会津桐の産地を訪問してきました | 伝世舎のブログ

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 9月初めに福島県奥会津の三島町に行ってきました。会津若松駅から只見線で、1時間半ほど山間をゆられて辿り着きました。
 奥会津は会津桐の産地です。会津桐は最高級と云われています。さらに会津の中で三島産の桐が最良とのこと。木目が詰んでいて、はっきりしている、木地に光沢があるそうです。
 今回訪ねました会津桐タンス株式会社様から、桐材についてのお話を伺ってきました。会津桐を護り続けるために、三島町が設立して、会津桐の製品を作っている会社です。
 三島町は山間部にあり、桐の植生に合った土壌だそうです。あまり肥沃な土壌だと桐が育ちすぎて木目が広くなるそうです。確かに見せて頂いた桐は、木目が細かくてまっすぐに伸びて、表面に艶を感じて、とてもきれいでした。
 桐は植栽から30~40年のものを、木に含まれている水分が少ない時期、冬の雪が降る前に伐採するそうです。
 薄板に製材して、梅雨前には干すようにします。風雨に曝すことで、木の乾燥とアク抜き(渋抜き)をします。屋外で3年ほど(板の厚みによっても期間は異なってくる)曝して、屋内で数年間寝かせてから、ようやく製品を作ります。長い時間と沢山の労力を掛けています。

 

写真1 桐材は製材して、乾燥とアク抜きのため屋外で数年曝します。

 

写真2 手前の白っぽい桐材は今年の春に干したもの。

 

曝すと、表面が黒くなってきます。これがアクです。カンナで削ると桐の白さが出てきます。
この曝しが十分出来ていないと、製品になった後に黒い染みが生じてしまいます。

写真3 三島桐の半端を頂きました。左が表面に黒くアクが付いている状態。

右がカンナで削った後の、桐材の本来の色味。木目が細かく光沢がありきれいです。

 

 桐は、古くから文化や生活に深く係わりがある木材です。
  軽く、調湿性があり、熱伝導率が低く、燃えにくい、材質が柔らかく加工しやすい、狂いや割れが少ない、音響性も優れている材です。そのため、貴重な美術品などを保存するための箱、タンスや下駄、琴などの素材として使われています。

 伝世舎で係わりがある桐材製品は、保存箱です。

 

写真4 印籠箱(掛軸用の保存箱)の参考写真。


 掛軸や巻物などの美術品は、温度や湿度の影響を受け易いので、保管の環境が悪いと、劣化が進んでしまいます。そのため、温湿度を一定に保つことが重要です。桐材は調湿性、断熱性が優れていてことから、古くから保存箱として使用されてきました。

 

 現状では、国内で流通する桐材の約95%以上が輸入です。
 中国産の桐材は、木目が粗くてはっきりと見えなく、柔らかすぎて、カンナが掛けにくいとのことです。コストを抑えて、大量に生産するために、桐材の乾燥や漂白(白く見せるため)が工業化されているとのことです。長い時間を掛けてのアク抜きをしているわけではないので、使っていると黒染みが生じて、汚い色味になることがあります。
 保存箱は、このアクが美術品に影響を及ぼすことがあるので、桐材だから大丈夫と使うと危険です。
 桐材も、ピンからキリまであるので、使うものによって選ぶことが大切です。

 

 今年も「修復のお仕事展’16 ~伝える・想い~」を10月9日(日)~16日(日)に開催致します。8回目の今回の共通テーマは「しまう」です。文化財を安全に保存・保管するための方法や工夫を展示します。
 伝世舎は、伝統的な桐箱について発表します。今回はそのための取材でした。


 会津桐タンス株式会社様には大変お世話になりました。ありがとうございました。

 

会津桐タンス株式会社 http://www.aizukiri.co.jp