この土日は、予てから計画していた義妹の還暦祝旅行だった。
高齢の義父母の健康状態やコロナ感染の動向、参加者の日程調整や宿の手配、行程の検討や昼食場所の選択、予約席の確保など、企画するとなるとやることも多く、旅行コンダクターの大変さがわかる。
結果、混雑を避けるねらいもあって、GW明けの土日と決定したが、生憎、私の子供夫婦が仕事がらみの用事で行くことができなかったため、彼らを代表して私と妻、そして主役の義妹夫婦、その子ども夫婦、義父母のメンバーで行くことになった。
当日は、予想どおり、高速道路も現地もさほど混雑もなく、早め早めの行動により、昼食もホテルの食事も混雑前に快適に済ますことができ、寄るスポットやイベントもストレスなく楽しむことができた。
また、時期的に新緑が鮮やかで、街道を覆う樹木の緑にも癒された。
ホテルの部屋、食事ももちろんのこと、両日の昼食も美味しく、寄った観光スポットも事前のリサーチが功を奏して皆に喜んでもらえたので、企画した身としてもほっとした。
ホテルの部屋からは、見事な新緑に囲まれた雑木林や遠くの雪をかぶった山並みも見えて、感動的でさえあった。
私と妻の還暦祝は、義妹たちが既に企画してやってくれたので、今回はその恩返しのつもりで企画したが、喜んでもらえ、無事に挙行できたことが何よりも嬉しかった。
帰宅後は、ぐったりして、早めの就寝。そして、爆睡(笑)
今朝は、目覚めると、雨模様だった。
実は、今日から友人のぶどう農家へ手伝いに行く約束をしていたが、疲れていたので雨で中止となり、内心、ほっとしていた。
さて、私にとって、疲れた身体を癒すには音楽がもってこいである。
特に、こんな雨の日はピアノ・ジャズが良く似合う。
取り出したのは、遅まきながら先日ゲットした山下幸子さんのアルバム「Good Luck and Good Bye」(2016年)
ユーミンの曲をアレンジしたピアノ・トリオが織りなすジャズが、疲れた身体をどこまでも癒してくれる。
※ジャケットのイラストもお洒落
メンバーは、
山下幸子(Piano)
石橋 哲(Bass)
林伸一郎(Drums)
澤本明男(Strings)
ご自分のピアノを使いたいということで、自宅に録音機材を運んでの録音となったとのことで、澤本氏の尽力も大きかったようだ。
山下さんは、幼少期にピアノに触れ、高校時代にはエレクトーンを始める。
その後ジャズの理論と技術を習得し、都内のホテルを中心にライブ活動を始める。
やがて、渡米し、シカゴやニューオリンズの現地ミュージシャンとのセッションで腕を磨いて帰国、その後は独自のスタイルでジャズを展開。
ソロ・ピアノでのブルースも得意としているとのことである。
また、作曲やアレンジも得意とし、このアルバムも全曲彼女のアレンジが光っている。
高校時代に荒井由実の音楽に出逢い、衝撃を受けたという彼女は、ユーミンに対してはかなりの思い入れがあるようだ。
そんな彼女が、数あるユーミンの名曲から厳選した曲が8曲(1曲はピアノソロ)。
悩みながらも想い出の多い曲を選んだとのことであるが、私もユーミンが好きなので(過去にブログに取り上げている)選曲するとしたら相当迷うだろう。
ユーミンの曲がどんな感じになるのだろうと興味津々で聴いてみたが、1曲目の「中央フリーウェイ」から2曲目の「あの日に帰りたい」と、あの名曲たちが小気味よくスイングしたジャズに変身していて実に楽しい。
3曲目の「海を見ていた午後」は、あの「ソーダ水の中を・・」の情景描写が失恋の思いを表現していて、初めて聴いたときに「天才かよ!」と思わせた名曲。
弦の入るイントロから、ウッドベースの響きが心地よい。
原曲は、スローで静かな曲であるが、軽くスイングしたあと、少しペースダウンしてからのウッドベースのソロ、そして山下さんのピアノへとバトンする流れも絶妙。
4曲目の「卒業写真」は、あまりにも有名すぎてアレンジも大変だったとのこと。
イントロとエンディングを微妙に変えているという真相は如何に?
私もこの曲には思い入れがあって、前にも書いたが「揺れる柳の下を通った路さえ今はもう電車から見るだけ」というフレーズが「青春」からの「卒業」というイメージと重なり、いい歳したオジサンがちょっぴりセンチになる。
ちなみに、私が通った高校は、校庭には柳があるものの通った路にはなかったと思うので念のため申し添えておく(笑)。
5曲目は「雨のステイション」。
アルバムを通して、今日のような雨の日に特にしっとりと心に沁みてくるのは、この曲の影響が少なくないのかもしれない。
収録本番に雨が降り出したとのこと、そんな空気も演奏から伝わってくるようだ。
「雨のステイション 会える気がして、いくつ人影見送っただろう・・」
この気持ち、オジサンにもわかるなあ(笑)。
6曲目の「春よ来い」は、山下さんの大好きな曲のひとつで、何気に口ずさんでしまうというから、きっと、身体に浸みついているのだろう。
庭先の沈丁花が咲きだす頃、アレンジのイメージが湧き、満開の桜を見ながらイメージを膨らませたという。
原曲のもつ力もさることながら、遠い春を待ちわびる想いが少し早目のテンポからも伝わるアレンジと演奏も巧み。
7曲目は、アルバム・タイトル曲の「グッド・ラック・アンド・グッド・バイ」
生きていると様々な出来事に遭遇し、悩み、苦しみ、悲しむことも多いが、そんな苦い記憶とは別れを告げて前向きになれるような、そんなアレンジである。
最後は、「卒業写真」のソロ・バージョン。
スローなアレンジで、静かにアルバムを閉じる演出もなかなか素晴らしい構成だ。
アルバム全般を通して聴いてみると、極端に原曲のイメージを損なうことなく、かといってつまらないBGMに終わらないジャズ・アルバムとしての面白さも味わえる作品となっている。
そして、何よりも、聴き終わると、ほんとに癒されていることが実感できるのである。
翌年リリースされたライブ・アルバム。
前作のメンバーにボーカルとバイオリンが加わり、スタンダード曲も演奏。
大分、趣も変わり、また違ったジャズを楽しめる。
藤原亜南氏のジャケット・デザインも素晴らしい。