今回は、明日早朝に決定する、2020年五輪開催地について書きます。
国際オリンピック委員会(IOC)の総会が、
アルゼンチンのブエノスアイレスで、
日本時間のきょう午後9時前(現地時間午前9時前)から開かれる。
ジャック・ロゲ会長の後継会長選挙、
夏季五輪に残す種目と併せて、
2020年夏季五輪開催地が、その総会の中で決定される。
候補地は、ご存じの通り、スペインのマドリッド、
トルコのイスタンブール、そして、東京だ。
情勢は刻々と変化し、3日前までは東京が有利だったが、
福島原発の汚染水問題やマドリッドの激しいロビー活動で、
日本時間の昨日夜までは、マドリッドがやや優勢と伝えられていた。
投稿時(日本時間7日午前0時過ぎ、現地時間6日正午過ぎ)では、
東京もわずかな差を追いつき、イスタンブールも猛追し、
2都市のすぐ後ろまで追いつきつつある、という話が、
現地から伝わっている。
よって、どの都市も、過半数の支持を集めていないとみられている。
(ただ、皆さんがこれを読まれる頃は、全く違った情勢かもしれない。)
投票は、103人のIOC委員のうち、
ロゲ会長と開催候補地の国の委員(今回はスペイン3、トルコ1、日本1)
を除いた97人で行われる。
一部で、東京かマドリッドが、1回目の投票で過半数を得る、
との報道もあるが、それは、希望的観測、悪い言い方をすれば、
IOC委員に対する、勝ち馬に乗らせようとする心理的誘導であろう。
そうなると、カギは、決選から漏れた都市に、
1回目の投票で入れた委員が、残った2都市のどちらかに入れるかだ。
また、1回目の投票で、自都市に入れてくれた票をどれだけつなぎとめるか、
かつ、相手に入れた票をどれだけ奪えるかも、絡んでくる。
イスタンブールの弱みは隣国シリアの内戦、
マドリッドの弱みは財政危機、東京の弱みは原発である。
逆に強みは、東京は開催能力の高さ、マドリッドは既存施設の使用、
そしてイスタンブールは、「初のイスラム圏開催」という大義名分である。
しかし、既存施設の使用は、東京も同じである。
また、初のイスラム圏開催は、他の、これから五輪開催を狙う
イスラム諸国にとっては、先を越されることで、逆に支持を得られていない。
それに、一番IOC委員が気にするのは、やはり、開催能力である。
トルコの場合、内戦だけでなく、デモのこともあり、
円滑開催が望めない、とされており、
そうなれば、東京が圧倒的優位なはずである。
ではなぜ、財政危機で開催能力が危ぶまれているマドリッドが、
開催能力を買われている東京を、一時リードしていたのだろうか。
1つは、IOC委員の地域の偏在である。
委員103人のうち、44人はヨーロッパ出身である。
ただし、1回目の投票では、先に書いた通り、
ロゲ会長とスペイン・トルコの委員は投票できないことから、
39人になる。とはいえ、多さでは群を抜いていることに変わりない。
アジアは、その約半分の23人しかいない。(投票は日本を除く22人。)
アフリカは、さらにその約半分の12人しかいない。
また、南米各国は、スペインからの移民も多く、
スペインに親近感を持っている国も多い。
マドリッドは、2012年から続けての3回目の立候補である。
2012年は、同じ欧州のロンドン、
2016年は、大本命と言われていながら、連続欧州開催が、
IOCの掲げる大陸間の公平性から難点となった上、
初の南米開催という説得力の強いスローガンを掲げた、
リオデジャネイロに決まった。
今回は、欧州連続開催という難点はない上、
東京に、「史上初の…」というスローガンはない。
そして、財政危機は、実は大きな追い風となっているのだ。
というのは、もし、財政危機が理由でマドリッドが落選したら、
欧州経済危機は、やはり深刻、ということになりかねない。
欧州各国としては、それが引き金になって再び混乱することは絶対に避けたい。
だから、マドリッドをなんとしも開催地にして、
経済危機はもはや過去のものとしたい、という思惑から、
欧州各国の結束を、皮肉にも、誘っている。
そして日本が原発の問題に、明確な安全性を示せず、
IOC委員の安心感を得られていないことが、何より一番大きい。
なので、一時は、マドリッドに決まりそうな趨勢だった。
日本政府が、十分な議論も尽くさないまま、
皇室の政治利用の批判を受けてまで、高円宮久子妃殿下を、
プレゼンテーションの場に出席させることしたことが、
東京側もその認識であることを、いみじくも示唆してしまった。
では、東京が招致を得るためには、何が必要か?
