今回は、緊迫するシリア情勢を取り上げます。
シリアの内戦において、アサド政権側が、
化学兵器を一般市民に使ったとして、
アメリカが、単独での攻撃をも辞さない構えを見せている。
しかし、フランスこそ攻撃に加わる姿勢を示しているものの、
イギリスは、国会の議決において、攻撃への不支持を示したため、
キャメロン政権は、攻撃に加わらないことを表明した。
ロシアは、かねてより攻撃には反対で、中国もそれを支持している。
国連の常任理事国だけでも、ここまで対応が分かれているだけでなく、
肝心のアメリカ国民が、賛成の倍近い反対の世論調査結果が出ている。
なのに、なぜオバマ政権は、攻撃をしない、
ということを選択肢に入れていないのか。
化学兵器は、「貧者の核兵器」と呼ばれており、非常に安価で、
核兵器ほどではないが、殺傷能力の高い兵器である。
身近な薬品や化学物質で製造できることから、
テロの道具としても使われやすい。
実際、今回使用されたとされるサリンは、我が国で、
1994年の松本サリン事件、翌年の地下鉄サリン事件で、
オウム真理教が使用し、一般市民が犠牲になっている。
アメリカ政府が、国民の反対を押し切っても、
今回、攻撃に踏み切ろうとしているのは、
化学兵器がテロリストの手に渡り、
それを使用されるのを恐れているからである。
アサド政権側は、「使ったのは(敵の)反政府軍だ。」と主張し、
その反政府軍も、政権が使ったと主張している。
つまり、自分たちではなく、相手に責任があるとしている。
また、化学兵器を使った、という明確な証拠が、
まだ出ていないことも、各国の足並みの乱れや、
アメリカ国内の世論の反対を大きくしている。
10年前のイラク戦争の時も、ある、と言われていた
イラク国内の大量破壊兵器は、結局は見つからなかった、
という苦い経験も背景にある。
それに、シリアを攻撃したとしても、
それが歯止めになるかどうかも疑問という声もある。
とはいえ、アメリカ政府は、化学兵器が
使われたこと自体の証拠は、つかんだのであろう。
だから、テロリストにわたらせないため、
一定の行動を起こさざるを得ないのである。
なので、オバマ大統領は「攻撃は限定的」として、
世論や各国に配慮しつつテロリストをけん制するために、
軍事施設を狙った小規模の空爆で終わらせることを示唆している。
そこで、我が国が取るべき立場は、ということになる。
テロに対する危険性は、我が国でも十分起きうる。
何より、先に述べたように、サリンは、日本国内で、
テロの道具として使われ、国民に犠牲者が出ている。
既に、安倍首相が「政権側に責任がある。」と述べているのだから、
”テロを防止する意味で”とした上で、
「どちらが使用したかにかかわらず、政権が国家の責任を負っているのだから、
テロに使われないよう、アサド大統領には、その意味で責任がある。」
ということまでは、明確にした方が良いのではないだろうか。
こうすれば、政権側が使ったという明確な証拠がなくても、
アサド政権をけん制できるし、アサド政権を支持している
ロシアとの関係も損ねない。
そして、なにより、日本も、テロは絶対許さない、という
メッセージを明確に発信でき、
核兵器をも開発した北朝鮮に対しても、けん制できる。
集団的自衛権の政府解釈を変えようというのなら、
もっと、普段からの立場を明確にする必要があるのではないだろうか。
今週もお読みいただき、ありがとうございました。
皆さんは、いかがお考えでしょうか。
攻撃は不可避でしょうが、人身に被害が及ばないことを、
節に祈るばかりです。