Column196.鴻海は、騙されたのか、騙したか? | 打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

テレビ局ディレクター、アナウンサー、国家資格予備校講師、W杯ボランティア、本書き、日雇派遣、不動産飛込営業、コールセンターマネージャ、ITベンチャー人事総務課長という多彩な経験から多角的な独自視点で、今起きているニュースの深層を、徹底的に好き勝手に斬ります。

経営再建を目指す我が国家電大手・シャープが、
支援先に、台湾の大手家電・鴻海(ホンハイ)を選んだ。


その直後にシャープ側から、
偶発債務が3000億円を超えるとの事実が、
鴻海に通知された。


「債務」という言葉が入っているので、
負債のように、一瞬思えるが、現実の債務ではない。


裁判の敗訴、支払いに使った他人振出の小切手が
不渡りになり支払先が回収できずに自身に支払義務が発生する、など、
自身ではない要因によって現実の債務になる可能性のある債務を言う。


「潜在債務」と言った方が、一般の言葉感覚にはなじむだろうか。
(ちょっとちがってくるが・・・。)


企業会計では、過去の実績に基づいたその発生確率によって
金額を見積もって「偶発債務」として明らかにしておく。


その明らかにした金額が3000億円超というのは、
シャープの売上高からすれば、特別な驚きではない。
ただし、通常の範囲とも言い切れない。
会計上では明らかにしなければならない事実だ。


驚くのは、支援先が決まってから、その事実を通知したことだ。
鴻海に重要な事実を告げていなかったことになるとすれば、
鴻海を騙した、と言われても仕方ないようにも思える。


しかし鴻海側もこれだけの大型買収を行うのであれば、
事前に綿密なデューデリジェンス(財務内容調査)を行うはずだ。


偶発債務は、予め明らかにするもので、
隠せるものではないから、それを知らないとすれば、
余りにお粗末すぎるかとぼけていたかのどちらかだ。


アメリカのアップル社とも渡り合うほどの鴻海が、
知らなかったとは、到底考えにくい。


となると、なぜ鴻海は知らんぷりをしていたのか。


鴻海は、支援合意の際、大胆なリストラは行わない、
企業分割はしない、など、
シャープにとっての好条件を飲んだという。


しかし、支援金額の半分の「潜在債務」があるとなると、
重要な事実を隠していた、となり、支援合意を見直すこともできる。


鴻海は、競争相手であった産業革新機構に対し、
是が非でも勝つために、破格の条件を示したとも言える。


産業革新機構が手を引いた現段階なら、
同機構の支援策さえ下回らなければ、
ひっくり返されることもない。


支援金額引き下げを狙って知らんふりをしていたのだろうか。
であれば、シャープはまんまと引っ掛かったことになるが、
そんな単純な手に引っ掛かるとも考えにくい。


支援先には選んだが、選定までのシャープ内部の
駆け引きは凄まじかった、という。
鴻海派と機構派に分かれていた、ともいえる。


シャープの高橋社長は機構派と伝えられている。
機構側の支援金額と鴻海との差が、偶発債務の金額と
似通っていることを考えれば、
機構には伝わっていたのでは、勘ぐってしまう。


そうなると、狐と狸の化かし合いの様相になってくる。


支援の正式合意は、先送りとなった。
どのような展開になってくるかは、
交渉が緊張の度合いを増し、

機構やその後ろにいる経済産業省が
どのように動いてくるかがガキとなりそうだ。