北朝鮮の労働党大会が、36年ぶりに開かれた。
同党の大会は、それまでの政権の成果を高らかに称賛する場だったが、
今回は、経済は落ち込む一方、核開発には一定のめどがついたことから、
核保有国としての存在を強調する一方、
国民の生活については、これから向上させる、ということをいうことになる。
もう1つ狙いがある。
それは、金第一書記の父親、金正日総書記が掲げた軍至上主義から、
祖父金日成国家主席時代の党主導への回帰である。
金第一書記は、就任以来、軍関係者の登用について、
最高幹部の背広組を粛清し、直接制服組を配下に置いてきた。
実際の軍隊統率を、背広組から自身の直下に置いたのである。
そして自分は党の第一書記として、その上に立つことになる。
これが何を意味するか。
金第一書記は、就任以来、軍だけではなく、最高幹部の粛清に動いてきた。
そのために、次はいつだれがやられるかわからない、という状況だという。
同時に、金第一書記自身も、自分がいつだれにやられるかわからないと疑心暗鬼になり、
ストレスから暴飲暴食となり、体重が50キロも増えたという。
その中で、軍の指揮権を自分の手元に置いた、ということは、
何かあっても即応できる体制にしたかった、ということであろう。
そう簡単に手出しできなくした、ということである。
それで安心できるだろうか。
国民生活の向上はもはや待ったなしだ。
党大会を開くということは、それが至上命題になるということだ。
なぜなら、党大会は求心力向上の道具であるからだ。
国民に何も約束しないわけにはいくまい。
しかし経済を向上させるには、さらなる市場経済化を推し進めなければならない。
ということは否応なしに、外国からの情報が増えてくることになる。
すなわちそれは、体制を脅かすことにつながる。
隣の中国は、一党独裁ながら、経済発展を続けている。
それを見て倣おうということだろうか。
となれば、ちょっとそれは見通しは厳しい。
中国の国民も、10年前と違い、外の情報に多く触れている。
例えば、共産党政権の半日宣伝の内容のほとんどがウソであることが、
一般市民レベルにまで広がっている。
共産党政権は言論統制を厳しくすることで抑えているが、
脱北者が続く状況で、北朝鮮は中国と同じことができるだろうか。
中国は、鄧小平の時代から、時間をかけて経済発展に取り組んできた。
しかし北朝鮮には時間がない。急激な変化は、確実に体制を脅かすだろう。
金第一書記が国民生活の向上を約束するなら、
それは体制崩壊のリスクも抱え込むことになる。
もしかしたら、今回の大会が最後の大会になるかもしれない。
そうならないために、打つ手はあるのだろうか。