それは、最後のプレゼンテーションである。
前提にあるのは、投票は無記名である、ということだ。
まず、欧州の結束は、本物かどうか疑わしい、ということだ。
少なくとも、投票行動に必ずしも結びつくとは限らない。
なにせ、無記名投票なのだから。
実は、2012年招致でロンドンに敗れたパリが、
1924年開催以来100年ぶりの2024年、
つまり次回の五輪招致を目指している。
先に書いたように、欧州連続開催は非常に不利だ。
2024年という年に開催する意義がある以上、2028年以降では意味はなく、
今回は、3都市のうち唯一欧州でない東京に決まってほしいのが
本音とみてよいだろう。
フランスは委員2人を出している。また、アフリカ各国の中には、
フランスの植民地だったことから、公用語をフランス語としている国もある。
フランスの委員が、1回目の投票で結束を示すために
マドリッドに入れたとしても、2回目は、1回目で義理を果たしたとして、
本意に沿った投票行動にでることも十分ありうる。
もう1つ、総会の中で行われるIOC会長選挙では、
ドイツのバッハ氏が、目下最有力と言われている。
「開催地も会長も欧州。」となると、ここでも、
大陸間の公平性が問われることから、
ドイツとしては、やはり東京に決まってほしいのが、
本音とみてよいだろう。そのドイツの委員も、2人だ。
そして何より、やはり開催能力の高さをプレゼンで改めてPRし、
IOC委員を安心させることができる場があるということだ。
開催能力がなぜそこまで評価されているのか、
今のIOC委員の中には、1964年の東京五輪の選手もいる。
その時に良い印象を持っている元選手も多いという。
時代を超えて、98年長野五輪や2002年のサッカーW杯での、
市民の草の根の活動からくるもてなしは、今も世界の評価が非常に高い。
開催能力評価は、インフラが整っているだけではないのだ。
外国メディアから、福島の質問が相次いでいるのは、実は、
欧州の委員も含めて、本音では開催能力の高い東京を望んでおり、
その安心を取り付けたい裏返しなのだ。
事実、イギリスの公共放送BBCの記者は、
招致委員会の竹田理事長がうまく説明できなかったことに対し、
(政府や東電の人間ではないのだから当たり前ではあるが)
「日本側の説明には、がっかりした。」と言っている。
先に書いた通り、これが、IOC委員が東京投票に躊躇する、
一番大きな、というか唯一の、非常に大きな一因となっている。
しかし、プレゼンでは、安倍首相自ら乗り出して説明する。
不安を払しょくできる絶好の機会である。
他の2都市は、PRできる材料は、すでに出尽くしている。
東京より、プレゼンで得られるアドバンテージは多くなく、
よほどのサプライズがない限り、難しい。
となると、安倍首相が、プレゼンで、安全性を確保できる具体策を示せるか、
IOC委員の質問に、安心させる答えが、如何にできるかがカギになってくる。
開催地の○○○○○に、「マドリッド」ではなく、
「TOKYO」となるかどうか、「あべそうり」がキーパーソンとなってきた。
非常に長い文章を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
皆さんは、東京開催を望んでいますか?いませんか?
筆者は、本ブログを書くに当たって重視している、客観・公平の趣旨から、
決まっていない現段階で、どちらかは明らかにしませんが、
もし東京に決まったら、長野や2002W杯の時のように、
できることで具体的な活動貢献をしたい、と考えています。