東京都の23区のごとく、大阪府の市区町村として、
大阪市を5つの区に分割するという、いわゆる
「大阪都構想」の住民投票が、僅差で否決された。
もともと大阪府庁と大阪市役所が担当する業務に
重複が生じているだけでなく、その業務の取り合いにより、
いわゆる二重行政に拍車がかかり、多額の税金が無駄になったとして、
橋下市長は、東京”都”に例え、
大阪市をという行政単位を、東京都の23区と同じにして、
大阪府の直轄にし、かつ5区に分割する構想を提案し、
今回の住民投票に臨んだ。
これがいわゆる今回の”大阪都構想”である。
確かに二重行政の解消に手っ取り早いのは、
市を分割し、府と区の権限を明確に分けることである。
一方で、名称上大阪市を消滅させるという
心理的犠牲がいかに大きいかは、
平成の大合併を見れば、一目瞭然である。
5つの区に分けるその名称に「大阪●●区」のような、
「大阪」の名前は存在しなかった。
それ以前に、大阪市以外の政令指定都市をも巻き込んだ
都構想を提案し、ことごとく反対に遭って、
自身が市長を務める大阪市だけの再編に縮小せざるを得なくなった。
それだけで二重行政の解消の効果の見込みは小さくなった。
もっと言えば、橋下氏の”都”構想の参考対象自体が、
実際はまったく参考にならないものであった。
橋下氏は、かつての東京府(現在のいわゆる多摩地域)と
東京市(現在の23区地域)という全く重複しない、
別の地域の行政を合併させ誕生した東京”都”になぞらえて、
「大阪”都”構想」と銘打ったが、
そもそも大阪市は大阪府の一部地域であり、
別々の地域の東京府と東京市が合併したこととは、根本的に違う。
ワンフレーズで理解してもらいために「”都”構想」としたのだろうが、
大阪府民、大阪市民をあまりに見下し過ぎている。
筆者はの2点(東京都誕生の経緯、ワンフレーズ)から、
”都”という言葉を使った時点で、既に非常に大きな違和感を感じていた。
「大阪市東京23区化構想」、の方がよほど
分かりやすかったと思うのは、筆者だけだろうか。
二重行政の解消を目指したことは、誰もが、
(あ、既得権益を除いて)賛成だっただろう。
しかし名は体を表すがごとく、人間の心理だけでなく、
民法の表見代理の規定など、法的にも大事なものである。
加えて、本人が記者会見で言っていたように、
「敵を作って徹底的にやっつける。」やり方では、
当初は拍手喝さいかもしれなかった。
議論ではなく「口げんか(本人談)に勝つことこそ得意。」
として、大阪府知事になる前には、著書も出したくらいだ。
タレントの時ならそれでも良いかもしれないが、
選挙が終われば自身に投票しなかった人たちのためにも、
仕事をしなければならないのに、
少なくとも表現上においてはそのスタンスを続けることにより、
自分に反対する人の話は聞かない、というイメージが強くなり、
(最たるものが在特会の代表との接触)
「二重行政にはうんざりだが、橋下氏には
”都”構想の手柄はとらせたくない。」
という市民の判断が、この僅差となったのであろう。
橋下氏自身、この結果により政治家を引退すると言っている。
これで憲法改正という橋下氏との立場に近かった
安倍首相が落胆している、という話も漏れ伝わっている。
しかし7年前の大阪府知事選挙に、
20000%出ないと言って出馬した過去がある。
その時は、「テレビ番組との契約があったから、
出馬するとはいえなかった。」と言っているが、
前年の宮崎県知事選挙で、東国原英夫(そのまんま東)氏は、
そんなこと言わずに出馬している、
というかそのようなケースがほとんどだ。
来年の参議院選挙で、「あの時(今回の都構想否決直後)に、
まさか国政に出るなんて言えるわけなかったでしょう。」
と橋下氏なら堂々と言ってのけるだろう。
それに、憲法改正を是が非でも実現させたい
安倍首相がその口説きを諦めるわけがない。
なにせ20000%を覆した"実績"があるのだから。