東京藝術大学大学美術館「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」を観てきました。

これは藝大美術館所蔵の上村松園作《序の舞》(昭和11年製作、重要文化財)修理完了を記念して、《序の舞》へと繋がる古今東西の美人画を集めた特別展です。
《序の舞》は修理完了後の一般初公開となります。
江戸時代の舞踊図に始まり、浮世絵、菱田春草ら明治の美人画、なまめかしい大正の絵から松園と繋がる「美人画の系譜」が展開されています。
また、東の清方、西の松園として、東西画壇を比較するような展示がされています。
鏑木清方の《一葉》と《にごりえ》は素晴らしかった。
また、関西画壇の美人画はどれも素晴らしく、大正期のなまめかしさはやはり凄いと思いました。
上村松園も《序の舞》をメインに数点あり、《序の舞》と《草紙洗小町》は下絵の展示もあり、作家の試行錯誤の跡が窺えます。
そんな中、藝大の学生が課題、卒業制作として描いた作品があり、これは伝世舎で修理をしたものでした。
展示用に応急修理をしたものと、掛け軸を額装に仕立て直したものです。
どこかで展示をするのかと思っていましたが、ここで再会するとは思いませんでした。
状態がよかったので、少しホッとしたところです。
また、入り口のエントランスでは修理行程のビデオが流されています。会場内でも流していますが、小さな画面なので分かりにくいところがあります。ここはぜひ入場前に見ることをお勧めします。
東京藝術大学大学美術館
「東西美人画の名作《序の舞》への系譜」
3月31日(土)~5月6日(日)まで
http://bijinga2018.jp/index.html
10月に開催した「修復のお仕事展」では「裏」というテーマで各自展示をしました。伝世舎は掛軸とパネル装の裏についての展示です。
東洋の絵画や書は、紙や絹などの脆弱な素材に描かれています。そのような作品を飾ったり保管したりするために、補強と表装をします。裏に紙を貼りつけて補強することを「裏打ち」といいます。
裏打ちに使用する紙
① まずは掛軸の裏側のお話しです。
掛軸は、本紙(紙や絹地に描かれた絵や書)の回りに表装裂(ひょうそうきれ)、上下に杉材の棒(八双と軸棒)を付けた形のものです。飾る時に広げて、保管する時には巻いて仕舞っておきます。広げたり巻いたりするため、柔軟な仕立てが求められます。一般的な掛軸は、3~4層の異なる和紙が裏打ちされて、掛かり具合が良く、本紙を保護するような工夫がされています。
各層の名称と特徴は以下の通りです。
◆肌裏(はだうら)
本紙と表装裂の裏に直接貼りつける、最初の裏打ちです。形状の固定と補強をします。薄美濃紙のような薄く強靱な楮紙を生麩糊(しょうふのり 小麦粉澱粉糊)で接着します。
◆増裏(ましうら)、中裏(なかうら)
肌裏の次の裏打ちで、本紙と表装裂との厚みやしなやかさを調整すします。柔らかな美栖紙を、古糊(ふるのり)を使って打ち刷毛で打って接着します。掛軸の形(本紙に表装裂が付いた形)になった後、さらに裏打ちを施すことが中裏打ちです。
◆総裏(そううら)
掛軸の仕上げとなる最後の裏打ちです。開いたり巻いたりするときに滑らかになるように、平滑な仕上げにします。引き締まった美しい表情の白土の入った宇陀紙を使用。古糊を使い打ち刷毛で打って接着します。
② 次にパネル装の裏側のお話し。
襖、屏風、和額の構造は、パネル装に本紙が貼られ、その回りを台紙や表装裂で飾り、縁(ふち)を装着した形ものです。
伝統的なパネル装の構造は、杉材の骨(骨組)に数層(7~8層)の和紙を工程ごとに違う方法で貼ります。これを「下張り(したばり)」といいます。
四季の温度湿度の変化を上手く緩和して、本紙に大きな負担を掛けさせないための工夫が施されています。
◆ 下張りパネル
パネルとして、6~7層の和紙が貼ってあるのが理想的です。細川紙や石州紙のような繊維の長い強靱な楮紙を使用します。
昔は、紙が貴重だったので、反古紙(ほごし 不用になった紙)が使用されていました。
◆ 下張りの役割
* パネル自体に強度を持たせる。
* 骨を補強して歪みが出ないようにする。
* 骨と本紙の伸縮の差を吸収し、裂けの損傷をくい止める緩衝材。
* 骨から出る脂(やに)を吸収し、本紙に影響を与えないようにする。
* 通気性があり、湿度の調整をする。
* 紙の層でできているので、大きさの割には軽量で、動かす(移動・稼働)ことが容易。

パネルの下張り層
展示はポスター以外に各紙を触れるようにし、骨や下張りの見本を展示しました。
普段は見ることのできない「裏」のお話し、如何でしたでしょうか。
今後も色々なテーマでブログを更新していきますのでお楽しみに。
掛軸、襖、屏風、和額の修復のご相談は伝世舎に。
2017年10月8日(日)~15日(日)に渡って、旧平櫛田中邸アトリエで開催しました「修復のお仕事展'17」も、おかげさまにて無事終了致しました。

後半はあいにくの雨模様と寒さに見舞われましたが、約540名の方にお越し頂きました。お越し頂いた方々には、厚く御礼申し上げます。
今年のテーマは「裏」。普段見られない作品の「裏」をご覧頂きました。
伝世舎では屏風と掛け軸の内部構造を中心に展示致しました。掛け軸はあえて裏側を表にして下げたり、表からは見ることの出来ない数種の紙を展示し、「裏」に対して何を行っているのかをご理解頂けるような内容にしました。
どのような展示になったかは、次回このブログでお伝えします。
旧平櫛田中邸は19日(水)~22日(日)の間公開しております。現在解体などで失われた家から頂いた道具・建具類を、その由来とあわせて、新たに使って下さる方のもとにお届けする【建具お道具転生バザー】を開催中です。
バザーの募金は、田中邸や他の建物の修繕・再生の資金としてまいります。展示とあわせてどうぞご覧ください。
引き続き田中邸での展示を見にお越しください。
来年は記念すべき10回目です。何が飛び出すかご期待下さい。
頂戴いたしましたご意見、ご感想を今後の糧として、修復の仕事に取り組んで参りたいと存じます。
今後とも何卒宜しくお願い申し上げます。







