安保関連法案が、きょう未明、参議院本会議において、
与党と一部野党の賛成で可決、これにより成立した。
成立までの過程全てにおいて、首をかしげざるを得ない。
山場の参院特別委員会での可決後の、
鴻池委員長の言葉がそれを表している。
趣旨は、
・強行採決ではない。
・政府側の答弁に、あやふやな点が多かった。
としている。
政府側の答弁では、安倍首相や中谷防衛大臣の発言内容が、
180度ひっくり返ることがあった。
印象的なのは、ホルムズ海峡での
機雷掃海を想定しているか否かである。
我が国周辺ではない中東での活動が、
想定内かどうかは、極めて重要である。
そしてその内容についての議論の中で、
法案そのものは、同盟国の危機ならほぼ無制限に
自衛隊を出せることや核兵器を積載できることが、
中谷大臣の答弁で明らかになった。
そして土壇場で付帯決議には盛り込まれたが、
法案本文そのものには、国会の関与なしに、
自衛隊を外に出せることも明らかになった。
安倍首相が国会だけでなくテレビなどで
繰り返し説明していた内容には、全く含まれていなかった。
これに呼応するかのように、国民の間では、
今国会での成立に反対の世論調査が、
軒並み過半数を超えた。
言うまでもなく、今回の法案成立は、
中国や北朝鮮などの動きに対し、
財政的事情で現在の日米安保だけでは
対応できなくなった米国が、
我が国に応分の負担を求め、
安倍首相が国会に諮る前に、約束してしまったことで、
何が何でも今国会で成立させなければ、
今週末の国連総会に公約実現を見せられなく恐れが
あったことである。
制作の歴史的大転換にも関わらず、
憲法解釈変更から立ったの1年で
成立させてしまったことで、全てが中途半端になってしまった。
我が国を取り巻く状況から、
安保法案は必要なのは言うまでもない。
しかし、どのような危機が想定されるか、
具体的な事案はほとんど議論されなかったことから、
法案の中身は、政府の一存で何でも
できてしまうものになってしまった。
安倍首相がその点を詰められたが、
「総理の私が、ない、と言っているのだからないんです。」
と、法治国家を無視したかのような発言まで飛び出た。
総理が変われば、それまでないものをあることに出来てしまう。
それこそ法的安定性を欠く。
想定されない事態なら、法案に盛り込めば良いだけなのに、
なぜかそれをしない。疑いを持たれても仕方がない。
それにとどまらず、下品な時ヤジを飛ばし、
品格を疑われるまでに至った。
成立後、「これから丁寧に説明していく。」と語ったが、
順番は逆ではないか。
このように与党も与党だが、反対する野党も野党だ。
もちろん憲法解釈を巡る議論は大事だ。
しかしそれとともに、我が国を取り巻く現状を踏まえ、
安保法案を何でもありではなく、国会のコントロールを
効かせるようにするなど、憲法違反の状況にしないこともできたはずだ。
途中までは法案の中身を質し、
中谷大臣の前述の発言を引き出したまでは良かったが、
それ以降は、それを修正させようともせず、
一部では感情的な反対に終始し、
これまた中途半端に終わってしまった。
法案が必要なことに変わりはないのだから、
ただ法案という箱を作っただけ、
中身に何を入れるかはこれから、という、
中途半端なままにせず、今後の改正で、
しっかり骨格を固めなければならない。
政府・与党だけでなく、野党にもその責任が求められる。
「成立ありき」の国会運営や、「感情的な反対」言動は、
もう見たくない。