礒崎陽輔首相補佐官が、「法的安定性は関係ない。
わが国を守るために必要な措置であるかどうかを
基準にしないといけない」と発言し、物議を醸している。
法的安定性の意味は他の専門サイトに譲りたいが、
ありていに言えば、「法を運用する側の恣意的言動を抑制する」ことだ。
法を運用する側である首相補佐官が、
それを関係ない、と言ったのは、
「抑制など知ったことか。」と言ったに等しい。
礒崎氏の発言は、国会の参考人招致があるので、
次回以降に詳細に触れたいが、
これに限らず、自民党の議員から、
法治国家とは思えない発言が相次いでいる。
かつての自民党は、反対意見にもしっかり耳を傾け、
機が熟すまで待ってから法案を通すという、
余裕と謙虚さがあった。
しかし政権復帰後の自民党は、野党に転落したことも忘れ、
自分たちがやることはすべて正しい、だから、
多少強硬にやってもいいんだ、と雰囲気を感じる。
安倍首相になってから、不祥事や失言は、
当初こそ目立たなかったが、今は相次いでいる。
多数党のおごり、と言えばそれまでだが、
政権復帰後に初当選した議員が1/3を占めるからだろうか。
自身が国権の最高機関の一員と言う責任感が乏しい。
引退したかつての幹部から、嘆きの声も聞かれる。
昨年の総選挙で議席をわずかに減らしただけで、
国民の信を得たと思い、何でも許される、
と思っていたら間違いだ。
民主党の政権運営のまずさは、言われているほどではない。
成果を出した政策もある。(失敗も多いが)。
それに、前回も前々回も、自民党の候補者に入れたのは、
選挙区でも比例区でもおよそ1/5にすぎない。
1位しか当選しない小選挙区という制度で、
野党票が分散し、各選挙区で比較1位を取ったにすぎない。
もっといえば、2009年では選挙区の半数しか候補を
立てなかった共産党が、300全てで候補を立て、
野党票分散=自民党圧勝に、結果として寄与したに過ぎない。
野党がすみ分け、共産党が候補者を絞れば、
すぐにでも政権はひっくり返る。
来年の参院選で、定数の変更が行われたが、
増えた選挙区がそのまま自民党の議席にはならない、
減った選挙区では与党への厳しい風が吹くだろう。
安保法制の中身ではなく、
決め方に違和感をもつ国民は多い。
だから支持率が徐々に下がってきている。
大きく揺れ動くではなく、ゆっくり低下している。
これは風ではなく、地殻変動ではないか。
8年前も、緊張感を失った自民党に、
国民は厳しい審判を下した。
失言する取り巻きを庇って辞任させなかったのも一因だ。
今もそれを繰り返している。
国民を軽んじる政治家に投票する国民はいない。
1年後だから国民は忘れる、と思ったら、痛い目を見るだろう。
今国会での成立は見送り、国民にきちっと説明し、
丁寧な手順を踏んで成立をさせるべきである。