、しぶしぶ了承したのだった。
二人は、こっそりと忍び足で来賓テントの後方にある植え込みに潜りこんだ。その時点で既に怪しい。沼田にあっては、身体が大きいためすっかりバレバレであった。
優斗は、開き直ってカメラを構えると、来賓の背中越しに河田をとらえて何度かシャッターを切った。レンズを借りてきてよかったと思った。隣では、沼田が興奮を抑えきれずにジタバタしている。
「静かにしろよ、目立つじゃん!」
「だって・・・隆子・・・」
撮るだけ撮ると、二人は足早に自席に戻った。
「楽しみだなあ」
沼田はいつまでも興奮していたが、優斗の“仕事”はまだ終わっていない。
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さて、本日取り上げるアルバムは、LYNYRD SKYNYRD の『God & Guns』(2009年)である。
レーナード・スキナードは、自分にとってはオールマン・ブラザーズ・バンドとともにサザン・ロックの双璧をなすバンドである。
バンドの中心メンバーであるボーカルのロニー・バン・ザントらを飛行機事故で亡くした後、弟のジョニー・バン・ザントを迎えて再結成してから8作目にあたるアルバムである。
メンバーを脱退、病気、事故等で亡くし、随時メンバーを入れ替えながら活動を続けてきたものの、この頃には結成当時のオリジナル・メンバーはギタリストのゲイリー・ロッシントンしか残っていない。そのゲイリーさえ、一昨年亡くなってしまい、オリジナル・メンバーは一人もいなくなってしまったが、活動はまだ続いているようだ。
このアルバム、ひところの粘っこいギター・サウンドは薄れてきた感は否めないが、ヘビーなサウンドは健在なのが嬉しい。
再結成後の活動の方がはるかに長くなっているので、結成時と比較するのも最早ナンセンスなのかもしれない。
※アルバム1曲目の重厚なサウンド
Lynyrd Skynyrd - Still Unbroken [OFFICIAL VIDEO] - YouTube
※スワンピーでヘビーなアルバム・タイトル曲
