長野県軽井沢町で起きたスキーバス事故は、
事故の痛ましさはもちろんだが、
数々の法令違反が指摘されている。
亡くなった乗客は20歳前後の若者だった。
ご家族の心情を考えると察するに余りありすぎる。
理由はまだ定かではないが、
現場は国道18号という一般道で、
並走する高速道路の上信越自動車道を避けていた。
なぜ高速道路を使わなかったのか、だけでなく、
以下に述べる理由でなぜわざわざカーブの続く
国道18号を使ったのかの理由解明も待たれる。
現場の国道18号は、筆者も通ったことがあるが、
急カーブの連続である。
特に群馬県側から群馬・長野県境までは、
非常に急なカーブが続き、大型バスが曲がるには、
時速10キロ以下に落とさねばならないのでは
と感じたカーブもあったと記憶している。
一方で県境を越えたら下り坂になりカーブもゆるくなる。
つまりスピードがでやすくなる区間で事故は起きた。
なので筆者は事故現場上空の映像を見たとき、
ブレーキ痕が細いことから、ブレーキが効きにくくなる
ベーパーロック現象が起きたのかと感じた。
※ベーパーロック現象については下記をご参照願います。
http://booboow.blog89.fc2.com/blog-entry-180.html
事故現場の先には、道路脇に急な上り坂の構造をしている、
緊急退避所もあったという。(上記URLに写真あり。)
しかし乗客の話や現場手前の左側(事故がおきた右とは逆側)
のガードレールの傷跡から、ブレーキ痕ではなく、
左側にぶつかった反動で車体が右に傾き、
圧力でついた後ではないか、との見方が強まっている。
左側にぶつかる前から、左右に振れていた、
運転が荒いとの証言もあり、ベーパーロック現象の
可能性も捨てきれないが、運転手の体調異変の
可能性も指摘されている。
ちなみにこの使用ルート変更は、運行管理者への
届け出が必要だがそれもなされていなかった。
バスの運行記録の改ざんも常態化している状況で
バス会社から書類が見つかっている。
出発前に義務付けられている点呼によって、
健康状態の確認もなされるが、点呼担当者である、
バス会社の社長が遅刻してして舞い、
点呼せずに先に出発してしまった。
さらに、着用が義務付けられているシートベルト着用の
呼びかけも、運転手からはなかったという。
そして、今回の運行に際しての最低料金を
下回って受発注していたことも分かった。
次に触れるが需要過多なのに料金が安くなる、
というのも首をかしげるが、
ざっと書いただけでも数々の法令違反が指摘されている。
ここ2,3年の外国人観光客の増加により、
かねてより大型バス及び運転手の不足が指摘されていた。
その需要が長く続くかどうか読めないことから、
運転手の確保は、雇用期間が長くなる若年層ではなく、
高齢層に需要が向かっていた。
もちろん高齢層に雇用が及ぶこと自体は好ましいことだ。
問題なのは、年齢層ではなく経験、または経験を補う
研修をしっかりしていたか、ということだ。
事故発生時に運転していた運転手は65歳で、
先月採用されたばかり、しかも本人は、
中型バスの経験しかない、と話していたという。
採用直後の未経験者であれば、
当然研修があってしかるべきだ。
他の会社なら当然に行われている。
いずれもきちっと守られていれば、防げたのではないか。
一方で守らせるには膨大な手間ヒマがかかり
事実上不可能なのも事実だ。
であれば内部通報制度の拡充や発注側の確認事項の
定型・義務化など、未然に防ぐ手立てを、考えねばなるまい。
いつも事故が起きてから対策が考えられる。
それでは遅いのだ。
観光立国を目指すなら、今ここで、バスに限らず、
あらゆる危険性を未然に防ぐ対策を、行政はもちろん、
事業者サイド、選ぶ消費者も、考えねばならない。
いや観光立国云々の前に、全ての事故をなくすために、
たゆまぬ努力をしなければならない。