今週は、きのう投票が行われ、否決された、
スコットランドの独立投票を取り上げます。
イギリスの、4つからなる構成国の1つ、
スコットランドの独立投票が行われ、
反対が、賛成に10ポイントの差をつけ、否決された。
この投票結果に対して、様々な見方が出ている。
集約すると、2つに分けられる。
1つは、10ポイントを大差とする見方、
もう1つは、逆に僅差とする見方だ。
興味深いのは、どちらの見方も、
「賛成が意外にも多くの支持を得た。」
としていることである。
独立投票が実施された経緯は、ニュースサイトなどを
ご覧いただければ理解できるので、本欄では割愛致したい。
それを踏まえて、独立投票実施が決まった当初は、
世論調査などでは、反対が7割以上も占め、
現実味が帯びてくるとは、予想されていなかった。
これが、僅差とみる見方の根拠である。
それが一時は、世論調査で賛成が上回るなど、
独立が現実味を帯びてきた時期もあった。
それがひっくり返ったことから、
「大差」とする見方となっている。
どちらの見方が正しいということはここではしない、
というより、それは事実上不可能だろう。
なぜなら、その一連の支持率変遷こそ、
スコットランド人の気持ちの揺れそのものだからだ。
それは、賛成・反対それぞれに投票した人たちの
インタビューに表れている。
賛成・反対問わず、多くの人が心のどこかで
「独立で来たらいいな。」という思いをもっている。
一部報道の解説では「ロマン」と評している。
一方で、独立し小国となったら国家運営できるのか、
という見方が、賛成できない理由となっている。
言い表せば「ロマン」に対する「現実」であろう。
ただそれだけでは、今回の住民投票にはならなかっただろう。
この住民投票が実施される遠因は、1980年代当時、
保守党のサッチャー政権下で実施された財政再建策の一環で、
スコットランド各地の炭鉱を次々に閉鎖されたことにもある。
職を失ったスコットランドの人たちは、
未だにサッチャー氏に対する憎悪をもっている。
保守党のライバル党である労働党はスコットランドを地盤とし、
ブラウン前首相とその一代前のブレア元首相も出身者である。
その労働党も、保守党と足並みをそろえ、
独立には反対の立場をとり、ミリバンド党首や
ブラウン前首相も、何度もスコットランド入りし、
独立反対を訴えてきた。
ブラウン前首相は、保守党のキャメロン現首相より、
強い姿勢で反対を訴えていた。
炭鉱閉鎖での憎悪が言われるが、
実はスコットランドの一人あたりのGDPは、
もっとも豊かとされるイングランドと大差ない。
むしろイングランドの大都市以外のGDPの低さが深刻だ。
ロンドンなどの大都市との格差が2倍前後だからだ。
スコットランドはイングランドに搾取されている、
という意識は、1707年の合併の経緯による所が大きく、
経済の方では、炭鉱閉鎖は、イギリス全体の
財政再建の1つでしかなく、スコットランド特有ではない。
そのような現実があるからこそ、当初は7割もの人が反対だった。
ロマンより現実を見ていたわけだ。
しかし賛成派が、独立すればもっと良くなる、
というような数値や政策などを示し、
現実がロマンに近づいてくるように見えるに従って、
賛成派がどんどんと増え、一時は逆転したのだ。
しかしその賛成派の出した数値や政策が、
実はその現実とはかけ離れていることが見えてきて、
反対が盛り返しかけて、投票日を迎えたのである。
先にも書いた通り、今回反対した人も、
独立のロマンをもっている人は多いと聞く。
本当に、現実がそれを満たすようなことになれば、
ふたたび独立に向けて動きが出てこないとも限らない。
その意味で、今回の投票結果は序章にすぎず、
賛成派が半数近くの45%の支持を得たことで、
再び投票が行われる日が来る可能性が、
現実味を帯びてきたことは、確かである。
そして再投票の現実が、
独立をロマンから現実にする可能性が、
少しずつ高まっていく可能性も。
今週もお読みいただきありがとうございました。
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