きょうは、伊豆大島で起きた土砂災害を取り上げます。
まずは、この災害で亡くなった方のご冥福をお祈り申し上げるとともに、
行方不明の方々が、無事であることをお祈り申し上げます。
今回の土砂災害が発生した時点で、
気象庁の特別警報が出ていなかったこと、
大島町から避難勧告・指示が出ていなかったことが、
特に後者が問題となっている。
後者から書いていきたい。
大島町の川島町長は、避難勧告を出さなかった理由として、
当初、沢の水があふれている中での非難はかえって危険、
として、判断を見送ったとしている。
しかし、遅くとも、災害発生の8時間前には、
気象庁から、広く一般に注意・警戒を
呼びかける注意報・警報とは別の「土砂災害警戒情報」
という、土砂災害に特化した情報を、
東京都と共同で発表している。
そしてその情報が、大島町に伝わっている。
遅くともこの時点で、避難勧告・指示を
出すべきだった、と指摘されている。
これには反論する余地はないと言っていいだろう。
その後も、一定の情報が、
気象庁や東京都から大島町には届いていた。
川島町長は当時島外におり、
一部の情報は、町長に届いていなかったことも判明した。
市区町村長が外に出ることは往々にしてある。
しかし、当時は副町長も島外にいた。
町長に次ぐ責任者も不在だったのである。
少なくとも、台風が近づいている、という時点で、
どちらかが帰島すべきであっただろう。
このことだけでも、大きな問題だ。
伊豆大島は火山島で、
多くの範囲で火山灰がメートル単位で堆積し、
地層を形成している。
直近では、1986年の同島中心に山頂を持つ
三原山の噴火で、島民全員が島外避難をしている。
筆者は、土砂災害が起きた直後の生中継を見て、
被災家屋から臨む映像の奥に、
土砂崩れを起こしている山が、遠く、低く見えたことで、
「これは土石流では?」と直感した。
まだ、土石流といわれる前である。
土砂崩れでは、その範囲は、崩れた所とその周辺にとどまる。
しかし、土石流は、文字通り、土石が流れるので、
その範囲は、下流の広範囲に及ぶ。
筆者は、この土砂災害発生してから、
初めて、火山灰が、通常の土砂に比べて、
土石流を誘発しやすいことを知った。
三原山噴火の全島避難から5年後、
長崎県の雲仙普賢岳噴火で起きた火山灰を含んだ火砕流と、
その火山灰が雨で流された土石流が頻発していた。
その時の記憶が、土石流では、と思わせたのであろう。
実際、今回の土砂災害は、土石流であった。
火山灰のその性質を知らなかった筆者でさえ、
土石流では、と直感させたのだから、
火山灰の恐ろしさを身をもって体験しているのであれば、
伊豆大島は、他地域に比べ、土石流が発生しやすい地域であることは、
町役場なら、当然に知っていたであろう。
であれば、特別警報の発生を待たずに、
気象庁や東京都の情報を待たずに、
避難勧告を躊躇なく出せていたのではないだろうか。
ここで浮かび上がるのが、
大雨の特別警報が出ていなかったことである。
特別警報が出ていないから、まだ大丈夫、
どこかになかったかということである。
今回の台風では、特別警報をだす基準に至っていなかった。
基準値を超えた地点が限定されていたからである。
しかし、警報が出ている時点で、既に尋常ではない状況であるわけで、
特別警報が出ていないから、というのは理由にならない。
特別警報の運用が、反って慢心を招いていなかったか。
菅官房長官が指摘したように、運用等を見直すと同時に、
警報の段階で、「もうまずい。」という認識を、
改めて自治体に持ってもらうようにし、
その態勢整備も、政府や都道府県の積極援助の下、
なされなければならないと感じる。
気象庁は、気象現象に関する注意・警戒は呼びかけられても、
避難勧告・指示の権限は、市区町村にあるのだから。
筆者は、今回の災害は、何とかならなかったのかと、
言う思いを持っています。
このようなことを繰り返さないためにも、
公的機関の連携はもちろんのこと、
一般市民も、普段から防災意識を高めなければならない、
と感じました。
皆さんは、いかがお思いですか?