今週は、J1初昇格を決めた松本山雅FCを通じて、
転換期を迎えようとしている、Jリーグを取り上げます。
今年、3部制でスタートしたJリーグで、
優勝・残留争いがいよいよ大詰めを向かている。
次節、首位の浦和と2位のガンバの直接対決。
浦和の優勝を決定づけるかもしれない
この試合から、目が離せない。
2部に当たるJ2では、湘南ベルマーレが、
ぶっちぎりの独走を見せ、
優勝・J1復帰を決めたのに続き、
松本山雅FCが、3節を残して、
3位ジュビロ磐田に勝ち点12差をつけ
2位が確定し、J1初昇格を決めた。
2チームを見ていると、やはり失点の少なさが際立つ。
サッカーは、如何に失点しないかがカギ、
ということを、改めて感じる。
山雅のある長野県は、正直言って
サッカーがメジャーなスポーツではなかった。
その中で、J2屈指の観客動員数を誇っている。
長野県は、4つの地域に分けられる。
県庁所在地のある長野市を中心とした北信地域、
上田市を中心とする軽井沢を含む東信地域、
リニア新幹線の通る飯田市を含む南信地域、
そして、山雅発祥の地・
松本市を中心とする中信地域だ。
長野県第2の人口を擁する松本市は、分権運動における、
廃藩置県から戦後直後までの歴史的経緯から、
最多人口を擁する長野市に対するライバル意識が強い。
そのような意識の中で、スポーツでは、
松本市近辺の学校などが他地域に負けまいと、
全国大会に多く出ている。
特にサッカーでは、他の3地域より群を抜いている。
筆者も、一時期中信地域のサッカーに
深くかかわった者として、
今回の昇格を非常に感慨深く見ている。
松本山雅は、実は50年近くの歴史がある。
教員などのいわゆる草サッカーチームが出発点だ。
21年前のJリーグ発足当初から、
この中信地域でも、Jリーグチーム発足のために、
地域の指導者が模索していた。山雅以外にも動きはあった。
21世紀に入り、市民が中心となって、
Jリーグを目指す組織態勢がようやく整った途端、
他に類を見ない快進撃で、ついにJ1昇格を果たした。
ここに特筆すべきは、2点ある。
1つは、特定企業に頼らず、
市民の手でチームが出来上がったことである。
J2屈指の動員力を誇っていることが証明している。
そして、もう1つはサッカーがメジャーではない地域で
短期間でのJ1昇格を達成したことである。
如何にその市民のサポートが厚かったかがわかる。
親企業を持たないチームの前例としては、
サッカー王国静岡県の清水エスパルスがある。
Jリーグ発足当初、その理念として、
企業色を薄め、地域に根付いた活動を掲げていた。
エスパルスは、まさにその体現と言われていたが、
Jリーグ発足に合わせて、プロチームとして設立された。
銅メダルのメキシコ五輪より前から存在した
市民チーム山雅が、50年の歴史を経て、
トップリーグに上がることは、
まさにその理念の象徴、とも言えるのだ。
これは、奇跡でも何でもなく、
50年の歴史の積み重ねだと感じる。
その象徴である山雅が、J1に行く。
ここまで書くと、うれしさの極み、と続くかと思われるが、
実はそうではなく、正念場となる。
そしてその正念場は、Jリーグのものでもあるのだ。
J1に初昇格を果たしたチームが、
1年目で次年度への残留を果たせなかった例は枚挙に暇がない。
逆に残留できれば、3年目以降も残れている例が多い。
その前例に倣えば、山雅がその理念を、
本当に実現できるかどうかは、
来シーズン残留できるかにかかっているともいえる。
だからこそ、来年の山雅の状況が、
Jリーグの未来に大きく影響する、ということは、
決して過言ではないのだ。
昇格を決めた翌日、山雅の反町康治監督に、
喜びの表情は見られなかった。
既に来年を見据えた発言が多く出ていた。
J1での豊富な経験から、その厳しさを、
肌で感じてきたからだろう。
その反町監督は、来期の続投が確実である。
それだけではなく、J1で戦い抜くための布陣も
しっかりさせないといけない。
うまくいけば、初昇格年でも上位になった例はある。
サガン鳥栖は、優勝争いの常連だ。
共通しているのは、根強いサポーターの応援だ。
その応援を確かなものにするためにも、
来季の目標を、残留ではなく、最低でも、
一ケタ順位以上にして、是非それを実現してもらいたい。
筆者もまた、応援のためにスタジアムに通うことにしている。
50年の歴史の原動力は、J1昇格で終結ではなく、
初昇格年での優勝まで後押ししてくれるのだから。
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