Column53.「女性手帳」に見る、自民の”戦前的教条価値観” | 打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

打倒池上彰(さん)!? 元局アナ・元日雇派遣労働者がニュースの深層を斬る!!【毎週土曜更新】

テレビ局ディレクター、アナウンサー、国家資格予備校講師、W杯ボランティア、本書き、日雇派遣、不動産飛込営業、コールセンターマネージャ、ITベンチャー人事総務課長という多彩な経験から多角的な独自視点で、今起きているニュースの深層を、徹底的に好き勝手に斬ります。

きょうは、今週撤回された、”女性手帳”について取り上げます。



森少子化担当大臣が、導入・配布を検討していた、
”女性手帳”の配布を、断念すると明らかにした。



女性手帳は、出産などの知識を掲載し、
”女性”に出産への意識を高めてもらい、
少子化の歯止めを狙って作成し、
全女性に配布することが検討されていた。



しかし、そこに、「出産適齢期」を示すなど、
個人個人のライフスタイルに、国家が介入かのような
記述があるとして、猛反発にあい、断念せざるを得なくなった。



今回の問題は、その介入が、
戦前の産めよ増やせよ政策を想起させる、
という指摘もある。



それだけではなく、少子化の問題の本質は、
「女性が産まない」ということではなく、男女関係なく、
経済的に家庭維持や子育てがしにくい社会にあるのに、
それをまったく考慮に入れていないことだ。



各種世論調査では、若者の大多数は結婚したく、
また、持ちたい子供の数は、平均2.2人という結果が出ている。
一方で、理想と現実がかい離している理由として、
経済の問題を上げる人が最多数である。



女性手帳で啓蒙するまでもなく、国民の間には、
「経済的な問題が解決すれば、子供を作りたい。」
という思いがあるのだ。



であれば、行政がすべきことは、
女性が、結婚・出産しても職場復帰できる、
法的な制度を含めた環境整備や、
教育資金の肩代わりなど家計を助ける施策や、
男性も、堂々と育児休暇などを取りやすくすることである。



そこを通り越して、いきなり「女性手帳」というのは、
憲法改正草案にも見てとれる、自民党の、
社会の単位は「個人」ではなく「家族」とする、戦前の価値観が、
いまだ教条主義的に残っていることが根底にある気がしてならない。



もちろん、今の安倍政権で、仕事面での整備が、
全く検討されていないわけではない。
安倍首相自身、成長戦略には女性の活用が必要だとして、
自らその旗振り役となっている。



しかし、その仕事面の施策と、少子化に関する施策が、
その問題が事実上密接不可分であるにもかかわらず、
まったく別個のものとして、別々の所で
進めようとしているところに、問題がある。



「少子化」=「女性が産まない」⇒「女性の問題」
という、間違った認識が、一部にあるからこそ、
率直に言って、「ムダな施策」が出てきてしまうのだ。



もっとも、自民党だけでなく、2007年には、
当時の菅直人民主党代表代行も、
出生率が低い地域を「子供を産む生産性が低い」と発言している。



ということは、残念ながら、世間の一部の男性にも、
そのような価値観がまだまだ残っていると言わざるを得ない。



端的に言えば、その価値観の延長にある、
高度経済成長期の「男は仕事、女は家庭」である。



そのような価値観を変えない限り、
女性の雇用環境は今のままで、成長戦略には程遠くなってしまう。
結局は、それは、男性の仕事の仕方、
ライフスタイルにも大きな影響を及ぼすことになる。



少子化は、女性の問題ではなく、男女の問題、
社会の問題、つまるところは経済の問題である。



そのことこそ企業や社会に啓蒙すべきなのに、
当の与党自民党がそのような価値観から抜けきらない限り、
成長戦略に、大きな影を落とすことになるだろう。



安倍首相のリーダーシップに期待したいところである。




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