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雑文と音楽

思いつきの散文や好きな音楽を

 

 

 大林加奈子は、星川市に住んでいた。両親は、駅前商店街の一角で八百屋を営んでいた。加奈子には歳の離れた兄がいて、地元の商業高校を卒業したあと家を手伝っている。

 両親は加奈子には好きなことをさせたいと普通高校に通わせ、加奈子が望むなら大学へも進学させてやりたいと考えていた。兄も僻んだり嫉妬したりすることなく、加奈子を可愛がった。そのせいか、加奈子は素直で明るく活発な娘に育った。

 加奈子は高校に入学するとチア部に入部した。隣町に住む優斗とは一年の時から一緒のクラスであったが、優斗の第一印象は「田舎くさい男」だった。中学校卒業まで坊主頭だったのか、伸び始めた中途半端な髪が余計貧相に見えたのだ。

 同じクラスになった北村杏子とはすぐに仲良くなった。優斗がフォーク・ソング同好会に入り、5月の定期発表会に出演するということを知ると、同じクラスのよしみで見てみようと杏子を誘ってみた。ギターを抱えて歌う姿は、優斗の印象を変えた。

 優斗が、その後応援部に入部したことを知ったときは正直驚いた。ギターの弾き語りはするものの大人しそうに見えていた優斗が応援団に入るとは俄かに信じられなかった。さらに優斗の印象が変わったというか、どんな男なのかと興味が湧いてきたのである。

 

 夏の甲子園大会の県予選で加奈子は初めて野球部の応援をした。いわば、チアのデヴューでもあった。夏の炎天下の中、汗をびっしょりとかきながら懸命に踊ったり声援したりした。

 隣のスタンドでは応援団も必死で応援している。優斗の姿は確認できないけれど、声は聞きとれた。優斗と同じ目的で大きな声を出し、汗を流していることに、いつの間にか一体感を覚え、高揚していることを自覚すると加奈子は戸惑った。

 

 それからというもの、加奈子はもう一度味、優斗との一体感を感じてみたいと思うようになっていた。文化祭のトリを飾った応援部の演技を見たときにもあのときの感動が甦ってきて、うっとりと優斗を見つめていた。そのため、優斗が応援団を辞めたと知ったときは悲しかった。突然、チア部にいる意味を失ってしまった気がしたのだ。迷った挙句、結局、1年の終わりには退部していた。

 

 優斗の住む町には、国鉄の駅がなく、通学には自転車で15分ほどかけて星川駅まで来ていることは知っていた。

 加奈子は優斗と同じ駅を利用しているので、偶然、一緒にならないかなと思うことがあった。たまに駅で見かけることはあったが駆け寄っていく勇気がない。学校では気軽に話せるのに、二人きりになることを想像すると二の足を踏んでしまうのである。

 

 2年に進級する際にはクラス替えが行われる。仲良しの杏子と一緒のクラスになってよかったがそれ以上に優斗と同じになってほんとに嬉しかった。

 加奈子は、優斗に出会えたこの高校を選んで良かったと思っていたが、2年の秋頃になると、何か物足りなさを感じるようになっていた。秋という季節がそういう気持ちにさせるのではなく、理由は自分でもわかっていた。

 あこがれをあこがれのままで終わらせたくない。けれど、自分ではどうすることもできない。思い切って告白しようかとも考えたが、もしもフラれたら傷つくし、同じクラスにいられなくなる。失恋するのはやっぱり怖い。いっそ、何もアクションを起こさず、このまま友人として楽しく3年間を終わったほうがいいのかなとも考える。そんなことを思いながらずっとモヤモヤしていた。

 杏子とは、たまには恋バナもする。ただ、あこがれの恋愛やクラスの男子の話くらいで、具体的な話はしたことがなかった。杏子は好きな人が誰かいるのだろうか。杏子の気持も訊きたくなってきた。

 

 

 

 

 

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 年が明けて8日ともなれば、新年のあいさつはさすがに間が抜けてることにもなりかねないので省略させていただき、とりあえず本年もよろしくお付き合いくださいませ。

 

 さて、新年最初に取り上げるアルバムは、ROBERT PALMER の『Sneakin' Sally Through the Alley』(1974年)であります。

 



 ロバート・パーマーは、名前は知っていたもののリアルタイムでは聴いていません。アルバム『Riptide』は売れたようなので、聴いたことがあるとすればそれで、当時は響かなかったのかも知れません。今聴けばいいなと思えますが・・。

 

 このアルバムは、彼のデヴュー・ソロ・アルバムですが、聴いてみようと思ったきっかけは、どなたかの紹介でリトル・フィートがバックを務めているとのことだったからです。実際はローウェル・ジョージだけでしたが、『Riptide』と随分印象が異なり、一発で気に入ってしまいました。(また好きなアーティストが増えてしまった)。

 

 収録曲は、コーネル・デュプリー、ゴードン・エドワーズ、リチャード・ティー、バーナード・パーディらニューヨークの凄腕ミュージシャンとレコーディングしたものと、ローウェル・ジョージやミーターズにアラン・トゥーサンを始めとするニューオリンズのミュージシャンらとレコーディングしたものが収められています。

 意識しなければその違いは感じられず(自分が鈍感か)、アルバム・トータルとしての違和感もなく、むしろ一貫したロバートのソウルフルなボーカルが息づいている聴きごたえのある作品だなと思います。



Robert Palmer - Sneakin' Sally Through The Alley - YouTube




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