今でこそ歯科技工士を辞めて30代で年収600万を越えることができましたが、一度は年収200万の弱小零細ラボに転職したことがあります。
そもそも僕が年収600万を目指すことになった理由は、はじめに歯科技工士として就職した某大手ラボでの、年収500万を目標としようといった社是・社訓があったことに起因します。(会社を辞めるなら500万以上を稼いでやるといった意気込みです)
入社した当初はまだ20歳だったことや、元々世間知らずだったこともあり、そのことについては何とも思っていませんでした。
特に世間知らずだったこととは、学生時代から将来は歯科技工士として独立することが目標だったため、今は年収が低くて当たり前であり、お金なんて後からついて来るもんだと思っていたのです。
大手ラボでの年収の壁
はじめに入社したラボで働き出してから8年がたったころ、ストレスで頭がおかしくなりそうな毎日を過ごしていました。
その当時のストレスとは、
- 独立をしようにも1工程のみの仕事を与えられ、他の新しい技術を学べない
- 転職をするにも技術不足で自信がない
- どれだけ働いても全く収入が増えない
独立した先輩を頼りに
色々と考えた結果、今の状況を打破するため以前からお世話になっていた先輩に、自分を雇ってもらえるようお願いをすることにしました。
そこで独立の仕方から、新しい技術などを学ぼうと考えたのです。
はじめはアルバイトからということで了承してもらえたのですが、社員となった後でも年収は200万ほどに下がることが目に見えていました。
それでもこのまま今の会社にいたところで、何の技術も身につかず、ただただ歳を取っていくことに不安と焦りしか感じていなかった僕は動くことにしました。
たとえ年収が200万にまで下がったとしても、そこで学ぶことは自分を成長させると信じてのことでした。
そして、初めに就職した大手ラボでの目標だった年収500万という社是・社訓も、どうせ辞めるのならもっと上を目指そうと考えるようになりました。
歯科技工士としての年収の壁
転職した先では、新しい技術を覚えることに新鮮さを感じていました。
年収は200万までに下がってしまいましたが、生活を切り詰めることで何とか暮らすことができたし、以前に比べて成長している自分に将来を期待していたものです。
しかしそこで、今までは大手ラボにいたことであまり気にしなかった技工料金と、技工物作成にかかる時間に疑問をもつようになります。
弱小零細ラボの特性を活かし、利益を出すための考えとしては単純に、
- 単価の低いものの作成をやめ、単価の高いものをこなす
- 時間短縮と効率化をはかるためにCAD/CAMを使った仕事を増やす
特にCAD/CAMに関しては、一度設定をしてしまえば自分の手を離れて自動的にもの作りをしてくれるので、なくてはならない存在でした。
現に会社としてもそんなことは分かりきっているので、単価の高い仕事を取るようにはしていたのですが、専務兼・営業が高い技工料金の仕事を貰う代わりに、安い技工料金の製作物をただで請け負うこともしていたのです。
その結果、技工物が納期までに作り切れないほど膨れ上がり、社内はパンク状態になりました。
それでも何とかしなければと毎日朝までかかってでも、仕事をこなすうちに今度はミスが出るようになっていきます。
このミスとは、再製(作り直し)のことです。
高い再製率が利益と限りある時間を圧迫する
歯科技工には再製(作り直し)という、最も避けなければならないことがあります。
その際にかかる技工料金のほとんどはこちら負担であり、光熱費や製作物にかかる時間などは、とうぜん無駄以外のなにものでもありません。
そんな状況のなか今度は、利益が出ないことによる苛立ちからか内輪もめが絶えず、単価の高い仕事をしていた先輩たちは相次いで退職していきました。
更に悪いことには、人が減ったことによる負担ゆえさらに長時間労働となったことによる、高い再製率が利益を圧迫して会社は更にボロボロになっていきました。
後から計算したところ、この時点で残業時間は月に208時間ほどにもなっていました。(当然残業代はでません)
歯科技工士としての成長と夢を求めて転職をした僕は、あろうことか歯科技工士自体を辞める決意をするところにまで追い込まれてしまったのです。
3度目の転職
どうやっても自転車操業になりがちな歯科技工業界に見切りをつけた僕は、地元へ帰りすぐさまハローワークへと登録し、一般人として再就職をすることにしました。
しかし、32歳での転職は求人も少なく、今までの経験を活かしたうえに、いいお給料をもらうとなれば自動車関係の製造業に就職するしかありませんでした。
手先の器用さをアピールしながらの就活は、運よく3社目で就職先が決まり、そこで提示されたお給料は期待した以上のもので驚きました。
なんと、歯科技工士を辞めたことで念願だった年収にようやく到達することができたのです。
まとめ
皮肉なことですが、自分の中では歯科技工業界の限界に挑戦できたとも思っているので、大手ラボから弱小零細ラボに転職してことは今でも良かったと思っています。
そこまでしなければ、おそらく歯科技工士を辞めようとはしなかったでしょう。
職業は変わりましたが、今まで培ったノウハウは現在の仕事にも活きています。
運が良かったこともあるとは思いますが、自分をどう売るかは自分次第です。
それが歯科技工士として同じ業界では売り物にならなくても、他業種では手先が器用で真面目そうだなど、いいイメージをもっているところもあります。
もうだめだとなったときでも、もしかしたらまだ何とかなる可能性が残っているかもしれません。
あきらめずにがんばりましょう。
では、また。
関連記事