中国で開かれた、
抗日戦争勝利70年記念軍事パレードでは、
数々の最新兵器お披露目とは裏腹に、
外国からの来賓が招待数を大幅に下回った。
そもそも”抗日戦争に勝利”したのは、
当時の国民党政権であり、
中国共産党政権による中華人民共和国は、
終戦の後に成立した。
共産党政権が日本を負かしたのではない。
もっといえば、形式上、日本の第二次世界大戦では、
サンフランシスコ講和条約によって、
「講和」つまり勝敗を付けず和睦したのであり、
”勝利”ではない。
(もっとも、ポツダム宣言において、
事実上の無条件降伏ではあるが。)
欧米などの各国は、首脳級の参加を見送ったことに、
真実と違うことは受け入れられない、という姿勢を、
事実上見せたと言ってもよい。
米国のオバマ大統領に至っては、
日米の戦後の歩みに触れ、同盟の深化を明言した。
英国でも、一部雑誌において、
「歴史を捻じ曲げているのは中国だ。」
という論調が主たる見方になりつつある。
にも関わらず、事実ではない共産党の勝利を宣伝するのは、
対日けん制の意味合いもあるが、主たる目的は、
国民に対し、共産党の権威を強調し、
経済悪化で揺るぎかけている政権基盤を固めることである。
しかし当の国民は、反日宣伝の目的を理解しており、
過去と今の日本が違うことを良く分かっている。
今回のパレードにも、冷ややかな目で
見ていることが伝わってくる。
経済悪化だけではなく、共産党内の権力闘争で、
習近平総書記(国家主席)自身の権力集中は進んだが、
対立する派閥への汚職摘発で、恨みを買っている。
側近がターゲットにされた、先々代の江沢民氏、
先代の胡錦涛氏を、パレード雛壇で、わざわざ
自分の隣に座らせて、結束をアピールした。
雛壇での二人の様子は、江氏は心ここにあらず、
「さっさと終わって帰りたい」という気持ちが、
あからさまに表情に表れていた。
胡氏に至っては、表情に精気がなく、
体調が思いのほか良くないのが垣間見えた。
それでも習氏の要請にこたえたのは、
これ以上の摘発を防ぐべく、恩を売ったともいえる。
逆にそこまでしなければならないほど、
共産党は、追い詰められている、ということである。
共産党政権は、新たな対日カードとして、
「天皇の謝罪」を用意してきた。
中国共産党の論理にのっとれば、
共産党政権が日本を負かしたのだから、
サンフランシスコ講和条約で全てが決着した以上、
国家や国家元首としての謝罪は必要ない。
当然日本は謝罪しないわけだから、
それを逆手に取り、執拗に要求することで、
国民向けに強い姿勢を見せるポーズとするつもりだろう。
しかし先ほども触れたように、国民はもう見抜いている。
だから国力の増大を示す為に、最新兵器を披露したとも言える。
米国や日本の軍事専門家に分析されるのを覚悟の上で。
肝心の経済では、株価の下落、
AIIB(アジアインフラ投資銀行)の運営のもたつきなど、
中国の思い通りに入っていない。
それどころか、今回の株価下落の主犯として、
国際会議でやり玉に挙げられ反論できない状況にある。
中国が国際社会の中心で輝きたいなら、
強引さで反発を買うのではなく、
貢献で尊敬を勝ち得るしか、その道はない。
そんなことを考える余裕もないほど、
共産党政権は追い詰められているとみてよいだろう。
我が国としては、国民と政権の間の気持の離間を踏まえ、
一歩距離を置いて、冷静に対処することが必要であろう。