さて、この記事も今回で最後です。
修復前のこの状態から、
この状態にまで仕上がりました。
これをどのように保存していくかが今後の課題です。そのための方策として「太巻き芯」と「中性紙ケース」を採用しました。
「太巻芯」とは、軸棒により大きな口径の巻き芯を付け、巻くときの負担を軽減するものです。普通は桐材で作りますが、高価なものになってしまいます。そこで、’08年の文化財保存修復学会で鈴木晴彦氏がポスター発表した「簡易万能型太巻芯」を、ご本人の許可を得て使用することとなりました。
この太巻芯は、特許出願中である「シート状物品の保管器具」の内、掛軸装用の一例としてポスター発表されたものです。この太巻芯(「シート状物品の保管器具」)の基本構造を基に加工や素材の工夫をすることによって万能に対応することが出来ると考案されたものです。
この太巻芯は、現在の作品の状態や状況に対応して、保管と活用時における予防保存を目的としたものです。活用に伴い、巻頭および巻末の装着、開く時や巻き付け収納時の安全性や取り扱いやすさをも目的としています。また、製作に要する時間や経費および製作技術の簡易性からも保存処置として現実的かつ有効な対策方法であると考えられたものです。
これは株式会社弥生洋紙店の「まるづつシリーズ」という、中性紙で作られた筒を縦半分に割って使用します。これほどの長さの筒を縦に割る自信がないので、近所にある「いろはに木工所」の山下純子氏に依頼したところ、見事に割っていただきました。これが出来なくては太巻芯が使えず、大変なことになるところでした。
今回の修理においては、この作品の重さと長さに対応した構造を必要としました。鈴木氏のポスター発表では、楮紙で軸棒を支えるものでしたが、この涅槃図の大きさと重さを考えると心許なく思い、アーカイバルボードで軸受けを作り、支えることとしました。
これで重い掛け軸も支えられるようになり、保存も安心して出来るようになりました。
昔から掛け軸等は桐箱に納めていました。これは現在も同じですが、大変に費用がかかります。特にこれほどの大きさですと、とんでもない金額になってしまいます。
そこで最近は中性紙布張りケースが用いられています。今回もそれを使用します。
しかし、大きい! 我が事務所始まって以来最大のケースが届きました。これに太巻き芯に巻いた作品を楮紙で包んで入れ、保存します。
これでやっと納品です。この大きさでは、抱えていく訳にはいきませんね。
さて、とりあえずはこの「涅槃図の修復」は終了します。また、公開できる事例がありましたらブログに載せますので、その折りにはよろしくお願いします。
※この作品は12月29日に納品致しました。ご依頼主様には喜んでいただけたようで、こちらも一安心です。ブログへの掲載のお願いに対して、御快諾頂いたことに改めて御礼を申し上げます。









