きょうは、迷走を続けているSTAP細胞に対する、
理化学研究所の対応について取り上げます。
独立行政法人理化学研究所(理研)が、
所属する小保方晴子研究員が発見し
イギリスの科学誌「ネイチャー」に発表した
STAP細胞の存否が疑われていることへ、
対応に追われている。
今回の問題は、あちこちに散逸してしまい、
しかも真相が明らかになっていないことから、
何が一番の問題なのか、分かりにくくなっている。
分かりにくくしているのは、理研の対応だ。
事実を整理しながら考えていきたい。
「ネイチャー」は、世界で最も権威のある科学誌とされ、
それに自分の論文が掲載されることは、科学者にとって
名誉のみならず、その研究が認められた、ということになる。
STAP細胞は、どんな臓器をも作り出すことができる
万能細胞の一種とされる。
代表的なものに、実用化寸前のiPS細胞がある。
STAP細胞は、iPS細胞より作製が非常に容易とされ、
実用化に成功すれば、若返りも夢ではないと言われている。
ともすれば、永遠の命も手に入れられるのではまでされたことから、
その作製や、その細胞を使ったマウスへの移殖が成功したとして、
その論文がネイチャーに掲載されるに至った。
その論文は、小保方氏1人ではなく、
10人程度の科学者の共同発表論文である。
共同の形態は「全過程共同」ではなく、
「部分担当」をつなぎ合わせたもので、
マウスへの移殖の部分は、山梨大学の若山照彦教授が行っている。
その移殖に使われる「STAP細胞」作製は小保方氏の担当で、
出来た細胞が若山教授に引き渡された段階から若山氏の担当部分になる。
つまり若山氏は、小保方氏から渡された細胞が、
STAP細胞かどうかを確認する術がない、ということになる。
確認できるのは、理研内部になる。
論文がネイチャーに掲載された直後、
使われた写真が、以前別のものに使われたものと
酷似していることが指摘され、理研は、取り違え、と発表した。
しかし、別の写真に加工がされていることが発覚したり、
理研が発表したSTAP細胞の作製方法によって、
世界中の研究所が作製を試みたが、全く成功しなかった
という事態が起きた。
さらに、小保方氏の博士号取得の前提となる博士論文の冒頭20%部分が、
別の研究所の論文と全くの同文であったことなど、
次々と、STAP細胞自体が本当はできていないのではないか、
という疑念を抱かさせる出来事が次々に起こった。
焦点は、STAP細胞の作製は、本当に成功したかどうか、
という1点に絞られることになる。
にもかかかわらずこの間、理研の表立っての
真相究明の動きは、全く見られなかった。
これが、本来明らかな焦点が、どんどんぼやけてしまった。
これだけの疑念が出ているのに、小保方氏を表に出さないことに
業を煮やした若山氏が、ついに論文取り下げを提唱したことから、
一気に事態が動くことになった。
ノーベル賞受賞者でもある野依良治理事長初め理研の役員が、
事態について陳謝する記者会見を行ったが、
真相究明が不十分として、詳細を明らかにしなかった。
理研は、独立行政法人である。
年間800億円以上の予算が使われている。
その財源の多くは税金である。
ということは、民間企業より透明性が求められる。
にもかかわらず調査中、ということを楯にして、
詳細を明らかにしなかった。
問題の根幹は、STAP細胞は、本当に成功していたかどうか、である。
それには、小保方氏にそれを説明させるのが一番の早道である。
しかし理研は、本人が憔悴しきっている、として表に出さない。
ならば、組織として、本人から真偽を聞き出して、
発表するべきではなかったか。
まさか、STAP細胞が作製が本当に成功するまで先延ばしにし、
成功したら、ネイチャー掲載前に成功したことにする、
ということは、考えてはいまい。
しかし、ここまで先延ばしにされたら、
そのような疑念を持たれても仕方あるまい。
明らかにすべきことは1点なのだから、
理研は、一刻も早くそれを明らかにすべきである。
それを全くしないまま、新たな発表がなく
徒に時間が経過していることから、
一部週刊誌の記事には、小保方氏や理研幹部の、
プライベートを詮索するものが出始めている。
これ以上稚拙な対応をしていたら、
もはやそのプライベートに関する記事の真偽ではなく、
書かれていること自体が問題となって国民からの信頼を失い、
文部科学省も、何らかの措置を取らざるを得なくなるだろう。
今まさに、理研の存在意義が問われている。
今週もお読みいただき、ありがとうございました。
皆さんは、どうお感じですか。