2018クリパ企画のお話 「同じセリフで話を書こう」から ~ムガクシ編~ | 慈雨 ~ほぼ信義~

慈雨 ~ほぼ信義~

ドラマで描かれていないシーンを妄想しながら二次のお話を書いています。

2018年のクリパ企画に参加しました。 の第二弾。

加筆修正しました。

お題は「体の芯まで冷える寒さを、何をもって癒せば良いのか?」でした。
ウダルチ編で一つ書いたのですが、なんだかセットにしたくてムガクシ編を
考えました。

では、どうぞ~

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~ムガクシの場合~

「寒くないの?」
訊かれてウォルとヨンシが顔を見合わせる。そのまま視線を質問した人物の方へと向ける。お持ちになって
いるものを全てお召しになっているのではないか。そんな風に思うほど医仙は着膨れておいでだった。
自分たちも防寒のためにいくらか重ね着をしているが、医仙からすると寒そうな恰好に見えたのだろう。
寒くないと言えばうそになる。けれど、警護する上で身体の動きが鈍くなるほど着込むわけにはいかない。
ヨンシと目配せをしてからウォルは、
「寒くないわけではありませんが、耐えられぬほでもないかと・・・」
と答える。
「うーん。やっぱり、貴女たちのように、身体を鍛えて代謝をあげたほうがいいのよね、きっと。
でも、手っ取り早くこうなんとかならないものかしら」
冬は始まったばかり。そのうちケギョンは更に冷え込む日々を迎えることになる。今から身体を鍛えても
間に合うはずがないし、そもそももっと楽な方法で身体を温めたかった。
ウンスは、眉間に皺を寄せて真剣に考え込む。
と、すぐにウンスが喜色満面の顔で、二人を見返してきた。
「ああ!あったわ!やだ、あれがあったじゃない」
何やら名案が思い付いた様子で、しかもはしゃいでいた。
「ヨンシさん、ウォルさん」
「はい」
「はい」
「お願い、手伝って」
『何を?』
再び顔を見合わせる二人に、
「あと三人ほどムガクシさんを呼んできてくれる?できれば非番の人がいいわ」
「あ、はい。それでは、呼んで参ります」
怪訝な顔の二人に、ウンスは笑顔を向けてくる。
「みんなで温まろう!」

ウンスは、典醫寺の薬草園の端へとムガクシたちを連れてきて、クルリと振り返る。
「じゃ、いくわよ。みんな横に一列に並んで」
言われた通りにムガクシ五人が並ぶと、ウンスも一番端に揃って並ぶ。
「で、こうやって腕を組むの」
ウンスが隣に立っているヨンシの腕を借りて、やってみせる。何をやらされるのか不安な面持ちのまま、
見よう見真似で言われた通りに皆が腕を組む。
「あ、いけない!ちょっと待ってて」
組んだ腕を外すと、ウンスは転がっていた石を拾って地面に大きな円を一つ描いた。
これで、ウンスとムガクシたちは描かれた円の中に入る恰好になった。
「さあ、それじゃ始めましょ。こうやって外向きに円になって・・・」
ウンスを含めた六人が、背を向けあって円の陣形を作る。
「これは、押し競(くら)饅頭っていう遊びなんだけど、身体がすごく温まるのよ。
円の外に一番最初に押し出された人が負けね。何回かやって、一番負けた人は皆にクッパを
奢るってルールね」
勝負事と温かい食べ物。
ムガクシたちの目が鋭い輝きを帯びる。

結果。
ウンスは、いい運動になって身体は温まったが、財布はちょっぴり寒くなった。

しばらくムガクシたちの間で、押し競饅頭が流行ったとか流行らなかったとか。