今週は、先日最高裁で「違憲状態」の判決が出た、
衆議院の定数格差の問題です。
全国各地の高等裁判所での結果を受け、
最高裁判所の判決が注目されたが、
「違憲状態」であり、選挙の無効は退けられた。
この判決に、司法の判断は及び腰だという批判がある。
憲法にある法の下の平等の趣旨から、
違憲なのは明らかなのに、”状態”をつけて、
お茶を濁したと。
確かに、小選挙区制で、選挙区によって
有権者の数が違うのは、法の下の平等を当てはめれば、
違憲であることは間違いない。
しかし、法の下の平等を完全に実現するのであれば、
完全比例代表制にするしか、事実上ない。
それだと多数の小政党が乱立し、決められない政治に拍車がかかる。
そもそも国会は、国権の最高機関である。
立法、行政、司法の、国家権力三権分立の観点からも、
一方が、他の二方に対して過度の介入ははばかられる。
一方で、不平等状態をずっと放置してきた国会の怠慢もある。
また、国民から違憲かどうかを指摘されれれば、判断せざるを得ない。
最高裁判所は、それらを総合的に勘案して、
”違憲状態だが、選挙無効にはできない”と判断したのだろう。
それに、国会議員の定数は、「法の下の平等」だけで
決められてよいものだろうか。
それに違反しているから、と言って、選挙無効にできるのだろうか。
以下、以前のコラムで書いたこととほぼ被るが
「法の下の平等」にだけで、一票の価値を判断していたら、
大都市の議員ばかり増えてしまい、地方の衰退を招いてしまう。
http://ameblo.jp/depthsofnews/entry-11501042237.html
法の下の平等を確保しつつ、地方の衰退につながらないようにするには、
もはや、統治機構を変える=憲法を一部変えるしかない。
上記コラムで書いた道州制の導入もその1つであるが、
アメリカの上院のように、憲法に「各都道府県●人」と
決めてしまえば、そもそも違憲にならない。
(衆参どちらも、というわけにはいかないが。)
”各都道府県●人”とするなら、格差解消ではなく、
”都道府県の代表が国会議員”という位置付けや、
その位置付けに対する目的・理念が必要であることは言うまでもない。
各都道府県…は1つの考え方にすぎないが、
他の方策を取るにしても、”国会のあるべき姿”から
議論を始めねばなるまい。ということは、
長期的に、”日本の未来”を考えねばならないことになる。
一票の格差問題は、もはや一票の格差が問題ではなく、
これからの国の在り方をも考えねばならない、
はるかにスケールの大きい問題の、1つの状況にすぎなくなっている。
地方分権や道州制などの議論は、現状下火になっている。
本来小さな政府志向のはずの自民党政権は、
国家権力、特に行政の力を大きくさせようとしている。
かつては、それが機能し、地方の衰退防止になってはいたが、
今の減少社会の中では、それも機能不全に陥っている。
国会議員も、政府も、訴える側も、単に一票の格差だけにとらわれず、
もっと大きな視点で見なければならない、
と裁判所は言いたかったのではないだろうか
争点にならなかったから、触れなかっただけで。
であるとするなら、今回の判決は、非常に絶妙な判決だと思いたい。
今週もお読みいただきありがとうございました。
皆さんはいかがお感じですか。