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伝世舎のブログ

日々是好日

 遅まきながら、お茶の水女子大学所蔵作品の保存修復が終了しました。

 2008年7月から、保存修復のために数回に分けてお預かりしました作品郡が、2009年3月末に処置が終了し、最後の作品を納品しました。

 お茶の水女子大学の初代校長である中村正直先生の書の掛け軸、伝酒井抱一の三幅対などなど計15幅の掛け軸、東伏見宮周子妃、昭憲皇太后御歌の色紙2点。
 掛け軸は、あまりに痛ましい状態のものが2幅あり、全体の修復を行い、表装裂も換えました。
 他の13幅は、それぞれ症状は異なっていましたが、それでも損傷や脆弱化した部分に補強などをすれば展示することができる様子でした。損傷や近い将来に損傷が大きくなりそうな箇所に部分的な処置を行いました。保存箱として布貼り中性紙ケースに入れました。

 これから少し、この作品群をどのように修復・保存処置をしたのか、全体修復、部分修復、保存箱の順に書いてみましょう。


全体修復
 中村正直先生の書の掛け軸は紙表具でした。掛け軸全体が茶色く変色劣化を起こしていて、巻いたり開いたりすると、硬くてパキパキと折れる感じで、紙としてのしなやかさが無くなっていました。また上の方が横方向に破れていて、開くたびに破れが大きくなっていって、取り扱うことがとても恐ろしい状態でした。


伝世舎のブログ-お茶の水01

修理前 いつ破れるか心配な状態でした。

 そのため、解体して本紙の処置を行いました。精製水による洗浄を行い本紙に吸着していた汚れを取りました。 今回のクリーニングはドライと水だけに留めました。すでに弱っている本紙ですので、無理に白くするような処置を行いますと、近い将来今よりも変色を起こしてボロボロになる可能性が高いので、なるべく本紙に優しい処置にしました。そのため本紙の茶色っぽさは残ったままになりました。それでも、破れ部分も補強して、修復前よりもかなりすっきりとした様子になりました。


伝世舎のブログ-お茶の水02

修理後 スッキリとして、安心して取り扱えます。

 以前はかなり簡易的な紙表具でしたので、新たな表具にしました。お茶の水女子大学附属図書館の皆様に選んでいただいて、表具の形は変えずに中村先生のイメージに合った落ち着いた色味の裂(きれ)にしました。
如何でしょうか。



伝世舎のブログ-お茶の水03

修理後全体


 お茶の水女子大学附属図書館の方々が伝世舎に来たことのブログはこちらへ


http://ochadailisa.blog32.fc2.com/blog-date-20081121.html


 次回、部分修復と保存箱に関して書いてみようと思います。

3月10日(火)
ギャラリーゆり音で、朗読パフォーマンスことばの種屋 椎名ちゑさんの「おひねり劇場・人間止めなんな也」を上演しました。

演目は、まどみちおの「うさぎ」「くまさん」、谷川俊太郎「何もいらぬばあさま」「いのち」、中勘助の「うさぎのおはなし」などなど。
椎名さんの静かで低い透き通る声とゆっくりした動き。

人間止めたい…でも止められない… そのような無常感を詩に載せて表現していて、不思議な存在がありました。
椎名ワールドに1時間浸らせていただきました。


伝世舎のブログ-椎名1

最後に草野心平の「ごびらっふのうた」というカエル語の詩をみんなと朗読(合唱)をしました。
何十年ぶりの朗読は、なかなか気持ちが良いものでした。


伝世舎のブログ-椎名21

お呼びが掛かれば(ご贔屓があれば)、参上するそうです。ぜひ椎名ワールドを体験してほしいです。

椎名さんは、宮城県丸森町で農業を行い自給自足の暮らしをして、閑農期の冬に各地を巡業するという半農半芸の生活をしています。
椎名さんが暮らしている丸森町では、「山里刻やまさとどけい」という民宿型体験宿を行っています。



椎名ちえさんプロフィール
福島県梁川町に生まれる。この地にあった芝居小屋「広瀬座」での劇団活動、ナレーター、ストリートパフォーマンス(ピエロ)、保育園でのことばの講師などを経て、2002年「ことばの種屋」を立ち上げる。
これまでの主な公演
・霊山こども村30周年記念イベント オノ・ヨーコ詩集「グレープフルーツ」で出演(福島県)
・大蔵山造形研究所 山堂サロン(宮城県)
・邦楽献奏会(福島県)
・青空(一関など東北11ヶ所巡業 2007年冬)
・揖斐川図書館(岐阜県)など屋久島まで13ヶ所巡業 2008年冬
宮城県丸森町耕野字大釜西23-2
TEL/FAX0224-75-2842
「山里やまさとどけい」&「ことばの種屋」椎名ちゑ

 2月23、24日の2日間をかけて寒糊を煮ました。
 修理や表装で使う糊は生麩(正麩)という小麦粉澱粉を煮たものです。糊はその度に煮て使います。寒糊とは、冬の一番寒いときに煮た生麩糊のことを言います。それを瓶に入れて数年~10年くらい寝かせます。寝かせた糊を古糊と言います。古糊は、掛軸や巻物など、巻いたり広げたりするような柔軟性を必要とする表装物の裏打ちに使います。
 長い間寝かせているので、もちろんカビてきます。臭いにおいもしてきます。カビている部分を取って白っぽく残っている部分を使います。そのため、10年くらい経った糊の量は1/10くらいに減ってしまいます。とてもとても貴重な糊です。


 煮る直前まで、澱粉を水に浸けておきます。ゲル状になっていて面白い感触です。

伝世舎のブログ-寒糊 001


 もちろん、水は精製水です。


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 これを鍋で約30分かけて煮ていきます。なかなか疲れる作業です。


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 どうやら出来上がりです。その気になれば食べられます。


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 瓶に入れます。これを瓶一杯になるまで続けます。


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 今回はこの程度の量ですが、今までで一番多く煮ました。


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 封印して冷暗所で寝かせます。次にカビの除去のために開けるときは1年後です。


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 様々な条件によって、うまく出来ないときもあります。
 今回のも、ちゃんとした古糊になりますように。