今週は、今年のまとめを書こうと思いましたが、
やはり、この話題は外せませんでした。
一昨日、安倍首相が突然靖国神社を参拝した。
当然に中国韓国は反発した。
それ自体驚くに値しない、いつも通りの反応だ。
しかし、今回はいくつかの誤算がある。
1つは、国内で比較的安倍首相に好意的な立場の人からも、
今回の訪問には、疑問を持たれたことだ。
新聞主要五紙の社説を見ても、支持したのは産経新聞だけだ。
産経に近い読売新聞でさえも、「疑問」という言葉を使っている。
欧州からも疑問の声が出た。
そして最大の誤算は「米国からの”反発”」だった。
特に、ケネディ大使にに通告されたのが「わすか数時間前。」
だったことが、アメリカの、水面下の怒りを買ったようだ。
”中国の防空識別圏設定と同じだ”という表現が、それを表している。
なぜ米国がここまで反発するのか。
それは「対中国の日米韓の結束」である。
太平洋進出を企図する中国に警戒はしつつも、
経済的な果実を得られる格好の相手であることから、
米国は、TPPなどを通じて、中国をうまく取り込もうとしている。
日米韓の同盟も、その重要な戦略になる。
ところが、日韓がぎくしゃくしていては、それもままならない。
特に、李前大統領末期からの、国家統治機構をも巻き込んだ
韓国の反日言動は、とどまるところを見せていなかった。
安倍政権を、発足当初は警戒していたオバマ政権でさえも、
日韓のきしみを補う意味で、ケネディ氏を大使に送り込むなど、
日米間の結束に力を入れてきた。
安倍政権も、オバマ政権の懸念を払しょくするかのごとく、
これまでは、靖国参拝を控え、憲法改正も口にしなくなってきた。
その我慢を、国際世論も評価し、
中国とともに首脳会談に応じない中韓の分が悪くなっていった。
そしてその2013年の総仕上げともいえる、
普天間基地移転への第一歩となる、
沖縄県の仲井真知事の名護市辺野古沿岸部の埋め立ての承認を、
水面下で取り付け米国を安心させた段階だった。
その時点での訪問である。
一定の安心を得たと思っていた米国が、
中韓以上の激しい怒りを見せるのは、ごく自然の反応であろう。
その怒りとは裏腹に、ニヤリと笑っているのは中韓である。
これまで、首脳会談に応じない原因は自分たちにあるとされていたが、
これで一気に形勢逆転できる「口実」を得たからだ。
そのかたくなな姿勢が、国内でも問題になりかけ、
折角向こうから折れてきそうだったこの時期に、
相手にみすみす口実を与えてしまうことは、想像できなかったのだろうか。
現に菅官房長官は、直前まで安倍首相を行かないように説得していた。
ではなぜこの時期の参拝だったのか。
安倍首相を強力に支持してきた勢力は、
主として「総理の靖国公式参拝」強く求めてきた。
安倍政権が発足して1年、全然訪れないことにいら立ちも見せていたという。
それに押されていたときに、仲井真知事からの承認を、
水面下で取り付けたこの段階を狙ってきたのだろう。
米国の怒りも、一晩明ければ少し冷めて、
安倍首相の談話にある「平和への思い」を取り上げている。
”もうこれで参拝はするなよ”という最後通告とも読み取れる。
米国での報道も、批判しつつも
「中韓のかたくなな姿勢が、安倍首相を参拝させた。」と指摘している。
参拝を強く求める勢力も、一度行ったのだから、
2回目はそうそうは強くは求められまい。
中国も、報道でこそ激しく非難しているが
今回の参拝が日本国民の多数の支持を得られていないことから、
デモなどの動きはほとんど見られていない。
冷静な反応を見せている中国の評価は高まるだろう。
中国としては、参拝してくれてありがとう、
というのが本音ではないだろうか。
ただ韓国との関係は、より一層深刻になると思われる。
とはいえ、先日の本欄でも取り上げた通り、
日韓が冷え切って困るのは、韓国の方だから、
日本としては、現状を変える必要はないだろう。
ただこれで、最長で2018年9月まで続く安倍政権期間中は、
総理の参拝が非常に難しくなってきた。
いや、安倍首相が、支持者への心配をしなくてよい、
と言った方が正確だろうか。
なぜなら、もともと靖国参拝を求める勢力は、
親米(「従米」とも揶揄されるが)のスタンスの勢力と重なる。
その米国が最後通告を突きつけてきたのだから、
支持者もそれを出されたら強くは言えまい。
もし、安倍首相がそこまで見越して、
26日の参拝に踏み切ったとすれば、見事というほかない。
逆に、安倍首相の内心だけで参拝したのであれば、
愚行というほかない。
どちらにせよ、事態は思いのほか急速に鎮静化している。
あとは、米国の圧力をうまく使って参拝を避け、
時間をかけて、国際世論を味方に戻すことである。
本年もお読みいただき、ありがとうございました。
来年も、独自の視点で、バッサバッサ切りまくってまいります。
引き続き、ご愛顧いただければ幸甚です。