アメリカ大統領選挙で当選したドナルド・J・トランプ氏が、
来年1月20日の就任に向け、着々と準備を進めている。
現職のオバマ大統領との会談、共和党幹部との相次ぐ面会、
ペンス次期大統領をトップに据えた政権移行チームの立ち上げと、
次々と動き出している。
中でも12項目にわたる政策構想は、
オバマ大統領の政策をことごとく覆す、
早くも壊し屋の期待に応えたようにも見える。
しかし、選挙中唱えてきたイスラム教徒の入国禁止には
全く触れず、オバマケア(国民皆医療保険制度)廃止は、
自ら「オバマ大統領に再考を言われた」と、
見直し示唆のもとれる発言をしている。
トランプ氏は、これまでの政治家に対する失望を一手に集め当選した。
過激な主張は、多くの支持者には、実現が期待される。
しかしライバル民主党はもちろん、出身の共和党にも、
その主張に賛同しかねる人たちが大勢いて、
議会で過激な主張に基づく法案が通る状況ではない、
とはいえ実現しなければ、その人たちの期待を裏切る。
ならば裏切ってまで現実路線転換を果たしたら、
クリントン候補に入れた、ほぼ同数の有権者の支持が得らえるか、
と言ったら、それも心もとない。
一般投票総数では、まだ確定はしていないが、
クリントン氏の方が、約40万票(0.3%)多くとっている。
アメリカの大統領選挙は、基本的に州ごとに当選者を決めるため、
一般投票では多くても、州の投票で逆転がありうるのだ。
クリントン氏に投票した人は、トランプ氏の過激な発言に
反発しただけでなく、トランプ氏の人格を忌避した人が多い、とされる。
ならば、いくら現実路線に転換しようが、
4年後の大統領選挙で、高潔かつトランプ氏の挑発を交わせる、
候補が出てきたら、再選に赤信号がともるだろう。
強硬路線を貫こうとすれば、議会の壁がある。
事実上無理だ。
自らの当選速報を見たときの表情をとらえた写真では、
トランプ氏は、驚きの表情をしていた。
進むも地獄、引くも地獄、そのことを理解しているのは、
ほかならぬトランプ氏なのかもしれない。