今週は、言葉だけが独り歩きしている、
限定正社員について、考えてみたいと思います。
(ちょっと長くなってしまいました。)
【限定正社員の中身】
政府の成長戦略の一環として、
「限定正社員」という働き方が提唱されている。
働く地域や時間、責任などを、
現行の正社員より軽くする代わりに、
そこでの仕事がなくなったら、解雇できるようにする、
という趣旨で、いま議論されている。
ただ、既に、ダイバーシティ(働き方の多様化)の一環で、
そのような雇用契約で働いている人が、正社員としても増えている。
ただ、正社員であることはかわりないので、簡単に解雇ができない。
それだと、企業の機動的な経営ができない、として、
責任まで軽くする代わりに、仕事がなくなれば、
解雇もできるようにしよう、というのが、今の議論だ。
【そもそも正社員て何?】
その是非を問う前に、そもそも正社員の正確な定義とは何だったか?
(ニュースなどで聞いたことを思い出してみてください。)
実は、正社員、という言葉の、法律上の根拠はない。
では、一体どのような意味で通用しているのか。
ここが、限定正社員を考える出発点なのである。
労働基準法では、雇用期間の決め方について、
・無期限雇用
・有期期間雇用
この2つが存在する。
前者は、労使どちらかが、一定期間前に通告することにより、
雇用契約が終了するに対し、
後者は、その決められた期間が来たら、
その時点で、自動的に雇用契約が終了する。
先日の法改正で、5年間、その期間更新を続けたら、
自動的に無期限雇用に切り替わる、という制度になった。
また、同法では、一日・一週間の労働時間の条件が定められており、
それぞれ、8時間・40時間となっている。
企業によって、1日7時間など短いところもあるが、
その決められた範囲の最大時間働くことがフルタイムと呼ばれ、
それより短い場合を、パートタイム・アルバイトと呼ばれている。
この労働時間の長さによって、
雇用保険や社会保険の加入非加入基準も、
法令によって、自動的に決まる。
いわゆる正社員とは、無期限雇用かつフルタイムの雇用契約で
働いている従業員のことを、指している、と言ってよいだろう。
この先は、それを前提でお話ししたい。
【正社員制度が、労使ともに苦しめている。】
無期限の雇用契約は、労使どちらか一方が通告すれば、
それで雇用契約が終了する、とあるが、
使用者=会社側がそれを通告する場合は、
解雇しなければ会社の存続が危ぶまれる場合等でない限り認められず、
非常にハードルが高い。
これが、企業としては、正社員を雇うことに躊躇することに繋がり、
契約社員やパートなど、いわゆる非正規雇用が増えている原因になっている。
一方の正社員は、非正規雇用との収入その他の待遇格差から、
必死になって会社にしがみつき、雇用の流動化の妨げの一員になっている。
付け加えれば、それを逆手に利用し、正社員ではあるが、
最低賃金すれすれで、残業代も払わない、いわゆる、
ブラック企業と呼ばれる会社が、上場非上場・規模に関係なく、
ネット上の書き込みで氾濫しているのが分かる。
責任も重くなり、うつ病などの罹患者も増えている。
限定正社員は、企業の雇用調整、成熟産業から成長産業への雇用移動、
非正規雇用者の待遇改善を狙って、導入しようとして、
成長戦略の一環として、出てきたのが背景にある。
最初に書いた通り、これだと、企業が制度を悪用して、
今の非正規雇用者を、名前だけ正社員にして、
実態は何ら変わらないようにするのではないかと、反対の声がでている。
もちろん、そうさせては、結局は収入が増えず、
成長戦略に繋がらないので、それだけでも問題ではある。
当然、成長産業への雇用移動は起き辛い。
とはいえ、企業が安易に首切りやすい制度にしてしまうのも、
同じく、成長戦略の妨げになる。
今議論されている、限定正社員だけに注してしまうと、
その問題が矮小化されるだけでなく、
成長戦略にとって、そのような諸刃の剣になってしまうのだ。
しかし、筆者は、成長産業を育てるための成長戦略を考えるのであれば、
そもそも「正社員」制度そのものが、その全ての妨げであると考えている。
ではどうすればよいか。
【正社員制度をなくすのが一番の解決策(条件付)】
思い切って、正社員と非正規雇用の垣根を、
取っ払ってしまうことが、解決策になると考える。
「それだと、余計にブラック企業が跋扈するじゃないか。」
とご指摘を受けるだろう。
しかし、実は、以前筆者が小欄で提唱していた案を、セットにして実施すれば、
健全な企業だけが生き残り、雇用移動の容易、高齢者や女性の活用など、
全て成長戦略に繋がることばかりである。
長くなってしまった上、実は、1年前に下記記事にて
http://ameblo.jp/depthsofnews/entry-11296341466.html
全て書いたので、ご参照いただければ、幸いである。
お読みいただいてご理解いただけたかと思うが、
大事なのは、クビになっても、見つかるまでは、
一定の保障があり、すぐ次が見つかる仕組みを構築することである。
1年前に上欄を書いた時は、そこにも書いた通り、
相当の抵抗が予想されうだろうが、もう、そんなことは言ってられない
かつ安倍政権の支持率からそれを打破できる状況に来ている。
そして、そこにも書いた通り、労働市場の容易化は、
第一次安倍政権時の太田弘子大臣が提唱していたのである。
態勢構築は、いつでもできる。
もちろん、これが進んだら、賃金格差が広がってしまう恐れはある。
しかし、現状でも、どんどん広がってしまっている。
どうせ同じなのだから、「クビになってもすぐ見つかる。」
というセーフティネットがあれば、安心感が違う。
まさに、やるなら「今でしょ。」
今週は、今までで一番長い文章をお読みいただき、
ありがとうございました。
筆者は、今まで、お陰さまで、どちらかというと、仕事に恵まれてきました。
もちろん、人がなかなか経験しないような辛酸もなめてきました。
その間で社会保険労務士の資格も取得し、
この10年余り、いろいろと考えてきましたが、
みんなが(お金がそんなになくても)安心して生活を送るためには、
やはり、いつまでも安心して仕事ができることが一番だと思いました。
筆者も、安心して働ける社会を実現するために、
ここで提唱するだけでなく、できることを実行して参ります。