高校2年の秋には、修学旅行が予定されていた。中学校3年の時と同じように京都・奈良方面への2泊3日の行程である。
広島や四国へ行く高校もあり、私立高校においては九州や北海道、日本に返還されて間もない沖縄や海外にまで行く学校もあると知ると、なぜまた関西なんだよと嘆く連中もと少なくなかった。 公立校だから仕方ないかと思いつつも、仲間とまた外泊できるので優斗はそれなりに楽しみにしていた。
京都では、嵐山、天龍寺、金閣寺、銀閣寺、清水寺、龍安寺などベタな施設を2日かけて回る予定であった。
中学時代は大阪万博とかぶっていて、1日だけ万博見学にあてられていたので目先が変わってよかったが、3日間も寺ばかり見学していては飽きてくるのではないかと危惧していた。ところが、ちょうど紅葉の時期でもあり、真っ赤に染まったモミジと古都の古びた建造物とのコントラストが優斗には思いのほか美しいと思えた。
ただ、どこも同じように制服を着た中高生で行列ができていてうんざりする。自分たちもその仲間には違いないはずであるがそれは眼中にない。人間にありがちな身勝手な感情である。
1日目の行程が終ると京都の宿に着いた。修学旅行生を専門に受け入れている古びた旅館であった。増築に次ぐ増築で館内の配置が複雑であった。
10畳程の和室に10~12名ほどの生徒が押しこめられた。
早速、窓を開けてみると住宅の低い屋根が連なったその真ん中に「デラックス東寺」と記された場違いなネオン塔が見える。
「東寺って、すぐそばなんだ?」と、誰かが言う。
「ばか!あれはラブホだよ」と、別な誰かが言う。少し湿り気のあるかび臭い部屋が乾いた笑いで充満した。
京都に着いてから終始貸切バスで移動しているため、自分たちが今どのあたりにいるのかがわからない。それでも、そのことに頓着している生徒は誰もいなかった。
2日目、優斗ら一行は三千院へ向かった。すると、思いもかけず他校の列の中に中学校時代の同級生を見かけたのだ。美人で成績も優秀だったため、優斗にとっては高嶺の花で、卒業後は一度も逢ったことがない。
互いの存在にほぼ同時に気づくとあっと小さな声をあげてしまった。優斗が彼女を指さすと、彼女は周りに気づかれないように胸元で小さく手を振った。中学校時代はほとんど会話したことがないのに手を振ってくれた。それが優斗には意外に思えた。こんなところで同級生に偶然出会えたことが嬉しかったのだろうか。
優斗が懐かしさに浸っていると、周りの女子が誰?誰?と彼女に聴いている声が聞えた。
京都見学が終るとすぐに奈良へ移動し、二日目の夜を迎えた。奈良駅周辺の旅館だったが、ここも京都の旅館とあまり替り映えのしない宿だった。
その日の夜は、外出が許可されていた。ただし、門限は厳守、行動は4人グループでが条件になっていた。
優斗は、出発前に予め決められていたメンバー、橋口に吉本、それと沼田の4人で出かけた。
くれぐれも地元や他校の学生とトラブルを起こすなよと忠告されていた。ここでトラブルを起こすと後発組や来年の実施にも影響を及ぼす恐れがあるからである。
沼田は、相変わらずリーゼントヘアをしていて、肩で風を切るように歩くため優斗は少し不安であった。案の定、途中で学ランを着た数人に眼を付けられた。
それを相手にせず珍しくスルーすると、相手もそれ以上絡んでこなかったので優斗は胸をなでおろした。
「あいつら、最初からやる度胸なんかねえんだよ」と、沼田がいきがる。
「でも、絡んで来たらどうするんだよ」と橋口も不安顔している。
「そしたら、逃げるだけだよ」
そう言って、沼田が笑うと、吉本も橋口も笑う。優斗は、苦笑するだけだった。実際、喧嘩になったらやばいし、逃げると言っても走るのはあまり自信がなかったからだ。
そもそも、沼田だってあの体型で走れるわけがない。まったく、いい加減なことを言う。今に始まったことではないが、そんな楽観的な言動をする沼田が時には羨ましいと感じる優斗であった。
観光地だというのに意外に早く閉めてしまう店も少なくないが、繁華街らしき場所に立ち入ると派手なネオンや店の灯りが煌々としていた。
4人は、ゲームセンターやお土産屋をちょっと覗くとすぐに飽きてきた。
「つまんねえから戻ろうか」橋口が言い出した。
「その前に何か食っていかないか?」と沼田。
「さっき、夕飯喰ったばっかじゃない」
優斗が笑いながら言うと、沼田が腹に手を当てながら「このままじゃ、夜中、腹減って眠れねえよ」と笑う。
「じゃあ、何か喰ってこうぜ」と吉本がまとめる。
ちょうど、ここがいいやと吉本が指した店は甘味処と看板に書かれていた。
「え?俺、飯が食いてえな」
沼田が不満げに言うと、うどんもあるよと吉本が返す。
「うどんか?まあ、いいか」
吉本が先頭に暖簾をかきあげ引き戸を開けると「いらっしゃい」と優しげな高齢の女性の声がした。
「あれ?おまえらも来てたんだ?」
沼田が驚いた視線の先には佐藤しおりの姿があった。隣には、上田早苗が座っている。その反対側には、大林加奈子と北村杏子もいた。
「ここでいいか」
橋口は、ちらっと見ただけで大林らとは視線を合わせず、入口に一番近い席に座った。他の3人も同調して同じテーブルに陣取った。
あの日から、加奈子は橋口にも優斗にもどこかよそよそしい態度でいた。今も、自分たちが入ってきたのを確認するや否やそっぽを向いた様子が見て取れた。
「ははん、おまえら申し合わせていたんだろ?」
沼田が吉本を冷やかす。
「いや、偶然だよ」
吉本は、照れ笑いしながらまんざらでもない顔で否定する。
(いいなあ・・)
優斗は心の中でつぶやいていた。
そうこうしているうちに“先客”たちは席を立って、レジに向かって歩いてきた。
「どこか行ってきたの?」
先頭の佐藤が訊くと
「ろくなところがなかったよ」と、吉本が答える。
「じゃあね」と4人は先に店を出た。そのときも加奈子はこちらを見ようともせず足早に出て行ってしまったのである。
ффффф ффффф ффффф
世の中、一歩外へ出るとストレスだらけ。まるで自分たちしかいないような振る舞いの人間が多すぎる。ま、家にいてもストレスを感じるときもあるけどね(笑)
さて、本日取り上げるアルバムは、LESLIE WESTの『THE GREAT FATSBY』(1975年である。
レスリー・ウェストと言えば、元マウンテンの巨漢ギタリストだ。
あの「Mississippi Queen」は、何度聴いても飽きない。
今でもたまに聴きたくなるから自分のロック名曲100選に入るだろう。とは言っても100曲選んだことはないけどね。きっと、難しいだろうな。まあ、いい加減(笑)
このアルバムは、レスリーのソロとしては1作目になるのか2作目になるのかよくわからないが、マウンテンの頃のイメージとは少し異なる。
自作の曲もあるが、ミック・ジャガーとキース・リチャーズ作の「High Roller」やお馴染みの「Honkey Tonk Women」やフリーのアンディ・フレイザー作「Doctor Love」、その他「朝日のあたる家」などのカバーも面白い。
全体的には、ボーカルを前面に出した楽曲が多く、ギタープレイは控えめな感じかな。バック・ボーカルのDANA VALERYという女性がフィーチャーされていていい感じ。