今回は、今週行われた日米首脳会談を取り上げます。
今週水曜日、アメリカのオバマ大統領が
国賓として日本を訪れ、安倍首相と会談を行った。
この訪日は、来る前から去った後も、
徒労ばかりが印象に残ってしまう。
そもそも訪日を決めたときから、国賓にこだわる日本と、
実利を優先する米国との間で、さや当てが続いた。
国賓にして、中国や韓国に見せつけたい日本と、
TPPで絶対に譲れない米国が折りあった結果が、
実質40時間の滞在での国賓待遇だった。
しかし、訪日をセレモニーでは終わらせたくない米国が、
TPPの交渉において、ずっと強硬な姿勢を取り続けた。
日本側も、譲れない項目があり、
今年に入って、議論は平行線を続けた。
米国は、大統領訪日を成功させたい日本が、
最後は折れてくるだろう、とタカをくくっていたふしもある。
当初素通りされるはずだった韓国が、
国賓での訪日に横やりを入れるため、
米国に自国も訪問するよう要求し、
それを受け入れかつ日本では国賓での訪問を維持し、
日本に恩を売った形にもなっていたからだ。
日本に譲歩を迫るため、韓国の要求というより、
米国が「訪韓カード」で揺さぶりをかけた、ともみてとれる。
しかし、日本も国内事情を抱え、譲るに譲れなかった。
また、今回のオバマ大統領アジア歴訪は、
昨年、内政の混乱で、アジア歴訪中だったにもかかわらず、
取りやめなければならず、その失地回復の意味もあった。
米国も、日本訪問は避けられない選択肢であり、
それもまた強硬姿勢を貫けなかった背景にある。
そしてその思惑は、オーストラリアからの
牛肉輸入の関税税率の日豪合意で崩れ去る。
あわてた米国は、フロマン通商代表に
甘利TPP担当大臣との交渉を多く重ねるよう指示した。
しかし、結局大統領離日直前の共同声明発表となり、
各紙の報道で、合意ができたかどうか見解が分かれる結果となった。
文章の書き方こそ、合意ができたとされているが、
要は「これからも議論することで合意」となっているからである。
つまり、単に先送り=何も進まなかった、ということである。
一部で、数値合意があり、明日の衆院補選の結果が出てから、
その数値を公表する、と報道されたが
共同声明に盛り込まれなければ、
会談自体内容は薄かったことになる。
TPPの問題は、単に日米の利害対立だけでなく、
日米対他の参加国、米対日本及び他の参加国、
日本対米国を除く他の参加国、と日本が絡むだけで、
3つの対立構造がある。
日米は、利害対立はあるものの、
他の参加国に対して結束を見せなければならない、
という共通の利害があり、何としても
形の上だけでも合意をしなければならなかった。
なぜならTPPは、単に経済連携協定にとどまらず、
大きな市場での統一ルールを先につくり国際ルールにして、
今なお成長を続ける中国を国際ルールに取り込み、
軍事上の懸念を小さくする目的もあるからだ。
共同声明に、ASEANとの連携が書かれていたが、
それを如実に表している。
中国に脅威を感じているASEAN諸国は、
日米の結束に安心しただろう。
ここで、今これをお読みの方は「?」と思われただろう。
「合意できてないのに結束って矛盾しているのでは。」
実はここが、今回の訪日のもう1つの側面になる。
今回、経済においては徒労に終わった感があり、
周辺国、特に中国・韓国は、
日本が実を取れなかったことで安心した、
と見る向きもあるが、実際は逆である。
まず韓国だが、大統領訪韓を受け入れたことで、
大統領との会談で、慰安婦以外のことは話題にしなかった。
これまで、他国首脳との会談で執拗な対日批判をしていた
朴大統領に対し、米国が強くくぎを刺したとみてよいだろう。
さらに会談では、北朝鮮に対し、
”日”米韓三国の結束が必要、との合意まで出来た。
韓国にとって、これは対日関係改善の確約を、
米国にさせられたに等しい。
(韓国にとって、その方がチャンスなのだが…。)
北朝鮮は、日韓の冷え込みを機に、
日本に近づいて揺さぶりをかけてきたが、
改めて自国封じ込めの力が強いことを再認識したに違いない。
何より中国は一番脅威に感じているだろう。
なぜなら、米国大統領として、初めて明確に、
「尖閣諸島は日米安保の適用範囲」と言い切った。
さらに、当初安倍政権に警戒すらしていたオバマ政権が、
日本の集団的自衛権の憲法解釈を変える姿勢を見せていることに、
「歓迎」と、これまた明言したからだ。
そして先に触れたASEANとの連携に触れたことも相俟って、
「米国は、中国の好き勝手は一切させない。」との強い姿勢を、
安倍首相の前で宣言したことになった。
中国は当然猛反発したが、内実は、
どうやって巻き返しを図るかを懸命に考えている最中だろう。
2020年までに、中国のGDPが米国を抜くと、
かねてより各調査機関で予測されていたが、
ここにきて、「中進国の罠」に陥る恐れも出てきた。
「中心国の罠」とは、一定の経済成長を経てきた発展途上国が、
その途中で息切れし、先進国になれないことを言う。
今、政治混乱が収束できないタイが
その状況になりつつあると言われる。
そうならないためには、皮肉にも日米とうまくやらないといけない。
その意味で、徒労だけには終わらなかったが、
経済だけを見てみると、ホント、徒労だけに終わった感が否めない。
この合意先送りが、TPPの前途に影を落とさなければ良いが…。
お陰さまで、このブログも100回を迎えました。
これも、ひとえに皆様のご愛読の賜物と御礼申し上げます。
これからも、独自の視点で書きたい放題書きますので、
お楽しみいただければ、幸甚です。
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