Column197.認知症鉄道事故賠償判決の是非。 | 打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

テレビ局ディレクター、アナウンサー、国家資格予備校講師、W杯ボランティア、本書き、日雇派遣、不動産飛込営業、コールセンターマネージャ、ITベンチャー人事総務課長という多彩な経験から多角的な独自視点で、今起きているニュースの深層を、徹底的に好き勝手に斬ります。

認知症の男性が鉄道施設内に立入り、
列車にはねられ死亡した事故で
事故の賠償金を求めた民事訴訟で、
原告のJR東海が敗訴する判決があった。


裁判の論点は、責任能力のない人の代わりに、
監督義務者が責任を負うとした民法上の規定を、
認知症の家族がどこまで負うべきかどうかだった。


JR東海は、上場会社である以上、損害回復を求めないと、
株主に追及される恐れがあるとして提訴に踏み切った事情もある。


しかし、認知症になった人を、
24時間365日監視し続けるのは、土台無理な話だ。


今回の事故では、ほんの数分目を離したすきに、
いなくなってしまったのだという。


その点で、個人に賠償を負わせなかったのは、
評価できる判決であるとも言える。


一方でもしこれが、例えば「失火で隣家が燃えたら。」
となると、どうなるだろうか。
今回の同様の理由で、賠償が求められない、となると、
個人の損害が大きすぎる。


今回の損害は、巨大企業が受けたものである。
被害の程度は、指して大きいものではない。


しかも、線路内の立入防止策が徹底していたのか、など、
JR東海側の安全策の不行き届きも考慮されても良かったと考える。


もちろん、民事裁判なので、原告被告双方が問題にしなければ、
争点にはならない、ということも踏まえるべきだが、
今後、同様の裁判が起きないとも限らない。


今回の判決は、一律家族に賠償義務はなし、とはしていない。
本件特有の事情を総合的に判断された。


損害を受けた側、程度、過失その他の個別具体的な事象を、
総合的に勘案して、決着を図るようにせねば、
認知症の家族も、損害を受けた側も、
安心して生活を送ることはできまい。


法制度整備や新たな保険など、裁判にならなくて済むよう、
新たな仕組みも必要になってくる。


少なくとも今回の判決は、巨大企業から賠償を求められても、
一定の歯止めがかかることがわかり、その点では、
誰にでも起こりうることでの漠然とした不安から
解放されることにはなるだろう。