Column213.キャメロン首相、実は離脱派だった? | 打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

テレビ局ディレクター、アナウンサー、国家資格予備校講師、W杯ボランティア、本書き、日雇派遣、不動産飛込営業、コールセンターマネージャ、ITベンチャー人事総務課長という多彩な経験から多角的な独自視点で、今起きているニュースの深層を、徹底的に好き勝手に斬ります。

イギリスの国民投票で、EUからの離脱を支持する票が、
残留を超えて、離脱が決まった。


この投票に法的拘束力はないが、残留派のキャメロン首相は、
投票結果確定を受け、すぐに辞任を表明し、
離脱に向けた交渉を後任に託すると述べた。


今回の結果は、キャメロン首相の大誤算、
という見方が大勢を占めている。


キャメロン首相が党首を務める国政与党保守党は、
もともと残留派より離脱派議員の方が多い。
閣内でも、残留・離脱で分かれていた。


二大政党のもう一方、国政野党労働党は、
残留の立場をとる方が強い。
コービン党首も残留運動の先頭に立っていた。


今回の投票は、昨年のイギリス下院総選挙で、
キャメロン首相が約束したものである。


キャメロン政権は、当時保守党だけでなく、
自由民主党との連立政権だった。
自らの権力基盤を強固にするため、単独政権を目指していた。


それを見透かしてか、保守党の議員の中には、
「投票を実施しないと離党し(EU離脱を目指す)
 独立党に参画する」とした議員が多数おり、
国民投票を約束した経緯がある。


そして保守党は事前の予想を大幅に超える圧倒的勝利で、
単独過半数議席を獲得し、キャメロン政権は、
自由民主党を追い出して単独政権となった。


これで政権基盤強化を達成できたが、
EU離脱に限れば、実はそうではなかった。


3年前のスコットランド独立投票で、
否決されたこともあり、EU離脱も否決されるだろう、
とタカをくくっていたのかもしれない。


しかしその時は、与党保守党はもちろん、
スコットランドも基盤とする労働党も
全力を挙げて独立反対をに動いた経緯がある。


当時のミリバンド党首だけでなく、
スコットランド出身の同党のブレア・ブラウン両元首相が、
キャメロン首相以上に熱心に訴えた効果が大きい。


つまり与野党関係なく、独立反対で一致結束していた結果だった。


しかし今回のEU離脱は、与党保守党内で割れていた。
保守党が議席を大きく伸ばしたことで、
離脱への動きは、実は大きく動いたことになる。


こう見れば、キャメロン首相の見通しの甘さとする見方が、
大きな説得力を持つが、逆に、実は離脱派だったから、
このような動きをしたのか、とも思えてしまう。


さらに、離脱の最大の理由となった移民問題が、
ここにきて、テロが連発するなど
EU全体を揺るがす事態にまでなった。


また、人種差別ととられるのを恐れ、
ほとんど報道されていないが、移民の犯罪も多発しており、
テロへの恐怖を一層大きく駆り立てた、


そしてなにより、移民が増えたことで、
自分たちの職が奪われたとするなど、
経済的な問題が大きなうねりとなったことも大きい。


この先のスケジュールは、EUの条約により、
2年をめどに、EUとの離脱交渉を行うことになる。


ただ、キャメロン後任の最有力とされる、
離脱派のリーダー、ジョンソン前ロンドン市長は、
「時間をかけて交渉するのが良い。」とし、
さらに時間がかかる見通しだ。


交渉に時間をかけて、離脱後の条約などで、
イギリスに有利に持っていこうとする意図とみられる。


自分たちに有利にする、となれば、
イングランド、ウエールズとともに
イギリスの連合王国を構成する
スコットランドや北アイルランドも黙ってない。


イングランド、ウエールズは、EU離脱が優勢だったが、
スコットランド、北アイルランドは残留が優勢だった。


スコットランドの3年前の独立投票が否決されたのは、
「独立すればEUに入りなおさねばならず、時間がかかる。」
という論調に押されたことも大きい。

スコットランド経済は、EUへの輸出に支えられているからだ。
EU離脱は、その経済に大きなダメージを与える。


EU離脱は、その前提が崩れることになる。
実際、自治政府のスタージョン首相は、
独立投票実施を示唆している。


北アイルランドも、同じ民族であるアイルランドとの
統合を望む声が上がっている。長年の悲願だ。


EUの域内核国でも、離脱を求める政治勢力が、勢いを増している。


このように今回の投票は、イギリスだけでなく、
EU全体を大きく揺るがすことになった。
世界全体への影響も計り知れないだろう。


キャメロン首相は、その引き金を引いたとして、
後世に名を残すことになるのは間違いない。