Column186.産経無罪、日本政府の対応。 | 打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

テレビ局ディレクター、アナウンサー、国家資格予備校講師、W杯ボランティア、本書き、日雇派遣、不動産飛込営業、コールセンターマネージャ、ITベンチャー人事総務課長という多彩な経験から多角的な独自視点で、今起きているニュースの深層を、徹底的に好き勝手に斬ります。

産経新聞の加藤達也・前ソウル支局長が、
同紙のネット記事に、韓国の朴大統領の
名誉を毀損したとして起訴された裁判で、
ソウル中央地裁は、無罪判決を出した。


この裁判は、起訴の段階から異常だらけだった。

まず、問題となった記事のなかで、朴大統領の行動は、
「(韓国の有力紙である朝鮮日報にこうかかれている。」
と紹介したもので、産経新聞が事実として書いたものではない。


そうなると、事実でないことを書くとは何事、となるが、
記事では「(朝鮮日報に)このようなうわさが出るほど、
朴政権は支持を失っている」旨の記述となっており、
うわさの域を出ないことを明言している。


筆者がこの記事を見たときは、
朴大統領の行動はうわさにすぎない、
こんな無責任なうわさが出るほど、
朴大統領は信頼されていない、との印象を持った。


従って、名誉毀損はどう見ても成り立たない。


しかも訴えた市民団体は、最初に書いた
朝鮮日報は問題にしていない。


韓国の名誉毀損は、第三者からでも訴えられる。
そして毀損を受けたとされる側が、毀損ではないと
明言しなければ、捜査が始まる。


つまり朴大統領は毀損ではない、
とは認識していない、ということだ。
黙認したと言ってもよいだろう。


他にも首をかしげることは多々あるが、
象徴的なのは、判決言い渡しの時に、
「韓国外務省から日韓関係に配慮してほしい
という要請があった。」と明らかにしたことだ。


「そのことに関係なく、法に基づいて裁判をする。」と
続けていれば、三権分立が守られていることになるが、
その明言はなかった。影響を受けた、と思われても仕方がない。


外務省の要請で判決をだした、となったら、
もはや法治国家ではない。


韓国外務省には、日本の外務省から、幾度となく要請があったという。
閣僚クラスからも、そのようなことがあったという。


もしこれが無罪の流れを作ったとなれば非常にまずい。


「政治的配慮で無罪にしたのだから、慰安婦問題では譲歩しろ。」
ということを言わせる口実を与えてしまったようなものだからだ。


当初は、菅官房長官などが「国際常識からかけ離れている。」と
当然の批判をするなど、圧力をかけていた。
そして国際社会がそれに同調した。ここまで良かった。


しかし、その後はちょっと違ってくる。
外交ルートを通じて、善処を求めるようになる。
いみじくも朴大統領が言ったように「司法の問題」なのだから、
外務省を通じての事態解決を求めるべきではなかった。


日本政府は、慰安婦問題と交換条件にさせないにすべく、
「要請は、あくまで法に基づいての対処を求めたものだ。」
と言い張らなければならない。


その意味で日韓関係は、良い方向ではなく、
交渉においては、より一層の緊張をもたなけれればならなくなった。


あくまで今回の一連の流れは、政治ではなく、
司法の場で行われたことであることを再確認しなければならない。