きょうは、昨日、事実上破産したデトロイト市について取り上げます。
参院選前日ですが…。(いや、だからこそ。)
先日、アメリカ・ミシガン州のスナイダー知事が、
同州デトロイト市に、アメリカ連邦破産法による、
更生手続きを申請した。企業に例えれば、倒産である。
その額は、180億ドル、いまの為替レートで約1兆8000億円である。
トヨタ自動車の近年の経常利益にも該当する。
デトロイトと言えば、かつてはトヨタを大きくしのぎ、
今も肩を並べる自動車メーカー、ゼネラルモーターズの本社がある。
20世紀半ばからは、当時の、一番消費力が旺盛だった
アメリカ経済の隆盛を象徴していたと言ってもよいだろう。
そのデトロイトが破産した。
人口で言えば、日本の政令指定都市規模にせまる大きさである。
これを、「自動車産業の衰退だから。」と片づけてよいものだろうか。
この出来事は、2つの意味で、太平洋の向こうの火事では済まされない、
日本でも、将来、どこでも起こりうる深刻な事態である。
1つは、TPPで、アメリカの日本の自動車に対する譲歩を、
現段階でもかなり厳しく迫っているのに、
完全な聖域にされかねない恐れが出てくる。
引き換えに、日本の農業を守ることを引き出せるかもしれないが、
メリットデメリットを比較考量すれば、
日本の方が打撃が大きいことは明らかである。
(その理由は、以前の小欄でも述べたうえ、
本筋から外れるので、割愛させていただく。)
我が国政府の交渉力にもよるが、
アメリカ国内の声が大きくなって
交渉に大きな影響を与えるだろう。
TPPだけではない。
自治体の破産は、これから、
少子高齢化にますます拍車がかかる我が国の、
あちこちで頻発すると恐れられている問題なのである。
TPPによる打撃より、こちらの方が深刻だろう。
かつては、国内の地方都市に工場があり、
企業城下町で潤ってきた都市もあった。
それも、海外流出で空洞化が言われて久しい。
まるで、デトロイトそのものではないか?
アメリカの自動車産業は、日本の農業同様、
政府の保護をずっと受けてきた。
結果、象徴的存在のデトロイトは、市の破産である。
日本でも、農業人口は、ピークから1/5の260万人にまで減った。
不利な競争にさらされた日本の自動車はどうだろうか。
日本の農業でも、外国との競争にさらされた品目は、
今、世界で、最高級品として、大人気を確立しているものもある。
もちろん、全ての自治体をデトロイトと当てはめるつもりはない。
自治体の努力ではどうしようもない原因の方が大きいのも明らかだ。
だからと言って、このまま指をくわえていたら、
事態は、ますます深刻化する。
関東・中京・近畿の三大都市圏に、ますます人口が集中してしまう。
集中している都市部はそれでよいのか?
実際は、三大都市圏以外の地域より子供が少なく、
福祉、犯罪など、大きな問題を抱えている。
(これも、本筋から外れるので、詳細は割愛させていただく。)
これは、もはや、各々の自治体の問題ではなく、
我が国全体の問題なのだ。
デトロイトのような大都市で破たんが起きた。
我が国でも、大規模な自治体破綻が起きない、とは限らない。
それどころか、国全体での破たんを、
本気で心配しなければならないのではないか。
日本国債や自治体債の債務不履行は絶対起こしてはならない。
しかし、ヨーロッパで起きている金融・財政危機を見ても、
国の借金の国内総生産に対する比率は、
破綻が起きた国々より、日本の方が大きい。
つまり、リスクはヨーロッパより、数値上は高いことになる。
「労働者の賃金を上げて、経済の底上げを図り、消費を拡大する。
企業の内部留保を大胆活用する。いくらでも手はある。」
カッコ内は、自民党と共産党が、
安倍政権になって同じことを言っているのだ。
いくらでもあるはずの手を、だれがどうやって阻害しているのか、
参院選後は、与野党がスクラムを組んで、我が国の財政危機の回避を、
恐らく今後3年は国政選挙がなく安定した政治ができるのだから、
不毛な争いはやめて、知恵を絞る争いを、選挙後の政治に望みたい。
皆さんは、今回の出来事を、どのように感じられたでしょうか。
筆者は、日本で起こしては絶対にいけない、という想いで、
きょうは書きました。
皆さんと、明日の参院選後のことを、一緒に考えていきたいです。